第62話 部屋中央に浮かぶのは、漆黒の風が渦巻く闇の竜巻。
「ただいま」
自宅に帰り着いた時刻は夜の19時。
よっぽどダンジョンが好きなのか、自宅にイモの姿はない。
仕方がない。イモを探して俺は自宅ダンジョン地下2階へ向かう。
草原広場にそびえ立つ無敵要塞。テントの中、イモムシマットレスに転がりニャンちゃんを撫でるイモの姿を見つけた。
「んにゃ? おにいちゃん?」
「イモ。もう夜だし自宅へ帰るぞ」
「あれ? もうそんな時間なんだー」
イモが勘違いするのも無理はない。
ダンジョン内、草原広場の天井は魔力を帯びて光る魔力ゴケにより昼間と見まごう明るさ。24時間無駄に光り輝いている。
つまりはダンジョンには夜がないわけで。
「言われてみればこれは大問題だな……」
ニャンちゃんハトさんが草原広場で寝泊りするにも24時間、常に真昼の明るさが続くのでは眠りづらく、体内時計も不調をきたすだろう。
「ニャンちゃんハトさんが大変だよ。おにいちゃん!」
ところがまあ、これは俺なら簡単に解消できる。
「発動。暗黒の霧マックスパワー。あまねく満天に闇の帳を敷きつめたまえ」
草原広場の天井を暗黒の霧で覆い隠したその結果、辺り一面、夜の帳が落ちたかのような闇の領域に早変わりしていた。
「おー。やっぱりおにいちゃんだー! ばんざーい!」
やれやれ……後は朝になれば霧を消せば良いわけだ。
その後、自宅に戻り母をまじえて夕ご飯を食べたその後。
「今日もおにいちゃんとお泊りだー」
うーむ。いい加減イモには自宅で眠って欲しいものだが……イモは柔らかい。まあ良しとしておくか。
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■暗黒魔導士改(SSR+)LV27(1↑UP)
・スキル:暗黒の霧+(五感異常、全能力減少、毒、腐食、MP減少、MP蒸発、恐怖、麻痺、睡眠、混乱、放心、封印、暗黒火傷、闇耐性減少、光耐性減少、火耐性減少、水耐性減少、風耐性減少、土耐性減少)
土耐性減少(New)土属性の攻撃に弱くなる
・スキル:暗黒抵抗:暗黒強化:暗黒打撃:暗黒熟練
・EXスキル:プリンボディ:ゴムボディ:鋭利歯:偽装:牛パワー:超音波:赤外線感知
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・
・
・
5/3(金)祝日
本日は自宅ダンジョン探索の日。
「そういえば、おにいちゃんのダンジョンランキング。どうなったの?」
「今は1932万4783位だな」
「むー。ダンジョンを買うにはランキングが大事なのにー」
品川ダンジョン受付の人が言うには、1000万位以内に入れるかどうかが職業探索者としての境目だと言っていた。
「だから、そろそろ自宅の地下3階へ行ってもいいんじゃないかな? LVも上げないとだもんね-」
地下2階も楽勝となった今、行くのに異論はない。だが、その前に。
「イモは先に無敵要塞へ行っていてくれ。お兄ちゃんはちょっと寄り道をしてから行く」
イモを先に行かせた俺は自宅ダンジョン地下1階。
モンスターゲートの前に立っていた。
目の前にに浮かぶのは、漆黒の風が渦巻く闇の竜巻。モンスターゲート。
モンスターが無限にあふれ続けることから異界に通じるワープゲートであるとして研究が進められているが、ゲートに触れた者は漆黒の渦に吸い込まれ二度と帰って来ないとあって、触れることも出来ず研究は進んでいない。
その暗黒の渦に俺は手を触れる。
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─暗黒門LV20 :黄金ダンジョン地下1階その1
─現在のステータス:自動転送モードで運転中
─対象数:スライム獣10
─転送完了まで:あと180秒
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100パーセント攻略読本にもインターネットにも記載のないこの情報。
理由は不明だが、暗黒魔導士がLV20となり習得したスキル暗黒熟練。暗黒の霧の性能を向上させるだけではない。モンスターゲートにアクセスする能力も併せ持つようだ。
これまで俺が触れたモンスターゲートは。
品川ダンジョン地下3階が、暗黒門LV40。
自宅ダンジョン地下2階が、暗黒門LV30。
必然的に自宅ダンジョン地下1階の暗黒門はLV20となるわけで、現在の俺のLVは27。
これまではエラー表示され弾かれるだけで終わっていたものが……
─────────
─暗黒門を登録しました。
─────────
このように登録成功となるわけだ。
─────────
現在、マスター不在のためセーフモードで起動中。
ローカル権限で操作可能です。
─操作を選んでください。
・自動転送の設定
・召喚転送の設定
・別暗黒門へ転送
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どうやら操作できるのは3ヵ所。
試しに「自動転送の設定」を選んでみる。
─────────
─現在のステータス:自動転送モードで運転中
・自動転送のON/OFF切り替え
・自動転送モンスターの設定
─────────
自動転送をOFFにするなら。
─────────
─暗黒門LV20 :黄金ダンジョン地下1階その1
─現在のステータス:停止中
─ローカル管理者 :(城)
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モンスターゲートの活動が停止。ゲートから現れるはずであったスライム獣10匹の転送がキャンセルされていた。
続いて「自動転送モンスターの設定」を選択する。
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─暗黒門LV20:黄金ダンジョン地下1階その1
・スライム獣:40%
・ネズミー獣:30%
・コウモリ獣:15%
・イモムシ獣:10%
・ゴキブリ獣:4.7%
・黄金スライム獣:0.3%(MAX)
転送率を変更するモンスターを選んでください。
─────────
自動転送されるモンスターそれぞれの転送率を設定できるようだ。
つまりはこの一覧にあるモンスターが自宅ダンジョン地下1階に出現するモンスターとなるわけだが……
特筆するべきは一覧の最後にある黄金スライム獣。これこそが自宅ダンジョンが黄金ダンジョンたるその所以。転送確率は0.3%と極低確率としても、0%と0.3%とではまるで大違い。
品川ダンジョンで黄金モンスターの存在を聞かないのは、一覧に名前がないのが原因だろう。確率が0%であれば何をどうしたところで黄金モンスターは出現しないのだから。
続いて俺は「召喚転送の設定」を選択する。
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─召喚する対象を選んでください
(現在のダンジョン魔力:1146)
・スライム獣:10
・ネズミー獣:20
・コウモリ獣:30
・イモムシ獣:40
・ゴキブリ獣:50
・黄金スライム獣:1000
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これは……召喚ということは、一覧にあるモンスターを。黄金スライム獣を選んで呼び寄せることが出来るということか?
だとするなら凄まじいメリット。いくら自宅ダンジョンに黄金モンスターの出やすい特徴があるとはいえ、その確率は0.3%。滅多に出て来るものではない。
それを狙って召喚できるとなれば……ゴクリ。LVアップし放題。黄金肉も集め放題となるわけだが……
問題は現在のダンジョン魔力とモンスター毎に記された数値。召喚するには、このダンジョン魔力というのが必要になるのだろうが……
どうすれば集まるのだ? このダンジョン魔力というのは?
現在のダンジョン魔力は1146と結構な量が溜まっていることから、俺は意図せず何らかの手段で集めることに成功しているわけだが……
まあ。良い。まずは検証可能な方を先に済ませて行くとしよう。
俺は召喚モンスターの一覧から黄金スライム獣を選択する。
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─暗黒門LV20 :黄金ダンジョン地下1階その1
─現在のステータス:召喚転送モードで召喚中
─対象数:黄金スライム獣1
─転送完了まで:あと60秒
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きっかり60秒後。目の前のモンスターゲートから黄金スライム獣が1匹。ぽよんと飛び出した。
現れるなり即座に俺を押しつぶそうと襲い掛かる黄金スライム獣。
もしかしたら味方となるモンスターを召喚できる可能性も考えたが、残念ながら普通に敵対的。デバフの後でザックリ包丁で始末する。
後に残るのは黄金スライム肉と黄金魔石。そして現在のダンジョン魔力は1146から146へ。黄金スライム獣を召喚した分の1000が減少していた。
ダンジョン魔力さえ用意できるなら、黄金モンスターは狩り放題のLVを上げ放題。ドロップ率10%とはいえ黄金肉も集め放題となるわけだ。
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