第63話 俺が点数を付けるなら10点満点中の100点が暗黒魔導士である。
自宅ダンジョン地下1階。
暗黒魔導士の持つスキル。暗黒熟練。モンスターゲートに触れた俺はゲートを操作できることが判明した。
─────────
現在、マスター不在のためセーフモードで起動中。
ローカル権限で操作可能です。
─操作を選んでください。
・自動転送の設定
・召喚転送の設定
・別暗黒門へ転送
─────────
自動転送、召喚転送を試した俺は最後に「別暗黒門へ転送」を選択する。
─────────
エラー:転送先に指定できる暗黒門が存在しません。
転送先に指定できるのは、登録済み暗黒門に限られます。
─────────
……どうもこの説明からすると暗黒門、モンスターゲートのことだが、登録済みのゲートからゲートへ転送するための操作に思える。
そして先ほどこのゲートに触れた時「暗黒門を登録しました」とメッセージが表示された。
つまりは暗黒熟練を満たした状態でゲートに触れることが、登録条件。
となれば今この場での検証は終了した。俺は自動転送モードをONに戻してゲートの前を離れる。
地下1階通路を進み目指すは別のモンスターゲート。今より別のゲートを登録、実際に転送が可能となるかどうかを試すためだが……
地下1階を移動する傍ら、洞窟内のあちこちに散らばる魔石が目に入る。
俺はダンジョンに居るその間、常に地下1階を暗黒の霧で満たしている。現れたモンスターは次々に死んでいき、稀に落ちるお肉はニャンちゃんが胃袋に回収するも、魔石はそのまま。
当初は俺が拾い集めていたものだが、今、地下1階に落ちる魔石は1000個を超えている。とても拾いきれないうえ、全部を売りに持ち込んでも騒ぎとなるだけとあって必要な分を拾った後は絶賛放置中である。
そんな地面に散らばる魔石のうち、黄金色に輝く魔石が1個混ざり落ちていた。
暗黒の霧で死んだ黄金モンスターが落としたのだろう。これまでにもいくつか回収しているが、売却に持ち込み騒ぎとなるのも困るため自宅に保管している。
「あっ!?」
拾おうとする俺の目の前で、黄金魔石はダンジョンの床に吸い込まれ消えて行った。
長時間、おそらく一昼夜は放置したのが原因か?
吸い込まれるのは黄金魔石だけではない。他の魔石もダンジョンの床に吸い込まれ消えていく。
普通は落ちた魔石はその場で回収するもの。仮に拾わなかった場合も、一昼夜も放置した魔石が消えてなくなろうが他人が拾ったと思うだけ。まさかダンジョンに吸収されたとは思わない。
ダンジョン発生から3年。まだまだ未知の発見があるというわけだが……
─────────
─暗黒門を登録しました。
─────────
地下1階。別のモンスターゲートに辿り着いた俺は、ゲートに手を触れ登録を完了する。
─────────
─暗黒門LV20 :黄金ダンジョン地下1階その2
─ローカル管理者 :(城)
─現在のステータス:自動転送モードで運転中
─対象数:ネズミ獣10
─転送完了まで:あと180秒
─────────
これで先ほどのモンスターゲートへ。黄金ダンジョン地下1階その1へ転送できるか試してみるべく操作する俺の目は、その途中、ダンジョン魔力の項目に釘付けとなっていた。
─────────
─ダンジョン魔力:735
─────────
先ほどのゲートで黄金スライム獣を召喚した後のダンジョン魔力は146。それがいつの間にか735と大幅に増えていた。
何故だ? いったい何が……
そんな俺の脳裏に思い浮かぶ光景が1つ。
先ほど見たダンジョンによる魔石の吸収。
魔石はその名のとおり魔力の塊。
拾わずにおいた魔石がダンジョンに吸収されたその時。ダンジョン魔力が増えるというわけか?
仮説ではあるが、おそらくは納得のいくその考察。
イモやニャンちゃんハトさんが魔石を拾わないでいてくれたことが、結果的にラッキーだったというわけだ。
さて。お次はいよいよ「別暗黒門へ転送」を選んでみる。
─────────
─転送先の暗黒門を選んでください。
・黄金ダンジョン地下1階その1
─────────
俺は転送先として「黄金ダンジョン地下1階その1」を選択する。
─────────
─別暗黒門へ転送を実行
黄金ダンジョン地下1階その1へ接続中。残り360秒。
─────────
漆黒の渦に光が走る。
これより360秒の間。モンスターゲートに入るなら先ほどの「地下1階その1」ゲート前に出るのだろう。
おそらくは大丈夫と俺の勘は告げているが……
暗黒の渦に触れて入った者は誰1人して戻らないというモンスターゲート。万が一があっては後悔することも出来ないというわけで……
俺は先ほど拾ったばかりの黄金魔石をゲートへ投げ入れる。
残り0秒。漆黒の渦に走る光はおさまり、いつも通りのモンスターゲートへ戻っていた。
そのまま徒歩で俺は先ほどのモンスターゲート。黄金ダンジョン地下1階その1へ移動してみれば。
先ほど投げ入れた黄金魔石が1個。モンスターゲート前の床に転がり落ちていた。
ひとまずゲート間の転送は成功というわけだ。
後の問題は生きた生物がゲートに入って大丈夫かという問題だが……
そもそもが何処だか分からない異世界から生きたモンスターが転送されて来ているのだから何の問題もない。
─────────
─別暗黒門へ転送を実行
黄金ダンジョン地下1階その2へ接続中。残り360秒。
─────────
再びゲート間転送を実行。
光の走るゲートへ俺はまっすぐ侵入する。
光を抜けた先。俺の身体はモンスターゲートその2の前にあった。
これで生身の転送にも成功したわけだが……
暗黒魔導士。あらためて、とんでもないジョブであると痛感する。
まだ自宅ダンジョン地下1階同士での転送のため大した意味はないが、この先、地下2階。地下3階と転送先が広がるなら、ダンジョン探索において大きなアドバンテージとなる。
さらには、もしも他のダンジョン。品川ダンジョンへの転送も可能であるとするなら……ゴクリ。
暗黒の風が渦巻くモンスターゲート。その渦に吸い込まれ、生きて戻った者は誰も存在しないという。今も世界中の探索者がその謎を解明しようと最先端の科学機器で検査しているというが……
その実態は「暗黒熟練」スキルを持つジョブが触れることが起動条件。
21世紀の現代。まさか人体実験をするわけにもいかないのだから、俺のように偶然条件を満たした者が触れるアクシデントでもなければ、いくら最先端の科学機器だろうが分かるはずもない。
そして100パーセント攻略読本によれば、暗黒戦士や暗黒魔導士といった暗黒を冠するジョブがLV20となって習得するスキルが暗黒熟練。
暗黒を冠するジョブは全てSSRと希少であることに加えて、LV20を超える探索者もまた希少。二重に希少である者がピンポイントで触れなければ判明しないというのだから、これまで誰も気づかなかったのも当然というわけだが……
暗黒魔導士に9.5点を付けた100パーセント攻略読本は大間違い。俺が点数を付けるなら10点満点中の100点が暗黒魔導士である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます