第81話 担当者へ俺は自宅ダンジョン発見について報告する。
佐迫さんが連れ出された後の会議室。
新しいネタを探して足早に部屋を出る雑誌記者たち。そして無駄な時間を過ごしたとばかり不機嫌そうに歩き去る毒島議員。彼ら部外者のいなくなった室内。
「……それでは私もこれで失礼します」
居心地が悪いのか、そそくさ業務に戻ろうとする受付チーフだが。
「少し待ってもらえないだろうか?」
「あ? はあ……何ですか?」
受付チーフを引き止める俺は、確認のため加志摩さんへと振り返る。
「加志摩さん。これで父親である加志摩議員との約束の5千万円。大丈夫だろうか?」
「もちろんですわ。政策活動費で落とすなら領収書も不要だと父が言ってましたので間違いありませんわ」
さすがは与党議員。税金から出すのであれば自分の懐が痛むこともない。土壇場で金が惜しくなりゴネル危険もないというわけで。
「受付チーフさん。すまないが新しくダンジョンを発見した場合の報告窓口について教えて貰えないだろうか?」
「は? それはあなたがダンジョンを発見したということですか?」
「そうだ」
「……そうですか。それでしたら担当の者に連絡しますので、このまま会議室でお待ちください」
会議室を出た受付チーフは周囲を見回した後、スマホを取り出し電話を1本。その後、品川ダンジョン調査部へ赴き新ダンジョン発見の報告を伝えるのであった。
受付チーフが立ち去ってからしばらく。
「
「自宅だ」
「は? 自宅とは?」
「自宅とはマイホーム。築50年、そろそろガタも来て雨漏りもあるが、我が城家の本丸とも呼ぶべき家屋のことになる」
「あ、はあ。まあ、自宅にダンジョンが出来たと。まあ、裏庭にダンジョンが出来た例もありますから、その系統ですかねえ……えー。それでは取り急ぎこれから現場の確認に入りますが、よろしいですかね?」
「その確認というのは? ダンジョンの落札額を決める内部調査のことだろうか?」
「ああ。いやいや。ダンジョンが剥き出しの状態では何も知らない一般の人が立ち入る危険がありますからね。取り急ぎ誰も立ち入れないよう入口を封鎖する感じです。本格的な内部調査は……あースケジュールを見る限りでは……最短で3日後ですね」
その後、一度イモに電話した俺はダンジョン協会職員を連れて自宅。ダンジョン入口のあるイモの部屋まで案内する。
「イモー。いるかー? ダンジョン協会職員の方が来てくれたから入るぞー?」
「お待ちしてました。どうぞお入りください」
ガチャリ。返事と共にドアが開かれる。
「ありゃー?! 本当に部屋にダンジョンかあ……初めて見ますが、まあ、これなら赤の他人が間違って立ち入ることもなさそうですなあ……」
ガランとした室内。その床に大きな穴だけが開いていた。
(イモ。電話してからの短時間で、よく部屋を片付けたな)
(ふふーん。イモ。力持ちなのだー)
いや。マジでどうやったのか? こっそり引っ越し業者でも呼んだのか?
すっかり空き部屋となったイモの部屋。協会職員はダンジョン入口に
「それじゃ最初に言ったように本格的な内部調査は3日後。それまでは誰もダンジョンに立ち入らないようお願いします。本来は協会職員が24時間監視するんですが……場所が場所な上に城さんは探索者さんですから、お任せして大丈夫ですかね?」
「自慢ではないが俺のダンジョンランキングは1932万4783位。任せて貰って結構です」
「へー。学生さんにしては凄いですね。それなら安心してお任せしますわ」
そうしてダンジョン協会職員の立ち去った自宅。俺は黄色テープをベリベリ剥がすとイモを連れて自宅ダンジョン、草原広場にある無敵要塞でペットたちと3日後に迫る内部調査について話をするのであった。
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品川ダンジョン独房
会議室で暴れたことで警備員により独房へ押し込められた佐迫だが。
「出なさい」
言葉と共に独房の鍵が開けられる。
「ちょっと! 受付チーフ。全然話が違うって感じじゃん!」
独房を出た佐迫。ドアの外に立つ受付チーフに勢いよく詰め寄っていた。
「何のことですか? あくまで私は裸眼鑑定で視た結果を伝えただけ。より精度の高い精密鑑定を希望するには、あなたの賄賂では足りませんね」
「この金の亡者! あんたが鑑定結果を流出させてること。雑誌記者に言ってやるじゃん!」
「ふん。たかがアパレルショップの娘の言うこと。誰が信じるのです? 何せあなたは与党議員を敵に回した上に、野党議員にも愛想をつかされたのですよ? もう誰も味方はいないことを理解してください」
「そ、それは……」
「でも大丈夫ですよ。国内に味方がいないなら、海外に味方を作れば良いのですから」
「そ、それは……どういう意味じゃん?」
「私はエンパイア連邦共和国に伝手があり、日本の企業を支援したいと。株を保有したいという人を知っています。どうです? あなたの父親、アパレルショップの社長に連絡をとってもらえませんか?」
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