ーベッドの上でー4ー1
それからの二人はそのままベッドへと向かうのだ。
利之はいつものようにベッドの上へと大の字になる。 これで一日がやっと終わったー。 と自分に思わせる為なのかもしれない。
ダブルベッドの上で一人大の字っていうのは本当に気持ちがいい。 そして目を瞑ってアロマの香りを楽しみながら頭の中で大自然を感じるのもいいのかもしれない。
まだ利之からしてみたら都会の暮らしをし始めて数年なのだが、都会は確かに電車にお店にと色々と近場にあって便利な所でもある分、何かこう同じ時間軸なのに時間が経つのが早い気がするのは気のせいであろうか。 それはきっと人々の動きから電車の動きからそうされているように見えているからなのかもしれない。 地方ではこんな人の動きはなく電車だって一時間に一本しかないのだから余計に時の流れが遅く感じるのであろう。 都会は人の動きといい電車の動きといい本当に忙しなく動いているのだから時が早く動いているように見えてしまっているという事なのかもしれない。
だから癒しみたいなもんが欲しくなるのだ。
大自然。
人間にとっての癒しでもあるのだが、時に大自然というのは牙を向けて来る。 それはきっと人間が自然に対ししていけない事をしているのだから、普段は何も怒る事はしないものでも人間が間違った事をすれば牙を向けるという事なのであろう。 それはそれでたまにであって普段の自然というのは本当に癒してくれるだけだ。
地球を照らす太陽が大地へと光を降り注ぎ体を癒す。 木々の合間からは木漏れ日が漏れ視覚を癒す。 小鳥達は囀り聴覚を癒す。 こう人間には五感というのがあって自然というのはその五感で何もかも感じるからこそ心地いいのかもしれない。
だが都会では自然を自然に感じるのではなく、自然を人工的に感じる事しか出来ない。 それが癒しに繋がるのならそれはそれでいいのであろう。
利之がいつものように人工的な自然を感じていると、
「あ、あの……り、利之……私はどうしたらいい?」
その司の声に利之は瞳を開けると、司の方へと視線を向ける。
きっと利之の中で一瞬だけ司の存在を忘れていたのかもしれない。 そりゃあそうだろう、完全に今利之は自分の世界に入ってしまっていたのだから。
「あ、そうだね……。 今の時代っていうのはここで寝るんだけど……」
そう言いながら利之はベッドの上を叩く。
「ここに?」
「そう……」
その利之の言葉で司は膝をベッドの上へと載せるのだが、まさか、そのベッドが柔らかい素材で出来ているとは思ってなかったのであろう。 足をベッドへと載せた途端にバランスを崩してしまったのだから。 そんな司に利之の方は反射神経で体が一瞬のうちに動いたのか、しっかりと両腕で司の体を支えていた。 そこにホッとする利之。
確かに利之の方もお腹に直撃を免れたのもあるのだが、司の方も怪我しなかったっていう意味でも安心したという事だ。
「大丈夫?」
「え? あ、うん……だって、この、ふ、布団? まさかこんなに柔らかいとは思ってなかったから……」
「あ、そっか……」
そこに再び納得してしまう利之。
明治時代っていうのは今の時代から約百五十年前位。 たったというのか、しかという言葉なのかは人によっては思い方というのは違うのかもしれないのだけど、それだけ時が経っていると、そんなにも同じ日本でも文化というのが変わって来ているっていう事も分かったような気がする。
布団メインの時代から西洋文化が入って来て、日本人もベッドで寝るようになった。 お風呂だって今は個々の家にある時代になったのだが、司の居た時代というのは各家庭にお風呂は無く一ヶ月に一回入れればいい時代でもあったし、お風呂場というのは今の銭湯みたいな感じで沢山の人と入る感じだったというのも分かった。 洋服だってそうだ。 洋服というのだから完全に日本の服ではなくこれだって外国から来た物で明治時代の頃にはまだ洋服の人と司みたいに下は袴で上は着物みたいな服装だった時代だ。
何で司はこの時代に来たのか? っていうのは未だによく分かっていないのだけど、利之はそんな司の事が気になって家へと連れて来てしまっていたのだから、これから暫く利之は司の事を世話していかないとならないだろう。
「ならさ……ゆっくりと上がっておいで……」
そのまま利之は司の腕を両手で支えると、司の方は利之に気持ち的に体を預けゆっくりと恐る恐るベッドの上へと上がって来るのだ。
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