第13話 泣く

 赤ちゃんの一ヶ月健診は、本当の出産予定日の頃だったので、この頃から赤ちゃんは体力が付いてきたのだろう、よく泣くようになってきた。


 そう、赤ちゃんは泣くのです。


 抱っこしてゆらゆらしたり、スイングするハイローチェアに乗せたりしてあやすけど、泣き止ませるのに苦労する。


「直母なら、“泣いたらOP”なんだけどねー」と義母が言うけど、全く咥えてくれないウチの子には使えない手法だ。


 最初はきちんと授乳量もクリアしてるので、飲ませ過ぎるのも良くないかなと思った。

 そう思うのは、NICUで、飲んでもすぐミルクを欲しがる赤ちゃんがいたのだけど、助産師さんは「飲ませ過ぎになるから」と、きちんと授乳時間を守っていたのを見たから。


 でもミルクじゃないから、飲みたいだけ飲ませていいかなと思い直し、搾乳を追加で飲ませてみた。

 これで泣き止むかな?と思ったけど、飲まない。

 母乳が足りない訳でもないらしい。


 便が出ない時は綿棒刺激をするし、尿もきちんと出ている。

 オムツを替えても、関係ない。

 室温も多分大丈夫。


 …困った。


 ある時、やっぱり何しても抱っこしても全然泣き止んでくれない時、空の哺乳瓶を咥えさせてみた。するとチューチューと吸い付く。


 ん?


 追加の搾乳は飲まないけど、口寂しいのかな?


 そう思った私は試しに“おしゃぶり”を買ってみる。

 口や歯並びに影響出なさそうなものを吟味して選ぶ。


 そしてまた理由なく泣いている時に試してみた。


 咥えて…プッと吐き出した。


 ダメかー…。


 哺乳瓶の口なら空でもチューチューするのに。

 慣れたものじゃないとダメなのね。


 でも、哺乳瓶の口はおしゃぶり代わりにはならない。


 きっとこの子に合う泣き止ませ方が何かあるはず。そう思ってまた試行錯誤するけど、なかなか当たりは出てこない。


 それからしばらく、効果の無かったおしゃぶりは忘れていたのだけど、日が経ってからまたトライした時がある。


 やっぱりプッと吐き出すのだけど、泣き方がちょっと緩くなるし、なんかプッとするのが可愛いくて、おもちゃ代わりに遊んでみた。

 おしゃぶりは口に入れるものなので、これはちょっと泣く気を逸らすというか、気晴らしにいいかも、と思った。


 何回かプッ、パクッ、プッ、パクッを繰り返してたら、チュッチュと吸い出し始めた。


 お、おー、吸ってる。


 おしゃぶりを受け入れてくれたのだ。


 なんか、棚ぼた。


 すると格段に楽になる。

 もちろん、泣いてる理由は確認するけど、特に理由がない時はおしゃぶりを咥えると泣き止んでくれるようになった。


 これは本当に有り難いものだ。


 ただ、周りを見ても誰もおしゃぶりを使ってる赤ちゃんは見かけない。

 お出掛けする時はちょっと気が引けてしまう。

 それと気になるのはやっぱり口への影響だ。

 “影響が少ない設計”とは書いてあるけど、本当はどうか分からない。

 使い過ぎないようには注意する。


 

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