第二章 私が真の聖女なの?
第13話 【Side シーエ副騎士団長】騎士団、ラウロを見捨てる①
「シーエ副団長、私たち、もうこんな騎士団にはいられません! 星祭りの日から、イリス団長も帰ってこないし、そもそもイリス団長をあんな目に合わせたラウロ殿下直属の騎士団で働くなど……私にだって、騎士の矜持があります!」
騎士たちを集めた鍛錬が終わり、解散しようかという頃だった。
新人のクリシュナが私のもとにやってくるなりそういった。
「そうか……」
と私はため息をつく。同感だ。
イリス騎士団長が、アドルナート家の代表として、神殿の星祭りに出るという話は、前々から騎士団の話題に上っていた。
そして、我々は、我が騎士団の誉れ、イリス団長を応援すべく、一同で星祭りに向かったのがついこの間のこと。
……そこで起こったのは、騎士団のパトロンであるラウロ殿下にイリス団長が殺されかけ、第一王子であるリベルタ殿下に助けられるという顛末だった。
「この騎士団で、ラウロ殿下のために働きたいというものは、もう一人もいませんよ」
と、古参のエルネストも口を出す。
「副団長だって、そうでしょう? 星祭りで一番に席を立ったのは副団長じゃないですか!」
そうクリシュナが畳みかけてくる。
堰を切ったように、他の騎士も口々に言いはじめた。
「俺たちはもう、次にラウロ殿下のために働きたくありません!」
「そもそも、ラウロ殿下はこの騎士団に顔を出したことすらない!」
私はため息をついた。
「お前たちの気持ちはよくわかる」
ですよね、という顔で騎士一同が私を見る。
「しかし、ことを急ぐな。私を含め、ラウロ殿下のために騎士団にいなければならない期間は、各々まだ終えていないだろう。士官途中で辞するなんてことをいうものじゃない。それは、騎士道に反する」
「でも……!」
「まぁ待ちなさい」
はやる騎士に私はいった。
「そもそも、お前たちいきなり騎士をやめたとして、ほかに行き場があるのか? クリシュナ、お前は病気の妹と母のために、お金がいるのだろう?」
「うっ……」
「ほかの騎士も似たようなものだ。ここでの働き口を失って、困るものはたくさんいる」
全員が黙って私を見ていた。
「まぁ、そう焦らんことだ。期間満了まで、あとひと月もない。私の方でいいようにはからう。お前たちの希望も叶え、働き口もみつける。心配することはない」
「副団長……!」
騎士たちの顔がぱっと明るくなる。
私は、まかせておけ、と請け合うと、鍛錬場を後にしたのだった。
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