第94話 もしかして……これがDジョブの力なのかしら?
掲示板 【ダンジョン】ダンジョン雑談スレpart612
102:名無しの探索者さん
なあ? お前らDジョブを獲得するのに何のモンスターを退治した?
103:名無しの探索者さん
あん? そんなんスライム獣に決まっとるやん
104:名無しの探索者さん
俺はネズミ獣やね
でもそれがどうしたんや?
105:名無しの探索者さん
それがさあ? 最初に強いモンスターを退治した方がレアなDジョブを獲得できるって噂を聞いたから、お前らどうなんやろって
106:名無しの探索者さん
あー俺も聞いたことある。実際にどうなんや?
107:名無しの探索者さん
あんなんただの都市伝説やろ?
俺の知り合いは無理して地下2階でウシ獣を倒したけどNジョブやったって言ってたぞ?
108:名無しの探索者さん
でも噂になるってことは実際にレアジョブ獲得した奴もおるんやろ?
俺も試してみようかな……
110:名無しの探索者さん
Dジョブを獲得できるのは一生に一度だけやし
噂だろうが都市伝説だろうが試して損はないわな
111:名無しの探索者さん
でもさ? 強いモンスターを退治しろっても、Dジョブもない人間が無理やろ? 誰か手伝って貰わんとモンスターに殺されるわ
112:名無しの探索者さん
だから実際に試す人は少ない
嘘か本当か分からん都市伝説止まりってわけや
113:名無しの探索者さん
そーいうのこそダンジョン協会がちゃんと調べれば良いのに
114:名無しの探索者さん
調べてると思うぞ?
まだサンプルが少なくてはっきり言えないだけやろ
115:名無しの探索者さん
思ったんやけどさ?
もしも最初に倒すんが黄金モンスターやったらどうなるんやろ?
116:名無しの探索者さん
そんなんお前。SSRジョブどころやない
URジョブを獲得できるんやないか?
117:名無しの探索者さん
まあ、そんなん宝くじどころの確率やない
ありえん話やけどな……
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自宅ダンジョン 地下2階 草原広場
暗黒の霧の漂う中、ハトサブローを踏みつけるグラサン男。
「にゃー!」「にゃーん!」
絶体絶命のハトサブローを助けるべく、白猫ニャン子とキジトラ ニャン美の2匹がテントを飛び出した。
「けっ。所詮は畜生よ。怪我人を餌に誘い出されるんだからよ」
「そのままテントに引き籠っていれば良いものを」
「ふん。だが畜生にしては見上げたその心意気。毒で苦しみ悶え死ぬより、俺が一息に殺してやるとしよう」
ニャン子とニャン美の前に盾を構える聖騎士が立ちはだかり、その背後、超盗賊が両手にナイフを構え狙いを定める。
「わんわん」
猫に続いてテントを飛び出そうとする子犬3匹であるが。
「駄目よ。子犬ちゃんたちまで行っては」
美代子は何とかテントに押し止める。
「でも、このままでは猫ちゃんハトちゃんが危ないのは確かよねえ……」
黒い霧の中。いよいよ体毛に蓄える聖なるヒールが切れたのか、猫たちの身体はデバフに侵され毒にさいなまれていく。
「へっ。畜生にしてはようやった方やが……これまでや!」
そんな折、草原広場の草木が騒めき揺れ動く。
「ん? なんだ? 何か風が吹いてきたみたいだが……」
風が来るのは地下1階、階段のある方角。つまりはこの風。地下1階から流れて来ているというわけで。
「ここはダンジョンだぞ? 自然の風など吹かないはずだが……」
いったい何だと顔を向ける男たちへと、突如、豪と勢いよく吹き付ける黒い風。
「ぶあっ!? なんやこの風……ただの風やない。黒い風……これは暗黒の霧や!」
草原広場に漂う暗黒の霧を吹き飛ばし、勢いよく流れ込む暗黒の霧。その色合いはグラサン男の霧に比べて遥かに濃密。
「まさかオレの暗黒の霧が吹き飛ばされたっつーのか!?」
「だが、いったい誰が!? 近くに誰の姿も見えないぞ?」
「姿かたちも見えない遠くから、これだけの霧を?!」
驚き慌てふためく男たちの姿に。
「わんわん」
今が好機とテントを飛び出る子犬3匹。
「駄目よ! ……って、あら? この霧。不思議と私たちに害はないような……?」
ガブリ。ハトサブローを踏みつけるグラサン男の足へと噛みついた。
「ぐあー!? オレの靭帯が!」
足下から解放されたハトサブローを。毒に弱るニャン子とニャン美をそれぞれ口に咥えた子犬3匹。一目散にテントへ向け走り出す。
「ちっ。子犬風情が! 逃がすかよ!」
素早く両手のナイフを投げつけようとする超盗賊だが。
「濃い霧で視界が……くそっ!」
ヒラリ。子犬は素早いステップでテントまで逃げ帰る。
「あの畜生ども……霧の影響を受けていないぞ」
「この霧。奴らの仲間が生み出す霧というわけか」
となれば立場は逆転。今度は逆に侵入者たちだけが暗黒の霧の中、デバフと猛毒に侵されながら戦う羽目となる。
「ふん。まあ、そのために俺が同行しているわけだ」
「ああ。奴らの仲間に暗黒魔導士がいるのは予想どおり」
男たちのうち1人が手にする盾を天に掲げる。
「SSRスキル。聖なるオーラ展開」
SSRジョブ聖騎士の有するスキル。聖なるオーラは自身を中心に聖なるフィールドを展開する。
聖なるオーラの範囲にあるその間、全てのデバフと状態異常は無効となり、さらには防御力上昇、HP継続回復をも付与する強力なフィールドスキル。
暗黒の霧と比べて展開範囲は極小となる代わり、そのフィールド強度は強く暗黒の霧をもよせつけない。
「お前たちの連れる白ハトも似たようなスキルを使うようだが……情けない畜生とは異なり、シベリアダンジョン奥地で修行した俺のLVは30。半日は展開し続けることができるぞ?」
さらには白ハト白姫様の聖なるフィールドがテントから動けないのとは異なり、聖騎士男の移動にあわせて聖なるオーラも移動する。お互いのLVの違いが影響するのか、その能力は白姫様の完全なる上位互換。
「ヒールッポ……」
スキルの性能差に何やら落ち込む白姫様であるが、つまりは一難去ってまた一難。
侵入者の放つ暗黒の霧が消えたことでようやく有利な状況で戦えると思ったペットたちだが、今度は聖なるオーラによる防御アップ+HP継続回復バフを受けて強化された敵が襲い来る。
反面。ペットたちに強化バフはないのだから、相変わらず勝ち目は乏しいままといえるだろう。
だが、無敵要塞テント内。そんな困難な状況を分かっているのか、いないのか。
「子犬ちゃんたち凄いわ! よく頑張ったわねー。偉い偉い」
見事2匹と1羽を救出した子犬たちの頑張りに、美代子はもふもふ全力で撫でつける。
「わんわん!」
心底気持ち良さそうに目を細める子犬たち。どうしたことか、その毛並みは生き生き艶々と輝き始める。
「あら? 何かしら? お母さんが撫でると、子犬たちが元気になるような?」
「にゃん?!」「くるっぽー!?」
その様子を見たニャン子とニャン美、ハトサブローが美代子の前に列を作り座り込む。
「あら? 猫ちゃんハトちゃんも撫でて欲しいってことかしら? それなら……よーしよしよし。良い子良い子。みんな偉いわよー」
撫でる美代子の手が光り、撫でられるペットたちの身体に力が溢れみなぎり始める。
「もしかして……これがDジョブの力なのかしら?」
美代子の脳裏に浮かぶのは新たに獲得した未知の力。Dジョブの能力。
──────
Dジョブ:良妻賢母(UR)
・良い子良い子:我が子の頭を撫でて超強化する。他人には無効。
──────
「わんわん!」「にゃんにゃー!」「くるっぽー!」
美代子の強化バフを受けた猫2匹子犬3匹ハト1羽。勢いよくテントを飛び出すと男たちへ向けて走り迫る。
「ふん。畜生どもが調子に乗りおって……」
「例え暗黒の霧がなくなろうとも我らには聖なるオーラのバフがあるというのに……所詮は脳みそのない畜生か……」
「聖騎士である俺が攻撃を抑える。その間にお前たちは……って、なんだ?! 早い!?」
予想を超える素早い動きで迫り来る3匹の子犬たち。受け止めるべく聖騎士は盾を構え立ちはだかるが……
弾正が学校に通う間も24時間をダンジョンで暮らすペットたち。必然、黄金モンスターに出会う機会も多く、弾正の知らない間にも複数の黄金肉を食していた。
うちの1つが自宅ダンジョン地下2階。黄金イノシシ獣を食して得たEXスキル:イノシシ・アサルト。
「わんわん!(イノシシ・アサルト)」×3
猛烈な勢いで聖騎士を目掛けて飛び掛かる3匹の子犬たち。
「聖騎士を舐めるなあああ! SSRスキル聖なる盾!」
盾スキルを発動。飛び掛かる子犬たちを受け止めるが。
ガイーン
「くっ!」
イノシシの突進力を体現するのがEXスキル:イノシシ・アサルト。
ガイーン
「ぐおおっ!?」
さらには美代子のバフを受けて超強化されているのだから、いくら聖騎士といえども無理があり。
ガイーン
「ぐぼあああっー!!!」
嵐の如き3連撃。ついには聖騎士は地面に吹き飛び倒れ込んでいた。
「おいおいおい!?」
「盾役を務めるお前が倒れてどうするんだよっ!」
必然。背後に守られるはずのアタッカー2人が無防備となる、その間隙。
「クルッポー!」
EXスキル:超音波を併用して空を駆けるハトサブロー。
グサリ
狙い違わずそのクチバシは、グラサン男の残された片目へと突き刺さる。
「ぐわー! オレの目がああ! こんなハト畜生にこのオレが……」
美代子の超強化を受けたハト突撃。目玉どころかそのクチバシは脳みそにまで到達。グラサン暗黒魔導士は死亡する。
「くっそー! どうなってやがる! なんでSSRの俺たちが犬猫なんて畜生に?!」
両手に短剣を構える超盗賊だが、今、戦う相手は先ほどまでのデバフにより弱る相手ではない。逆に超強化によるバフを受けた状態。
「にゃん」「にゃー」
間近に聞こえる2匹の鳴き声にナイフを振るうが。
「そこか!」
ズバーン ズバーン
「ぐあー! 俺の腕がああ!?」
まるでそこではなく、逆に超盗賊の両腕は切断。ナイフを手にしたまま地に落ちる。
超強化された猫2匹。そのEXスキル:鋭利歯で噛みつかれては超盗賊の身体など紙のように脆いものでしかなく──
「おのれ。聖騎士である俺が吹き飛ばされるとは……お前たち、大丈夫か!?」
何とか地面を立ち上がる聖騎士が見たのは、頸動脈から血を流し崩れ落ちる超盗賊の死亡する姿であった。
「まさか……暗黒魔導士に超盗賊……SSRジョブであるお前たちがただの畜生どもに?」
「あらあらまあまあ。みんな凄いわあ! 良い子良い子!」
残された聖騎士を取り囲むのは6匹の畜生たちとそれを見て喜ぶ狂人女。
「こうなっては逃げるしかないか……」
暗黒魔導士のやられた今、モンスターゲートを利用しての脱出は不可能。となれば地下1階へ。その後、地上への階段を見つけ脱出するしかない。
即座に決心した聖騎士。逃げ出すべく畜生たちに背を向けるが。
「やれやれ。どこの誰かは知らないが、まさか自宅ダンジョンに侵入して無事に逃げ帰れるとは思っていないだろうな?」
振り返るその目の前。いつの間にか学生服を着た少年が1人。聖騎士の前に立ち塞がっていた。
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