2ー4
利之の方も脱ぎ終わり浴室の方へと向かうと、今まで浴槽の方にお湯を溜めていたのだから今度はシャワーの方にお湯が出るように変更し、
「こうするとお湯が出るん……ぁ……」
さっきまで別に司の事を意識してなかったのだが、お風呂に一緒に入ってしまった事で自然と司の体が目に入ってきてしまった利之。 その視界に入って来てしまった司の体に思わず声を上げてしまっていた。
さっきまで着物姿だった司。 明治時代の着物というのか着物自体も気持ち的にダボっとしていたから気付かなかったのだが、裸になるとしっかりと体型というのが分かる。 しかし司という人物は見た目よりいい体つきをしているのかもしれない。 決してガリガリでもなく太ってるようでもなく本当に利之よりは身長は低いものの筋肉の方はわりとしっかりしている方なのかもしれない。
明治時代というのはそんなにいい物を食べていた時代だっただろうか? 確かに歴史の時間に勉強したのかもしれないのだが、利之の場合には興味等はなくただただ流して聞いていただけの事だ。 だってまさか自分が明治時代に生きていた人と一緒に暮らすなんて事は誰も思ってはいない事なのだから。
明治時代の身分とかってあったのだろうか? 江戸時代は身分に関してはそりゃあ有名でお百姓さんから武士までと幅広く別れていたのは覚えていたのだけど、明治時代というのはそこまで別れていたのであろうかという記憶なんてもうとっくにない。 もう利之は約十年位前に学校というのは卒業しているのだから。
それに学生時代というのは勉強があまり好きじゃない奴というのは遊びまくるに決まっている。 それに利之の場合には逆にそのおかげで今は俳優になれて有名人になれたのだから。 それはそれでいいのではないかと思う所だ。 そう勉強なんかせずに学校が休みの日や放課後というのは繁華街へと出掛けゲーセンやカラオケにしに行ってたからこそスカウトマンに声を掛けられていたのだから、それはそれでいいのかもしれない。
人というのは得意不得意というのがある。 勉強が得意な人もいれば不得意な人もいる。 例え勉強が苦手であっても他に得意な事があるのだったら将来的には勉強なんてしなくてもいい。 そう利之のように演技が上手い人は役者になればいいのだから。
いやしかし利之もなかなか毎日のように鍛えているようで、そこそこは体には自信があったのだが、それでも司の方は本当にいい体つきをしていた。
それはとりあえず置いておいておこう。
利之は司の方に視線を向けると、
「とりあえず、僕の方は浴槽の方に浸かってるから司の方は先に体を洗うといいよ」
そう言うと司の方は体を洗い始めたようで、そこにホッとする利之。
まさか、いくら昔の人間でも体の洗い方まで知らないっていう事はないだろう。 微妙な記憶ではあるのだが、明治時代の人でも月に一回位はお風呂に入っていたと書いてあったような気がするのだから。 そう思いながら利之はなるべく司の体を見ないように反対側を向き浴槽の中で完全に体を預けるのだ。
しかし本当に誰かとお風呂に入ったのは何年振りという感じなのかもしれない。 現代の日本において好きじゃない限りは銭湯という所に行く人は少なくなったからだ。 現に銭湯というのは人が来なくなってしまったからなのか、それとも家にお風呂があるのが当たり前な時代になったからなのか儲けなんかないばっかりにどんどんと廃業してしまっている。 となると小さい頃に家族と入ったとか誰かと入った記憶というのは最後になるという事だ。 そうなると利之からしてみたら他人と入るのは初めてという事だ。
そう思ったからであろうか、途端に顔を赤くし完全に司の事が見えないように頭を浴槽の中へと俯けてしまう。
とその時、どうやら司の方は体を洗い終えたようで、
「あ、あの……体洗いましたけど……」
そう気持ち的に申し訳なさそうに利之に声を掛けて来るのだ。
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