ーあ、え?ー
そして利之は司に向かって手を伸ばすと、司の方もまだこう利之に遠慮はしているものの利之が伸ばして来てくれている手に手を伸ばし掴むのだ。 きっと司の方もこの現代に来てしまい不安な中で利之に声を掛けられ今は利之に付いて行くしかないと思い始めているのかもしれない。 だから伸ばされて来た利之の手を掴んだのであろう。
利之は掴んできた手を引っ張ると二人一緒にお風呂場へと向かうのだ。
確かに昨日の夜も利之と司はお風呂に入ったのだが、今日は昨日と違って浴槽にはお湯を溜めていない。 利之の家お風呂場というのは大人二人が立っていても悠々ゆっくり出来る所なのだから大丈夫なのであろう。
とりあえず利之は脱衣所で服を脱いだのだが、なかなか脱ごうとしない司に利之は首を傾げるのだ。
まだ、あまり話をしてくてない司。 だから雰囲気でというのか、言いたい事を感じ取らなければならないと言った方が正解なのかもしれない。
利之の方は昨日の事を思い出しているのであろうか。 暫くして利之は手をポンっと叩くと、
「あー! そうだったよね! 司はまだボタンの外し方も知らなかったんだっけー!」
とそこに納得するのだ。
そう昨日の夜も利之は司とお風呂に入っていた。 司がパジャマに着替える時に司がなかなか着替えなかった事を思い出したようだ。 そう昨日の今日でも忘れていた事なのかもしれない。
そこで利之は司が着ているパジャマのボタンを外し始めるのだが、急に司の方はそのパジャマの前を掴み今度は必死に締めようとしていた。 いや正確には自分の体を見せないようにしてしまったという事だ。
もしかしてさっき利之が司にああいう事をしてしまったせいで、司は利之に警戒してしまったっていう事であろうか。 寧ろ優しさで司にそういう事をしたつもりだったのだが、どうやら司には利之の想いが伝わってなかったようだ。
そこはやはり昔と今とでは違う所なのであろう。 それにきっと昔は男女ですら恋愛というのはお見合いでデートなんかも純粋でっていう文化や世界観と言った所が違うのだから男同士でっていうのはなかった事なのかもしれない。 だから司は利之の手を払ってしまったのであろう。
そう利之は結論を出すと、そこはもう現代と昔とでは違うというのを分かったのか、
「お風呂は司一人で入っておいで……昨日使ったばっかだから分かるだろ?」
その利之の言葉に司は頭を頷かせるのだ。
それを確認した利之は服を着直して部屋に向かう。 もう後は司に任せるしかないからだ。
利之が脱衣所から上がってきてから数分後。 お風呂場から水音が聞こえて来る。 という事は司がお風呂に入ったという事だろう。
そこに安心する利之。
だって昨日教えた事を司はちゃんと覚えていたのだから。
そして司がお風呂から上がって来ると、今度は利之がお風呂へと向かう。 その間、司にはテレビを見ててもらうつもりでだ。
今度、利之がお風呂に入って数分後。
部屋の中からビックリしたような声が聞こえて来る。 その声に慌てた様子で出てくる利之。 そしてリビングへと向かうと司が、
「あー! あー! 利之! 利之だっ! 利之が……ここに?」
そう叫びながら首を傾げている司の姿が目に入ってくる。 そして司は利之の姿を見ると、今度はテレビとそこにいる利之とを交互に指差し、
「利之が二人……??」
と再び目を見開いていて何やら混乱しているようだ。
「あー! そっかっ!」
その司の行動に利之の方は手をポンっと叩き納得し、
「司……昨日、これはテレビだって言ったよね? 僕はこのテレビでの仕事をしてるからテレビに出る事があるんだ。 あー、でも、司にテレビの中の僕と今ここにいる僕を説明するのは難しいかな?」
そう司の時代にはこうテレビさえも無い時代なのだから、先ずそこから司には説明しないとならないだろう。 だが、それを説明するのは難しいと思った利之なのだが、
「はっくしょん! あ、忘れてた……とりあえず、僕、風呂に入ってくるね」
そうだ、まだ利之はお風呂の途中で出てきてしまったらしく体が冷えてしまったようで急いでお風呂場へと向かうのだ。
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