第70話 すでに俺のLV28というのは探索者におけるトップクラス。
加志摩さんに黄金バッタ獣の肉を売却することが決定した。
黄金バッタ獣が出没するのは自宅ダンジョン地下2階。
だが、ゲートから黄金モンスターの出現する確率は0.3パーセント。しかも倒したモンスターが肉をドロップする確率は10パーセント。来週には加志摩さんの鑑定が行われるのだから、そのような運任せで黄金肉を集めるわけにはいかない。
となればモンスターゲートを掌握。ダンジョン魔力を消費して黄金バッタ獣を召喚するのが一番確実というわけで。
ひとまず俺は地下1階。手近に見えるモンスターゲートに手を触れる。
─────────
─暗黒門LV20 :黄金ダンジョン地下1階その1
─現在のステータス:自動転送モードで運転中
─対象数:ネズミ獣10
─転送完了まで:あと180秒
─ローカル管理者 :(城)
現在、マスター不在のためセーフモードで起動中。
ローカル権限で操作可能です。
─操作を選んでください。
・自動転送の設定
・召喚転送の設定
・別暗黒門へ転送
─────────
召喚転送を選択する。
─────────
─召喚する対象を選んでください
(現在のダンジョン魔力:2312)
・スライム獣:10
・ネズミー獣:20
・コウモリ獣:30
・イモムシ獣:40
・ゴキブリ獣:50
・黄金スライム獣:1000
─────────
モンスターゲート毎に掌握に必要なLV。召喚できるモンスターは異なるものとなる。まずは地下2階、黄金バッタ獣を召喚できるゲートを探す必要があるわけだが……その前に。
俺は「別暗黒門へ転送」を選択する。
─────────
─転送先のダンジョンを選んでください。
・黄金ダンジョン
・品川ダンジョン
─────────
転送先として今日、加志摩さんと行った品川ダンジョン地下1階のモンスターゲートが登録されていた。
つまり、モンスターゲート間の転送移動は、異なるダンジョンとも可能である。
その気になれば自宅から通勤時間0分。いつでも品川ダンジョンへ転送移動できるというわけだ。
もっとも品川ダンジョン地下1階と地下2階は監視カメラが存在する。品川ダンジョンへの転送移動を利用するのは地下3階以降。監視カメラのないモンスターゲートを掌握してからとなるだろう。
そうして俺は自宅ダンジョン地下2階。モンスターゲートを1つずつ手を触れ調べて回るわけだが。
─────────
─暗黒門LV30 :黄金ダンジョン地下2階その1
─────────
─エラー:暗黒門LV30の操作には暗黒熟練が不足しています
─────────
─暗黒門LV31 :黄金ダンジョン地下2階その2
─────────
─エラー:暗黒門LV31の操作には暗黒熟練が不足しています
─────────
─暗黒門LV33 :黄金ダンジョン地下2階その3
─────────
─エラー:暗黒門LV33の操作には暗黒熟練が不足しています
─────────
地下2階のモンスターゲートを掌握するには最低でもLV30が必要。そして掌握してからでなければ、召喚できるモンスターは確認できない。
現在の俺のLVは28。つまり最低でも後2つLVを上げなければならないわけだが……
すでに俺のLV28というのは探索者におけるトップクラス。何せURジョブを持ちトップランカーとして活躍する来栖くんがLV30を超えたと雑誌の表紙を飾っていたのが先月の話。
日々をモンスター退治に明け暮れるトップランカーですらLVが30を超えるのがやっとなのだから、一般庶民で学業もある俺が1週間のうちにLVを2つ。いやそれ以上に上げるなど普通は不可能となるわけだが……
当たり前であるが俺と自宅ダンジョンは普通ではない。
ダンジョン内に暗黒の霧をばら撒くことで、戦わずして寝ている間もモンスターを退治できる暗黒魔導士。そして、低確率とはいえ膨大な経験値が得られる黄金モンスターの出現する自宅ダンジョン。
俺と自宅ダンジョンの力を合わせるなら十分に達成可能となる。
「というわけで俺はしばらく学校はお休み。自宅ダンジョンに閉じこもることにする」
ゴールデンウイークも終わり明日は月曜日。授業も再開となるわけだが、連休明けに五月病を発症。学校へ来なくなる生徒が出るのはよくあること。1週間程度サボルだけなら学校も母もうるさく言うことはないだろう。
「おー。それじゃイモも学校さぼるぞー」
「いや。イモは駄目である。いってらっしゃい」
そうして月曜日の朝。イモを学校に見送った俺は1人、自宅ダンジョンに籠るのであった。
まあ、1人といっても実は1人ではない。ニャン太郎たち動物軍団とパーティを結成しているのだから1人と6匹。列を成して地下3階。ゴブリン獣の徘徊するフロアへ降りて戦闘を開始する。
もちろん地下3階で戦うその間も、地下1階と2階には暗黒の霧を充満させている。暗黒の霧のもたらす状態異常。毒と暗黒火傷によりモンスターは徐々にHPを削られ死亡。落ちた魔石はダンジョンに吸い込まれダンジョン魔力を増加させていく。
ただ、地下1階のモンスターはともかく、地下2階のモンスターはHPも多く毒と暗黒火傷だけで処理するには時間がかかる。地下3階にいたってはゴブリン獣ヒーラーが回復するため、俺たちが直接出向いて退治しなければならないわけであるが……
「にゃん」
ゴブリン獣を相手に爪で引っかき牙で噛みつくニャンちゃん軍団は頼もしい反面。
「クルッポー」
俺たちの後をトコトコ付いて回るだけのハトさん2匹。まあ、白姫様は治療魔法使いでハトサブローはその護衛。鳥目で暗闇が苦手なのもあって現状、戦力にはなっていない。
「クルッポー」
うーむ。ここにきて露呈する我がパーティの火力不足。何せ最大のアタッカーであるイモが勉学で不在なのだから無理もない。
「にゃん」
お前も戦えとばかり俺に肉球パンチするニャン太郎であるが、そもそもがデバッファーである俺に火力を期待するのが間違いというもの。
俺の暗黒の霧。デバフと状態異常で相手をじわじわなぶり殺しとする陰キャ戦法を得意とする反面、圧倒的火力で相手を瞬殺する肉食陽キャのような瞬発力は持ち合わせていない。
1週間でLVを上げるためにもモンスターを倒しまくる必要のある現在、イモのいない今の火力で果たして間に合うのだろうか?
最悪、イモが学校をサボるなら十分に間に合うだろうが……高校生である俺と異なり、義務教育期間であるイモ。なるべく学校をサボらせたくないと思うのが兄心。
そんなことを考えながらも戦う自宅ダンジョン地下3階。
「む?」
俺は自宅ダンジョンに展開する暗黒の霧に、モンスターではない。人間が侵入する感覚を感知する。
これは自宅ダンジョンというよりはその上。イモの部屋か!?
もしかして母だろうか? イモの部屋を掃除しようと入って来た……いや。母はすでに出社済み。そして何より暗黒の霧が感知する人間は2人。
「用心してくれ! 誰かは分からないが人間が2人。イモの部屋に入り込んでいる!」
イモの部屋にあるダンジョン入口。もしも発見されてはマズイことになる。
だが……何だ? イモの部屋に入り込む侵入者。小型の生物を3匹、一緒に連れているようだが……?
──────────────────
以前。LV28で暗黒の霧に猛毒効果を追加しましたが、話の都合上、まだ覚えられては困るということで、削除しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます