2ー2
そんな姿の司に利之は手を差し伸べると、
「まさか、ソファでバランス崩すなんて思ってもみなかったよ。 そう言えば、司の居た時代ってこんなに柔らかい物は無かったのかな? とりあえず……」
利之はそう言って司をソファへとちゃんと座らせると、
「とりあえず、動かなければバランスを崩す事はないと思うからさ、少しの間ここに大人しく座って僕からの質問に答えて欲しいんだけどな」
利之は司の方に顔を向けると笑顔を送る。
笑顔なんて利之からしみたら朝飯前だ。 いつだってどこにいたって役者をしてない時の利之というのは色々な人に笑顔を振りまいてファンを増やしているのだから、もう笑顔に慣れてしまっていると言っても過言ではないのかもしれない。 それに笑顔だけでも人は和らぐもんで、そこはどんな人でも同じだろう。 笑顔は世界共通、そしてどの時代でも共通な事なのだから。
「とりあえず、先ずは司のその格好からして何時代にこの洋服? あ、違うか……だって、そもそも司が着ているのは洋じゃないもんね……だから和服? あー、着物でいいのかな?」
そう利之は半分独り言みたいなのを言いながら検索サイトで文字を入力し始める。
マウスを動かしていると『着物』で検索ワードをかけてみたものの出てくるのは、本当に現代の着物ばかりで司が着ているような着物というのはなかなか出てこない。
「んー、もうちょっと幅を縮められないかな?」
一瞬、利之は手を顎に付けて考えてみてるものの、他にワードになる言葉が見当たらないようだ。
「じゃあ! 時代で調べて言ったらいいのかな? 例えば、『江戸時代 服』みたいにね」
再び独り言のように言って、調べ始める。
「流石に江戸時代ではないのかぁ? まぁ、司自体も髷は結ってなかったしね。 じゃあ! 次は明治時代!」
そう言って利之が再び検索してみると、今度は今の司みたいな格好の着物が沢山出てきて、
「あ! 司は明治時代の人だったんだねぇ。 そう言われてみればそうなのかもしれないね」
そう明治時代になると髷は結ってる人と結ってない人と出てきて、少しずつ西洋文化も日本に入って来始めている時代だったのかもしれない。 中にはスーツらしき洋服を着ている人もいるのだから。 そう着物がワンピースなら着物でもツーピースになってきているようにも思える。 今で言ったら剣道する時に着る道着が近いのかもしれない。 上が着物で下が袴みたいなのだから。
「……あ、ガス灯……」
そうさっき司がぼそりと口にしていた言葉だ。 利之はパソコン画面に出て来ている文字を読んでいると、それが目に入って来て口にする。
「あ、そっか……この時代に主流だった明かりというのはガス灯だったんだね。 ガス灯っていうのは、流石に今みたいな明かりの明るさはなかったって事かぁ。 寧ろ、かなり暗かったって事で周りもあまり見る事が出来なかった。 足元がやっと見える位だったって訳なんだね。 とりあえず、司は明治時代の人だっていうのは分かったからさ、それだけでも良かったかな? まぁ、今日はもう遅いから色々と司の事を聞くのは明日以降にしようかな? って言っても僕は仕事あるんだけどね」
そう一応利之は司に向けて話をしているのだが、どうやら全くもって利之が言ってる事は司には通じてないようにも思える。 だってずっと利之の言葉に首を傾げてしまっているのだから。
「ま、いいかぁ」
と司の事を拾って来てというのはおかしいのだけど、司の事を勝手に連れて来てそう楽天的に考えている利之なのだが、今後文化の違いに大変な事になるとは思ってないだろう。
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