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 利之はとりあえず司の手を取るとマネージャーと一緒に車まで向かう。 マネージャーが運転するワゴンの後部座席へと乗り込もうとした時、一瞬後から乗ってくる利之の方に司は視線を向け、


「こ、これは……?」


 その司の言葉に慌てたように司の口を手で塞ぎに行く利之。


 そう、その言葉だけで司が言いたい事が利之には分かったいう事だ。 もし利之の推理通りなら司という人間は過去の人間で、この現代の物に関してはかなり知らない可能性がある。 なら分からない事は質問してくるだろう。 利之は全然そういうこういう事に関して答える気はあるのだが、今はそういった事情を知らないマネージャーがいるからこそ、そこは簡単に答えられる訳もなく司の口を塞ぐだけで止めたようだ。


 とりあえず利之は司の事を押し込めるようにして車へと乗り込ませると、誤解を生まないように司の耳側でマネージャーには聞こえないような声で答えるのだ。 まぁ、多分車独特の音に阻まれ、小声で喋れば運転席にいるマネージャーまでは声が届かないと思ったからなのかもしれない。


「とりあえず、色々と僕に聞きたい事はあるのかもしれないけど、そういう事は僕の家に着いてから聞いてくれると嬉しいかな? そうだよねぇ、司からしてみたら、きっと、珍しい物ばっかりだから気になっているのかもしれないけど……」


 そう利之が言うと司の方は納得してくれたようで、今度窓の方へと視線を向ける。


 そこにホッとする利之。


 だが本格的にホッとするのは、まだまだこれから先の事になるのかもしれない。


 全然、利之は今回司を家に招くという事や、司が例え過去から来た人間だとしても、人を助けるっていう事は全くもって問題ではない。 だが逆に言えば問題は山積みになってしまう可能性はある。


 司の事をいつまで匿うというのか世間にバレないようにするまで、いつまで掛かってしまうのか? という事。 どうやって司を過去に戻すのか? という事。


 その他色々とあるのかもしれないのだが、今の所思い付くのはそれ位だ。


 利之はそう考え事をしていると、若干、司の存在を忘れていたようだ。 そう急に思い出したかのように司の方に顔を向け、何か話さないとと思うのだが、今は実際何を話したらいいのか? っていうのが分からないようだ。 そう今はマネージャーである千聖も車に乗っているのだから聞かれては困るという心理が働いてしまっているからなのかもしれない。 だが千聖には、この今いる人物の事を中学校の時の友達と言ってあるのだから逆に会話しないと不自然だ。 だって普通は中学時代の同級生に会ったなら、会話とかって盛り上がるのだから。 それが盛り上がらないっていうのは、やっぱりおかしいと思う人が少なからず居るんではないかと思う所だ。 逆にそこは気にしないっていう人はいるのかもしれないのだが、それでも殆どの人間が変に思うのは間違いない。


 とりあえず今日の撮影現場というのは利之の家に近かったという事もあってか約車で十五分で利之の家に到着するのだった。


「千聖さん……今日はこのマンションの地下駐車場でいいよ」


 利之はそう言って司の肩に腕を回すと車を降りる。


 千聖という人間はわりかし利之の言う事を聞いてくれるマネージャーなのかもしれない。 利之がそう言えば何の疑いもなく千聖は利之の事を簡単に見送ってから車で自分家へと帰ってしまったのだから。


 そこに軽く息を吐く利之。


 だが利之からしてみたら、これからだという所なのかもしれない。 これから司に色々と聞いていかなければならないのだし、住まいの方も提供したりしなければならないのだから。 それに電化製品等の物の使い方も教えておかなければならないのかもしれないのだし、利之からしてみたら色々と大変なのかもしれないのだが、やはり人といる生活というのは久しぶりな感じで気持ち的には喋り相手が出来たという所だ。


 一人暮らしをしている人なら分かるかもしれないのだが、人間、一人というのは本当に寂しいもんで何をしても一人だとつまらないもんだ。 テレビを見ててもゲームをしてても何も反応が無いのだから。 確かに一人なのだから気遣う事もないのだけど、でもやはり寂しいと思うのが人間だろう。


 とりあえずエレベーターで利之の部屋へと向かう二人。


 エレベーターに乗った時の司のリアクションが本当に今現代の事を何も知らないっていう事をもっと証明してくれた。


「星ー! 下に星がー、沢山!!」


 って司が騒ぐもんだから、利之は不思議に思いながらも窓の外を覗くと、そこには確かに沢山の星が下の方で輝いているように見える。


「あー、成る程ね。 司にはこれが星に見えるって訳だー」


 何時代から司が来たのかは分からないのだけど、星というのは長年輝いてきたもんなのだから、どの時代でも共通しているのであろう。


 そこで利之はぼそりと呟いたのだが、司に、


「これは星ではないよ。 電気の灯りなんだからさ」

「電気? ガス灯?」


 電気を知らないとは本当にいつの時代の人なんであろうか。 まぁ、そこは後で詳しくパソコンかなんかで調べると考えた利之は家に向かってから色々と聞いたり教えたりする事にしようと決めたらしい。


 エレベーターを出て利之の部屋へと向かう。 このマンションというのは真ん中が吹き抜けになっていて、その周りを囲むようにして家があるっていう感じだ。


 利之が鍵を開けドアを開けると今まで暗かった部屋に明かりが灯る。 人工感知センサーが作動し人が部屋に入ってきた事によって勝手に部屋に明かりが点くシステムになっていた。

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