第7話 ゲーマー夫婦、ギルドに登録する。
無事に従魔を手に入れてヨミとも合流を果たした俺は、忘れていた登録をしに冒険者ギルドに向かった。
(「配信始まるの速いなと思ったら登録忘れてたんかい」)
(「しかも必須の冒険者ギルドに入ってなかったとか」)
(「ある意味流石だね」)
「いやぁ……早く従魔を手に入れたくて」
「速く生産がしたくて……」
「「完全にギルドの存在を忘れてた!」」
「―ま、私は生産ギルドに登録してるけど。じゃないと設備が無くて生産自体ができないし。」
ギルドは何個も入る事ができ、冒険者ギルドと生産ギルドの二大巨頭ギルドと、自分が取ったスキルに合ったギルドに入るのが一般的だと言われている。『剣術』を取っているなら剣術ギルドっと言った感じで。
それぞれに合ったギルドに入る事で、スキルに関する情報や効率の良い熟練度の上げ方などのサポートを受ける事が出来る。
だから、このゲームを初めて先ずする事はギルドの登録だと言われているが……まあ、欲望に素直になり過ぎて忘れていたという訳だ。
コメントと雑談しながら移動していると、直ぐに冒険者ギルドに着いた。
冒険者ギルドは始まりの街の中央にある転移広場の近くにあり、この街にやってきて直ぐにギルドまで行ける様に建てられたそうだ。
(「正しくなギルドだな」)
(「懐かしい。俺も最初はこのギルドにお世話になったな」)
(「みんなここから始まるもんな」)
「一言で表すと、少し大きめのファンタジーモノの冒険者ギルドって感じだな。」
「この手のゲームでは普通の内装だね。」
「ああ。けど、これぞギルドって感じで好きだな。」
ヨミとコメントを見ながら受付に並ぶ。
一度登録したら、特殊なモノを除いた普通のクエストの報告や報酬の受け取りをメニューから出来る様になる。……まあ、一部のプレイヤーはメニューからじゃなくてわざわざ列に並んで受付に行くそうだが。ファンタジーなギルドの受け付けと言えば、理由はお察しの通りだろう。
「あなたは、一々並びに来ないよね?」
「も、勿論じゃないか!全部メニューで済ませるさ!」
(「う~ん画面越しなのにこの怖さ」)
(「浮気、ダメ、絶対」)
(「最前線プレイヤーも通う位には特にここの受付は人気高いからな」)
「……え、そんな美人なの?ちょっと気にな」
「―貴方?」
「るわけないじゃないかっ!どんだけ美人でも最愛の妻に勝る人なんていないんだからねっ!」
(「草」)
(「草」)
(「ちなみに、マジで美人だぞ(小声)」)
「リスナーも、要らん事言うやつはBANっ!……だよ?」
(「はい」)
(「はい」)
(「マジすんませんでした」)
そうやってコントをやっていると、俺達の番になった。
「―ようこそ!冒険者ギルドへ!」
うむ。確かに、コメントが言う通りかなりの美人だ。元気系と言うか子犬系と言うか、そっち方面の美人だ。
「確かに結構な美人だな(小声)」
(「でしょ?(小声)」)
(「もう何人か系統の違う美人もいるぞ(小声)」)
(「俺の一推しはクール系美人のアイシスちゃんかな(小声)」)
「クール系?……ふむ、気になるな(小声)」
因みに俺は一言も受付嬢と話してないぞ。俺の分までヨミが話を進めてる。俺は後ろで見守りながらコメントと話してる。―あ、睨まれた……すみませんでした。
登録は何事も無く終わり、さっさとギルドを後にするヨミに急いで付いて行く。次のギルドに着くまでに謝り倒し、リアルで一つお願いを叶える事と引き換えに許してもらった。
共通して持っているのは『剣術』のみなので、次の目的地は剣術ギルドに成った。スキル関係のギルドは一つの区画に密集しているので、剣術ギルドの後はまた解散してそれぞれのギルドに行った後に直ぐ合流となった。
剣術ギルドでは、熟練度によって自動で習得するアーツの他に、熟練度ごとに条件を満たす事で習得できるアーツを教えて貰った。
―そして、俺はヨミ一旦解散した後に『従魔術』のギルドにやってきたわけだが……。
「―お願い、見してっ!欲しいものがあるなら奢るから!」
多分、ギルドの受付だと思わしき人に掴まって従魔を見せて欲しいとねだられている。……いやまあ、レアモンだし気持ちは分かるけどいきなりすぎない?茶髪のポニーテールが似合う可愛い感じの人に詰められ、困惑している。
(「奥さ~ん、早速浮気してる人がいま~す!」)
(「ヨミの方の生産配信は続いているので、報告してきますね!」)
(「告げ口じゃー!諸ども、奥様を呼んできなされー!」)
「いやちょまっ、違う違う!浮気じゃないから!こっちも困惑してるから!お前らふざけんなよ!(小声)」
(「うるせぇ美人嫁持ちが!」)
(「俺達と変わらない廃人ゲーマーのくせに人生勝ち組になった裏切りもんが!」)
(「妻がいながらガードが甘い方がわるいんでぃ!」)
ここぞというばかりにリスナーが攻撃してくる。普段は妻自慢してても暖かく見守る感じの癖に、こういう時は遠慮なく指してきやがる。……俺もまあ、ちょくちょく独り身を煽ったりしてたけどもね。
「正式にクエストとしてお願いするから!ホワイトホースの番なんて、滅多に見えるものじゃないの!」
「もちろん良いですよ。」
「ありがとう!早速、中庭に行こっか。」
まだ登録すらしてないのにいきなり個室に連れていかれて迫られたから困惑してただけで、別に見せるだけならただで良かったのだが、クエストにしてくれるなら喜んで見せますとも。
中庭に行く前に登録を済まし、簡単な自己紹介をする。
中庭に着いたら受付の人改めリラさんの指示に従い、従魔を結晶から出す。
従魔には、体の大きさや能力に因って連れ歩くのが難しい個体もいる。その為、従魔を結晶アイテムにして持ち運ぶシステムが存在する。
因みに、これはアーツじゃなくてメニューと同じでプレイヤーのアバターに付属されているシステムらしい。ヘルプにそう書いてあった。
「結晶解除―起きろ、『白雲』『白煙』」
ポーチから結晶を取り出し、システムを解除しながら中庭に投げる。
結晶が輝き、光が従魔の形へと変わる。
俺も誰かにこの子達を自慢したかったんだ。少し時間を取るかもしれないが、思いっきり語らせて貰おうか。
―なお、後が怖いのでちゃんとヨミには遅れるメッセージを送りました。……一様、鼻の下を伸ばしてない釈明も付けて。
神ゲーは配信と共に~ゲーマー夫婦はVRMMOを配信中!~ 智之助 @raito17
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