5ー2

 まだまだ考えなんか纏まる訳がない。 だって未だにどれも起こってないのだから、まだ推測でしかない事だ。 もし今まで利之が考えていた事が何も起こらなかったら、利之がここまで色々と考える事はなかったという事にもなる。 だけど不測の事態なんていうのは百パーセントは無いにしろ九十九パーセントはあるのだから。


 そう人間生きて行く中で百パーセント出来る事なんか一つも無い。 残りの一パーセントでも何が起こるのかっていうのは分からないのだから。 例えば日本での飛行機事故というのは今現代では本当に率というのは低いのかもしれないのだが、それでも零パーセントではない。 事件だってそうだ。 確かに日本という国は平和だと言われているが、それでも実際問題、毎日のように事件が起きているのだから平和とは言いきれないのかもしれない。 その事件に巻き込まれてしまう遭遇率だって零パーセントではないのだから。 もしかしたら明日にでも自分の身に起こる事なのかもしれないのだから。


 司だって今は過去の人間だって知ったのだが、司の事だって本来だったら実際にある事ではないのだから、その百パーセントのうちの残り一パーセントに値いするのであろう。


 利之は今日の所は色々と考え過ぎて何も纏まらないまま風呂場を後にする。


 とりあえず目の前で起きる全ての事をその場その場で凌げればいいのかもしれないと思ったようだ。 だがしかし先ずはこれだけは考えておかないといけないのかもしれない。 そう利之が仕事の間、司をどうするか? をだ……。


 利之は腕を組んで司がいるであろうリビングへと向かう。


 テレビの上にある掛け時計を見ると、とりあえず利之が仕事へと出掛けるまで一時間ある。 その間にその事について考える時間があるようだ。 腕を組んだまま利之はソファへと腰を下ろすのだ。


「利之……? このテレビっていうのは本当に凄い物なんだな」


 その司の言葉に怒る事なく、利之は司の方へと視線を向ける。 すると司はテレビのリモコンを使い色々なチャンネルへと替えていた。 その仕草に何か利之はヒントみたいなのを得たのか、


「司、家電とかって教えたら使えるようになりそう?」

「……へ? あ、いや、それは分からない。 ただ、テレビの方は簡単だったっていうのかな?」


 そこで利之は再び考え始める。 一切この部屋には危ない物はないのではないかと……。 そう利之の部屋というのはかなりシンプルでもあるし、何も無いに等しい。 だからある意味、この家っていうのは寝に帰って来ているだけなのだから。


 とりあえず司は今日ここで待ってもらう方がいいのかもしれない。 それで今日一日は様子を見る事にする。


 利之は立ち上がるとゲーム機、DVDと暇潰しが出来そうな物をソファにあるガラステーブルの上へと置くのだ。 後はこれを司に使い方を教えて、と思っていたら無意識のうちに運んで来た物の中に漫画がある。 それを手にする利之。 そしてパラパラとすると、


「司って、字読めるの?」


 その利之の言葉に司は視線を天井の方へと向け、


「どうなんだろ? そこは分からない……」


 と答えていた。

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