第8話 何度でも
次に面会に行った時、直母の再チャレンジをする。20分程かけて、『あーん、パクッ』を繰り返すけど、全く上手く咥えてくれない。
お手伝いしてくれてる助産師さんが、
「お口ちっちゃいからねー、お母さんのCKBは咥え易そうではあるんだけど、ちょっとまだサイズが合ってないのかも…。」と言う。
確かに、ウチの子はお口が物凄く小さい。観察してて1番小さいサイズは唇込みで横幅1mm。大袈裟でもなく本当に1mm。
一応言っておきますが、私の方は通常サイズです。温泉に入ってる時とか、他の方のがチラッと目に入る程度で見えてるけど、それで自分が違うサイズだと思ったことは一度もない。
「吸う力もまだ弱いし、もうちょっと成長するまで直母は無理かもね。
でも、練習してたらいつかできるようになると思うからまた頑張りましょ。」
と励まされる。
ウチの子は体重は出産時2800g程度でそこまで小さいサイズではないけど、予定日1ヶ月前の、ギリギリ早産の時期に出産したので、本来の予定日くらいまで吸う力が付いてこないかもとも言っていた。
一応NICUに行く度にトライはするけど、やっぱり全くダメだった。
抱き方を変えたり角度を変えたり、大きさを変えるシリコン製の補助CKBを使ったりしてみたものの、どれもヒットしない。
NICUの子のママは、赤ちゃんが未熟な子が多いからか、やっぱり授乳が上手くいかない人が割といるみたいで、落ち込む人も結構いるそうだ。
もちろん私だって落ち込みそうに心が傾いているけど、そこは踏ん張って気持ちを保った。
気にしない、気にしない。
その後に哺乳瓶で、事前に搾乳した私の母乳を飲ませると、ゴクゴクと完食してくれるので、まぁいっかという気持ちにはなる。
半分は飲む様子を見てホッとする気持ち、半分は強制的な気持ちの切り替えだけど。
「赤ちゃんの隣りで搾乳してもいいですよ。」
と言われて赤ちゃんの顔を見ながら搾ってみた。
「赤ちゃんの顔を見たり匂いに反応して、搾乳量が増えるんですよ。」
助産師さんは言う。
確かに、いつもより採れる量は多いかもしれない。
でも、直母に失敗した直後では、ほんの少し虚しいような気持ちにもなる。
ちょっと複雑。
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