3−2

 利之は今司の言葉に息を軽く吐くと、簡単に現代のお風呂の入り方というのを説明し今日はもうお風呂から上がる事にする。


 脱衣所の棚に入ってる真っ白いタオルを後から出てきた司にも渡す利之。


「とりあえず、バスタオルはここに入ってるから、お風呂に入った時には勝手に使っていいからね」


 利之は体を拭きながら司にそう説明をし自分の体を拭いていく。


 その間、司の方はその利之に渡してもらった真っ白いタオルを見つめた後に利之の事を見ながら体を拭いて行くのだ。


「こんなにこの時代になると手ぬぐいっていうのは柔らかくなるのか?」


 この時代に来てきっと司が現代の事について初めて質問してきたのかもしれない。 その司からの質問に利之は司の方へと振り向き、


「手拭い……?」


 その司からの質問に利之は少しばかり考えると、急に手を叩き、


「あ! そうか! 司の時代っていうのはまだタオルって言わないんだもんね。 その時代っていうのは確かに日本ではタオルの事を手ぬぐいって言ってたのかもね。 まぁ、とりあえず、司が言う手ぬぐい、現時代ではタオルっていうのだけど、そうだよね……手ぬぐいに比べたら、現代のタオルっていうのは柔らかくなってるのかもしれないよねぇ。 流石に今現代だって手ぬぐいっていうのはあって触った事はあるのだけど、タオルよりかは気持ち的に固いっていうイメージはあるよね」


 半分独り言のように答える利之だったのだが、司はやっと利之に慣れて来たのか、関心があるように「ふーん」と答えるのだ。


 少し司は現代に慣れて来たというのか、それとも連れて来てくれた利之に少し心を開いて来てくれたのかは分からないのだけど、慣れて来たのか質問とかしてきてくれるようになってきた事は安心な所なのかもしれない。


 きっと司の方も来た時代が分かって来たから気持ち的に慣れて来たのかもしれない。 それにとりあえず一緒にいる人間が日本人である事にホッともしているのであろう。 これがもしタイムスリップをして、それが外国だったりしてこうも文化の違いや言葉の違いもあったなら、先ず言葉で不安になるだろうが、それもないのだから気持ち的に慣れて来たのかもしれない。


「あー、パジャマはここにあるからね」


 そう利之は司に言うと、司はパジャマを手に取り着替え始める。


 司がパジャマに着替え始め利之の方はもう着替え終わったからなのか部屋へと向かう頃に、


「利之ー! これは、どうしたらいいんだ?」


 その司の言葉に利之は振り返ると、その司の言葉に何かピンっと来たのであろう。 そこで足をもう一度脱衣所へと向かわせるのだった。


「もしかして、パジャマって着た事ない?」


 利之からの質問に頭を頷かせる司。 その司の行動に納得する利之。


 司は明治時代から来たのだから、今現代の文明の事なんか知る良しもない。 先ずは家電は確実に使い方なんか全くもって知らないとは思ったのだが、まさか洋服までとは考えてなかった事だ。 まぁ、昔の時代から来た人間なのだから、ある意味赤ちゃんと一緒と考えた方がいいだろう。 となるとこれからは沢山の事を一から教えていかないとならない。


 とりあえず司はパジャマは簡単に着ていたというのか、ズボンの方は前後ろは反対に履いていたとしても、ここは先ず部屋の中なのだから気にしなくてもいい所ではあるのだが、とりあえずパジャマの上だ。 初めてボタンタイプのパジャマを着る子供と一緒なのだから、そこからやり方を教えていく利之。 まだ子供も出来てないのに人に初めてやり方を教えている。


 いやしかしボタンの閉め方なんか教えるのも難しいのだが、初めてやるのも結構難しいものだ。


 一応、利之は司に説明し、司にやらせてみるもののボタンを引っ掛ける事に時間が掛かっているようにも思える。 そこに焦ったくなったのか今日の所は利之が司にパジャマを着せて上げたようだ。

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