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 その人物は利之の事を見ながら、何でか分からないのだが怯えているようにも思える。 しかし何でそこまでして、あの現場から逃げて行った男性はそこまで怯えてるんだろうか? そこに不思議に思いながらも利之は今度は優しく声を掛けるのだ。


 そう利之はやっと息の方も整ったようで、その怯えている人物に視線を合わせしゃがむと笑顔を向ける。 そうする事でその人物は逆に観念したかのようにその場へとへたり込むのだった。


 その人物は悪い事してるような人物には見えない。 ただ現代には似合わないような服装をしていたから逆に目立ってしまって気になってしまっただけだ。


 暫くの間二人の間に沈黙が流れる。


 どれ位の時が経ってしまっているのかは分からないのだが、時間は経ってしまっているようにも思えるのだが、今日は既に仕事を終えてしまっている利之には時間があった。


 きっと利之はそうその人物が口を開いてくれるまで待つつもりなのかもしれない。 まぁ、追い掛けて来て何もアクションを起こさないのはなんというのか、人としてどうかと思ったからなのかもしれないのだが……。


 なんと言っても何か通じるというのか声を掛けなきゃいけなかった衝動みたいなのにかられたというのか、何かこう気になったから声を掛けたというのか、何かこう電気みたいなのが走ったからというのか……? 何でか利之はその人物が気になってしまったから声を掛けてしまっていたのだから。


 暫くしてその袴姿の人物は利之の方に向かい顔を上げる。 すると利之の方もその人物の事を笑顔で暫く見つめるのだ。


 一瞬視線は合ったもののその袴姿の人物は利之から視線を逸らすと、やっとの事で口を開き、


「……ここは何処だ?」


 口を開いて来てくれた事で、その袴姿の人物いうのは男性だという事が分かった。


 その人物の服装というのは袴姿で今現代ではコスプレというのがあるのだから、もしかしたら女性が男性のコスプレをしているだけいう可能性もある。 服装だけでは分からなかった所だったのだから。 声を発してくれた事で男性だというのも分かったし、日本語を話せる所からすると日本人だという事までは分かった。


 その袴姿の男性の質問に利之は一瞬辺りを見渡して、


「ここは……?」


 利之の方も周りを見ながら今自分が何処にいるのかを確認しているのかもしれない。 そう利之だってその袴姿の男性の事を夢中になって追い掛けてしまっていたのだから、今自分がいる所が分からなくなっているようだ。


 完全にビルとビルに囲まれてしまっているエリア。 本当にその場所というのは四方八方ビルに囲まれてしまっているのだから、本当に利之だって今は何処に居るのか分からない。 


 だが今現代において今自分が居る場所が分からなくなってもスマホには地図がある、そして利之はそれを開くのだ。


 そして利之は開いた地図アプリをその人物へと見せ、


「とりあえず、僕達がいるのは、ココだよね……」


 その画面を指先二本で広げて、拡大し、その人物にも見えるように見せてみるのだが、その人物の反応というのは現代人には無い反応をしているようにも思える。


 この時代において、スマホを知らない人物というのはほぼいないだろう。 いや高齢者や子供なら知らないのかもしれないのだが、見た目からして完全な成人男性だと思われる人物が知らない訳がない。


 もしかしたら普段は山奥の方に住んでいてスマホの電波が届かないエリアなら持っていないのかもしれないのだが、それでもスマホ自体を知らない人はほぼいないだろう。


 よくよくその袴姿の人物の様子を見ているとスマホ画面を見て完全に首を傾げてしまっていて目をもパチクリとさせてしまっている。 そんな様子から利之は、


「もしかして、スマホの事を知らない?」


 その利之の質問に、その人物は頭を二回程大きく頷かせてくるのだ。

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