二人で見上げた花火

古芭白 あきら

二人で見上げる夜空の花


「綺麗な花火……」


 夜空に咲いた大輪に言葉がこぼれた。


 ポンッ

 軽い音に続き、ひゅ~~……と細い光の糸が昇っていく。


 パッ

 暗い夜空に光の花が咲いた。


 どんどぉん!


 遅れて重い音がお腹に響き花火を私に実感させた。


 花火は次々と打ち上げられて夜空を彩っていく。そして、大きく咲いたその後は儚く散って消えた。


「ホントに綺麗……」


 それは本物の花のようで私を感傷的にさせた。


「……」


 きっと、黙って隣に立つ彼も同じ気持ちなんだって私は信じている。


 今年最後の夏、隣町の花火大会に彼を誘った。


 彼と付き合い始めてもう半年。だけど奥手な彼はキスどころか手だってまともに繋いでくれない。


 だから、今日こそはって私は気合が入っている。


 今の私は白い雛菊ひなぎくをあしらった薄紫色の浴衣姿。ちょっと大人っぽく、清楚な感じを出してくれているはず。


 きっと、彼も私に惚れ直すわよね?

 最後の夏に良い想い出が作れそう……


 見上げればたくさんの花火が咲き誇り夜空を明るく照らす。


「綺麗だ……」


 彼が漏らした言葉に、同じ気持ちなんだって嬉しくなって隣を盗み見たけど――私の目と彼の目がばっちり絡み合いって理解した。


 少し顔を赤らめている彼が見ていたのは花火じゃなかった……

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