第65話 玉座に座る大柄なゴブリン。やつがゴブリン獣キング。

暗黒の霧の充満する地下3階。デバフによりまともに行動できないゴブリン獣を刈り取り俺たちは先へ進む。


初めて訪れる地下3階にも。迷路のように入り組む地下3階にも。俺が迷うことはない。暗黒の霧はソナー。すでに地下3階の構造は俺の脳裏に地図として浮かび上がっている。


そうしていよいよ地下3階。最後の大広間を前にして、別行動していたニャン太郎とニャン子も合流。全員でもって突入する。


広間中央の玉座に座る大柄なゴブリン。やつがゴブリン獣キング。


品川ダンジョン地下3階では見かけなかったが、キングが1人混じるだけで集団の戦闘力は1段跳ね上がるという。


キングの玉座の前には盾を構えるゴブリン獣ガードの姿。さらには広間に組まれた矢倉の頂上。陣取るアーチャーとメイジの集団から、広間に侵入する俺たちへ矢雨と魔法の炎が放たれる。


暗黒の霧のデバフの中、この部屋のゴブリン獣たちは動けるのか?!


見ればゴブリン獣キングの身体から、部屋全体に白いオーラが立ち昇っていた。


オーラ系スキルか。


溢れ出るオーラで周囲の仲間を強化するスキルで、代表的なスキルに仲間の防御力やデバフ耐性を強化する聖騎士の聖なるオーラがある。


ゴブリン獣キングのオーラも似たような能力を持っているのだろうが……


しかしまあ……無駄な努力である。


矢倉の上から放たれるゴブリン獣アーチャーの矢は狙いを外れ床に突き立ち、ゴブリン獣メイジが放つ火球も同様、あらぬ方角を狙い飛んで行く。


暗黒の霧はただデバフを与えるだけの魔法ではない。例えデバフを防いだとしても辺り一面を覆い隠す霧の中。遠距離にいる俺たちを正確に狙撃するのは困難な業となる。


反面。レーダー観測したイモの電撃は暗闇にあっても正確無比。


「はい。マルチロックでドーン」


イモの両手指を発した合計10本のチェインライトニングが矢倉の上。居並ぶゴブリン獣を貫通連鎖。貫き打ち倒していく。


その様は第二次世界大戦における帝国海軍と米国海軍。目視で戦う日本軍とレーダー観測で戦う米国軍といった一方的なその様相。


「キングゴブー!」


業を煮やしたゴブリン獣キングが玉座を立ち上がる。

華美な剣と盾を構え持つと配下のゴブリン獣ガードを引き連れ、辺りに雷を振りまくイモを目指してドスドス迫り来る。


となれば当然、イモを守るべくニャンちゃん軍団4匹が駆け出しゴブリン獣キングたちと衝突する。


「にゃん」「にゃー」「なー」「にゃーん」


EXスキルGダッシュを駆使してちょこまか足元をすり抜けるニャンちゃん達の動きにゴブリン獣キングが攪乱されるその隙に。


「暗黒パンチ! ふん!」


暗黒の霧の中。こっそり近づく俺の打撃がゴブリン獣キングを殴りつける。


ドカーン


EXスキル牛パワーをも加えた俺の全力打撃だが……


「ゴブッフッフ!」


なるほど。さすがはキングと言わざるをえないその防御力。まるで岩石を殴ったかのようにビクともしないその体躯だが……俺の暗黒パンチはただのパンチではない。


「ゴブリン獣キングよ。お前はもうデバフっている」


全身を立ち昇るオーラが暗黒の霧を弾くというのなら、俺の拳でもって直接デバフを流し込めば良いというわけで。


デバフ発動:ゴブリン獣キングは五感異常。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは全能力減少。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは毒。

デバフ失敗:ゴブリン獣キングは恐怖にレジスト。

デバフ発動:ゴブリン獣キングはMP減少。

デバフ発動:ゴブリン獣キングはMP蒸発。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは麻痺。

デバフ失敗:ゴブリン獣キングは睡眠にレジスト。

デバフ失敗:ゴブリン獣キングは混乱にレジスト。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは放心。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは封印。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは暗黒火傷。

デバフ発動:ゴブリン獣キングは属性耐性減少。


オーラを抜けた俺の拳がゴブリン獣キングの身体をデバフ塗れとしたその結果。


「……ゴブ?」「Zzz……」「ゴブーゴブー?!」


デバフ封印は相手のスキルを封印する状態異常。


これまでゴブリン獣キングのオーラで守護られていたゴブリン獣ガードたちであったが、オーラの封印された今、配下の全員が暗黒の霧の餌食となる地獄絵図。


「はい。ドーン」


止めとばかり矢倉のゴブリン獣を片付けたイモの連鎖電撃チェーンライトニング。ゴブリン獣ガードをまとめて貫通。打ち倒す。


いや。1体だけ。イモの電撃に耐えた者がいる。


ゴブリン獣キング。麻痺した身体を動かし盾でもって電撃を防いだか。キングというだけあってなかなかやるようだが……


「にゃん」「にゃー」「なー」「にゃーん」


ズンバラリン


無情にも4対1。ゴブリン獣キングは四肢を裂かれ消滅した。


「お? ゴブリン獣キングの持ってた剣と盾が残ってるよー?」


「イモが使うか?」


「やったー! それじゃこれだー!」


イモは嬉々として華美な剣を拾い上げていた。


いや。後衛の魔法使い。身を守るのに盾でも選ぶかと思ったのだが……なぜに剣を選ぶのか? だが、よく考えれば基本イモと2人の場合は俺がタンクを務めるわけだから、この方が良いか。


俺は残された華美な盾を拾い上げる。正面に派手なレリーフの刻まれた盾。イモの電撃にも耐えたことから、かなりの性能が予想される。


「凱旋だ。無敵要塞へ引き上げるぞ」


「おー! 凱旋だー!」


地下2階。意気揚々と草原広場に戻る俺たちが見たのは、無敵要塞の中で平和に交尾するハト2羽の姿であった。


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■暗黒魔導士改(SSR+)LV28(1↑UP)


・スキル:暗黒の霧+(五感異常、全能力減少、毒、腐食、MP減少、MP蒸発、恐怖、麻痺、睡眠、混乱、放心、封印、暗黒火傷、闇光火水風土耐性減少、呪い)


呪い(New)回復魔法や回復アイテムでHPが回復しなくなる。


・スキル:暗黒抵抗:暗黒強化:暗黒打撃:暗黒熟練

・EXスキル:プリンボディ:ゴムボディ:鋭利歯:偽装:牛パワー:超音波:熱赤外線感知

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