第86話 驚愕の自宅ダンジョン。

【ダンジョン】ダンジョン雑談スレ1555


102:名無しの探索者さん

聞いたか? 〇〇県で自宅ダンジョンが発見されたそうだぞ?


103:名無しの探索者さん

マジで? 自宅ダンジョンってことは、自宅にダンジョンが現れたってこと?


104:名無しの探索者さん

なんか部屋の床にダンジョンの穴が出来たらしい


105:名無しの探索者さん

マジかよ羨ましい。探索者になれば通勤時間0分やん


106:名無しの探索者さん

いやいや。危ないやろ。間違って穴に落ちたら死ぬぞ。住民は無事だったんか?


107:名無しの探索者さん

なんか親父が行方不明らしい


108:名無しの探索者さん

あーうん。それはアーメン。チーンやね。


109:名無しの探索者さん

でもさー? 自宅にダンジョンが出来たってことは立ち退きやろ?


110:名無しの探索者さん

ええやん。土地代に加えてダンジョンの売却利益を丸々くれるんやろ? 高値で落札されれば大儲け。羨ましいわ


111:名無しの探索者さん

それやけどな……なんやこの自宅ダンジョン。調査の結果、危険度Sランクに認定されたらしいで?


112:名無しの探索者さん

マジで? 最近だと阿蘇山ダンジョンも危険度Sランクだったけど、あれ落札するやついなかったよな?


113:名無しの探索者さん

当たり前や。危険度Sランクとか、そんな危ないダンジョン誰が買うねん。買っても死者が出るだけ。儲けなんてでねーよ


114:名無しの探索者さん

なんやつまらん。オークションのネット中継。楽しみにしてたのに


115:名無しの探索者さん

まあ落札者が出るかどうかは内容次第やろ。危険度Sランクってもモンスターが強いのか、ダンジョン環境が悪いのか


116:名無しの探索者さん

せやね。モンスターが強いだけならトップランカーでUR探索者の来栖くんを抱えるイケイケのダンジョン企業。セコス(株)が落札に動くやろ



都内 日本ダンジョン協会本部ビル内オークション会場。


「えー。それでは只今より〇〇県〇〇市にある民家で発見されたダンジョン。通称、自宅ダンジョンのオークションを開催します」


パチパチパチ。まばらに響く拍手の音から分かるとおり、会場に集まる人の数は少ない。


「えー。まずは今回、この自宅ダンジョンの調査に当たられました調査チームのリーダーから、自宅ダンジョンについて説明してもらいましょう。お願いします」


司会の合図に1人のいかつい男が壇上に上がると、マイクを手にする。


「おほん。えー。まず最初にこの自宅ダンジョン。すでに噂で聞いている者もいるようだが、ダンジョン危険度はSランク。非常に危険なダンジョンであることが判明している」


集まる人が少ないのも当然。オークション開催より前、危険度Sランクであるとの情報は漏れ聞こえており、そのように危険なダンジョンを落札しようという企業は限られる。


「まずダンジョンの立地は良好。元々〇〇市は都内のベッドタウンとして開発が進められたこともあって、都内まで電車で2時間。駅から徒歩15分。同じ危険度Sランクとはいっても都会を離れた山奥にある阿蘇山ダンジョンとは比べ物にならない良好な立地といえるだろう」


ほう。確かに。探索者が訪れやすいな。それは魅力的だといった頷く声が漏れ聞こえる。


「続いてダンジョン内の環境だが……端的に言ってこれは最悪だ。降りてすぐの地下1階からすでに毒を帯びた黒い霧が充満している。それもDジョブを持たない生身の人間が触れたなら3分と持たずに死ぬだろう猛毒の霧だ」


マジかよ? そんな危険な霧が……といった騒めきの起きる会場。


その様子に母とイモと3人で参加。会場の座席に座る俺は満足気に頷いた。


学校をサボり集中的にLVアップに励んだのが功を奏したというわけで、俺のLVは33まで上昇。結果、現在の暗黒の霧に含まれるデバフ効果は以下のとおりとなっている。


─────────

■暗黒魔導士改(SSR+)LV33(4↑UP)


・スキル:暗黒の霧+(五感異常、全能力減少、毒、腐食、MP減少、MP蒸発、恐怖、麻痺、睡眠、混乱、放心、封印、暗黒火傷、属性耐性減少、呪い、MP呪い、猛毒、暗闇、グラビティ、暗黒氷結)


・猛毒(New)猛毒になる

・暗闇(New)視界が暗闇に塞がれ命中率ダウン

・グラビティ(New)体が重くなり敏捷ダウン

・暗黒氷結(New)身体が凍り付いて敏捷ダウン

─────────


LV30で暗黒の霧に「猛毒」効果が追加されたこともあって、今の俺は自宅ダンジョン地下4階。オーク獣すら暗黒の霧のみで倒せるようになっていた。


「猛毒の霧で溢れる危険極まりない極悪ダンジョン。防護スーツなしでの探索は命取りと言って良いだろう」


まさかそんな危険な霧が湧いているとは。防護スーツが必須とかアカンわそれは。危険度Sも当然か……と自宅ダンジョン落札に興味のあった企業の大半がここでサジを投げる。


「猛毒の霧の影響により視界も悪い。他のダンジョンと異なり探索するならライトか何かの光源確保は必須になる。そして最後に現れるモンスターだが……まず地下1階全般に出現するのがゴキブリ獣。それも一般的にゴキブリ獣と聞いて思い浮かべる数を5倍にした、大量のゴキブリ獣が湧いていると思って欲しい」


うげー。あれ苦手やねん。きんもー。といった不快な反応を示す参加者たち。すでに落札するつもりはないが、一応は最後までオークションを見守ろうと残っていた。


「そして……不明なモンスターが2種類。小動物型で鋭利なツメを持つモンスターと、空を飛び鋭利なくちばしを持つモンスター。いずれも霧で視界が悪いことに加えて動きが素早いことから、詳しい正体はつかめていない」


ふむ。まあダンジョンの種類は多い。未知のモンスターも出るわな。といった感じで真剣には聞いていない参加者と異なり、挙手の後、隊長に質問する参加者が1人。


「未知のモンスターについて映像はないのでしょうか? ダンジョン調査に際しては映像を撮影。ダンジョン説明で公開するのが通例だと思うのですが?」


「君は……セコス(株)のトップランカー。URジョブを持つ来栖くんか?」


マジで? 質問者の顔を見るなら、確かに以前に雑誌で見た顔そのもの。俺がライバルと認定する来栖くんが座席に腰かけていた。


「どうも猛毒の霧には電波を遮断する効果もあるのか、撮影したカメラには黒いノイズだけが映っていた」


「霧にそんな効果が……」


「あくまで想像だ。ダンジョン内には自然科学で解明できない未知の要素が多く、この猛毒の霧の正体すら我々には不明なものとなる」


実際は猛毒の霧ではない。暗黒魔導士の使う専用魔法、暗黒の霧だが……


SSRジョブの取得率0.01パーセントは、1万人に1人の取得率。そして日本人口1億2千万のうち、15歳以上の人口は1億5百万。うち、ダンジョンに入りDジョブを取得したのは、ダンジョン登場から3年ということもあって、わずか300万。


つまりは日本に存在するSSRジョブの人数おおよそ300人で、さらにはSSRジョブだけでも複数のジョブが存在する。日本ダンジョン協会に暗黒魔導士が存在せず、暗黒の霧だと気づかないのも仕方がない。


「よってこれまでの調査により日本ダンジョン協会は当ダンジョンを驚愕の自宅ダンジョンと呼称。その危険度をSランクと認定した。俺からの説明は以上だ」


調査チーム隊長が壇上を降りたその後。司会の合図により、いよいよ自宅ダンジョンオークションがスタートする。

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