第14話 【Side シーエ副騎士団長】騎士団、ラウロを見捨てる②

 ◆◆◆


 半年に一度、ラウロ殿下に戦果報告をする。

 その戦果報告をラウロ殿下の執務室で一通り終えた私は、最後の一番大事な報告を申し上げた。


「ラウロ殿下、騎士団一同、今期限りでお暇させていただきます」


「騎士団一同?」


 思わず、といった調子で、ラウロ殿下は身を乗り出して私に問う。


「つ、つまり全員辞めるということか!?」


「はい、そのようで」


 私の言葉に、目の前にいるラウロ殿下は、みるみる顔を真っ赤にして立ち上がった。


「どういうつもりだ! 全員、全員だと…!?

 貴様……! 俺を馬鹿にしているのか!」


「馬鹿になどしておりません。どういうつもりもこういうつもりも……騎士は雇われて働くもの、今期の契約は終わりました。皆次の更新はしない、ということで私のもとに報告が来ているだけの話です」


「馬鹿にするな、お前もやめるということだろうが!」


 怒りの形相でラウロ殿下が私に詰め寄る。まぁ、その通りだが。


「俺の、俺の騎士団なんだぞ! なんて身勝手な……!どいつもこいつも勝手をいいやがって!!


「いったい何が不満だ! このようなこと、今まで一度もなかったではないか! 俺がお前たちを養ってやっているというのに、この恩知らずが!」


 それを言ったら、私たちは、このラウロ殿下の代わりに手足となり、命がけで魔物と戦っているというのに。


「……お気づきにならないのですか」


 何に?


「皆の心に、です」


 この魔法騎士団は、イリス団長がいたから成り立っていたようなものです。

 彼女が皆の命を助け、彼女が加わってからの7年、一人の死傷者も出さなかった。

 皆感謝していました。

 それを追い出したのですから、士気はがた落ちです。


 あんな女


 あんな女?

 仮にも婚約者ではありませんか


 部にすぎるぞ! 俺に口答えを!


 確かに。騎士の通りと、王族の通りは異なるのかもしれませんね。


 王位を継ぐまでに、ある程度の功績を上げねばならんのに! お前たちが俺に嫌がらせをするなら、俺にも考えがある…!


 私は黙っていた。もう、この男に言うべき言葉が見つからないのだ。


 もういい、お前たちは用済みだ。やめたければ勝手にやめるがいい。変わりなんぞいくらでもいる。


 私は見上げた。


「承知いたしました」


 そして立ち上がると、部屋を後にする。

 変わりなんぞいくらでもいる、そう思われていたのか。

 そう思っているなら、代わりを見つけてみればいい。さぁ見ものだ。我々と……そしてイリス騎士団長のかわりが、早々見つかると思うのであれば。


 私はもう、騎士一同を引き連れて、次の行くべき場所を決めていた。

 そう、イリス団長の下だ。


 ◆◆◆


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