第6話 搾乳機という名の武器

 とうとう私は武器を手に入れた。


 『搾乳機』


 これは…優れ物だ。


 慣れると凄いんです!


 コツを掴むまで、ただOPの周りがベタベタになって、母乳が隙間から垂れてズボンまで汚れてしまうくらいの下手くそっぷりだったけど、上手くハマった瞬間、まるで牛の乳搾りのようにピューッと母乳が線で出てくる。


 かなり面白い。


 そして3回目くらいだったかな、搾乳機を使って搾った後、OPがとってもスッキリしたのです!!


 やっと…やっとですよ!あの辛い痛みから解放されたのです!


 “腺”というのが全くピンときてなかったけど、搾乳機を使ってからやっと理解した。


 それまで、母乳はCKBの真ん中の窪みからだけ出てくると思っていたけど、CKBには沢山の小さな穴があって、シャワーヘッドのようになっているのだ。


 その穴に繋がっているのが乳腺。


 そこが1本でも詰まっていると母乳が出てこないので、痛む。酷くなると炎症を起こしてさらに痛む。


 でも、搾乳機を使ったら、いろんなところから母乳が線を描いて出てきて、初めての場所から出てくるのを見た時、一部の痛みが消える。別の腺が開通したらまたOPの一部の痛みが消える。


 それを繰り返して、CKBの四方八方から出るようになった時、私のOPの痛みはすっかり消えてくれた。


 痛みが無いって、快適。


 これが普通なんだろうけど、私の場合すごく時間がかかった。それでも授乳生活の間、ずっとこの痛みが続くのかと途方に暮れていたので、本当に安心した。


 ありがとう搾乳機!


 でも何でこんな良い搾乳機を、助産師さんはおすすめしないのだろう?


 助産師さん曰く「搾乳機は、一方向でしか搾れないので、よく腺が詰まるの。だから手でいろんな方向から出す方がいいんだよ。」とのこと。


「でも、搾乳機はやっぱり短時間で採れるから、良いこともある。搾乳機と手絞りの併用するのが1番いいかもね。」と付け加えて言っていた。


 それからもう一つ。


 寝る時間が大幅に削られること。


 搾るのに30分、分解して洗浄するのに10分、消毒液のつけ置き1時間、その後取り出す。

 そしたらその1時間後くらいにまた搾り始めないといけないので、かなり時間が取られる。


 次使う時まで消毒液に漬けっぱなしにすればいいじゃん。と、思われるかもしれないけど、なんとなく、容器内に消毒液の雫が残るのが嫌だった。布かペーパーで拭くことも考えたけど、手の表面に常在する菌が付く恐れがあると思ってできなかった。

 多分、神経質過ぎるとは思うのだけど…。


 赤ちゃんがまだNICUから来てくれないので、これくらい『赤ちゃんが来たら眠れない』体慣らしに丁度いいと思って、時間がかかるルーティンですることに決めた。

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