第10話 退院後
久しぶりに家に帰ってきた。
病院生活にすっかり慣れていたので、家での生活はどうしたらいいか戸惑う。
とりあえず赤ちゃんを布団に寝かせて、夫が様子を見る。荷物はそこに置いておいて、私は搾乳の準備を始める。
病院で最後に搾乳してから結構時間が経っていた。
家で使う搾乳機は、病院で事前に消毒を済ませていた。ある程度搾ってから哺乳瓶に移し、赤ちゃんに飲ませる。
赤ちゃんは3時間を過ぎていたけど、いい子で待っていてくれた。
飲ませるのは夫に任せて、私は搾乳の続きをする。
搾乳機に溜めた母乳は、『母乳パック』という専用の袋に入れて空気を抜き、閉じる。それに日付を書いて冷凍する。
搾乳機を分解して洗い、消毒液に漬ける。
1時間後に消毒液から上げて乾燥する。
この手順は、ほぼ病院でやっていたのと変わらない。
これに加えて増えた作業は、
『冷凍保存していた母乳を、赤ちゃんの授乳時間に合わせて流水で解凍し、人肌に温めること』
母乳は電子レンジや熱湯で解凍すると、大事な栄養素が壊れてしまうので、絶対ダメだそう。
夫は仕事があるし、車の運転もあるのでしっかり睡眠も必要だ。
なのでこのルーティンは全部私1人でやる。
解凍→オムツ交換→直母練習→人肌に温め→授乳→ゲップ→搾乳→冷凍→容器洗浄・消毒→引き上げ
大体こんな感じ。
これを2~3時間おきに行うので、眠る時間は消毒から引き上げの間の1時間程度なのだけど、ここであの恐怖のワード『溺れる』が頭をよぎる。
それでなくても赤ちゃんの様子が気になるし、神経が常に興奮状態なので、ほとんど寝るなんてことはできない。
搾乳したものをそのまま飲ませるという方法もあるけど、搾乳してしまったら直母の練習が出来ない。
さすがに夜中まで練習する元気はないけど、夜中だけ順番を変えるとか、私にはそんな芸当は出来なかった。
多分、直母練習をしない時は、
搾乳→飲ませる分と冷凍する分に分ける→容器洗浄・消毒→オムツ替え→授乳→ゲップ→消毒から引き上げ
が、正解だったのかもしれない。
今だからそう思うけど、この時はそんな事をじっくり考える余裕も無かった。
退院してから1週間程は義母が泊まりに来てくれた。義母も仕事があるので、付きっきりというわけにはいかないけど、夫と私のご飯を作ってくれたり、私がシャワーする間赤ちゃんの様子を見てくれてたので、本当に助かった。
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