第54話 購入したニャンちゃんグッズ一式を草原広場に広げる。
地下1階で走り回る新人ニャンちゃんを拾い上げ、地下2階。草原広場へ俺たちはやって来た。
先に地下2階へ降りていたイモやニャンちゃんたちが退治したのだろう。草原広場にモンスターの姿はない。
ハトさん2羽についてもエサを撒き撒き、何とかここまでの誘導に成功している。
「それで、おにいちゃんどうするのー?」
モンスターの沸き出す草原広場で寝泊りする方法。
それは、大勢で草原広場を占拠、要塞化すること。
戦力増加については新たに野良猫1匹。ハトを2羽追加することで条件を満たしている。残る要塞化についてだが……
「そのためのグッズがこれだ」
俺はペット用品ショップで購入したニャンちゃんグッズ一式を草原広場に広げる。
ダンボール製の大型組み立てニャンちゃんハウス。
こいつを組み立て草原広場に設置するなら、モンスターを迎撃。寝泊りするための拠点となるだろう。ニャンちゃんたちも安全に暮らせるようになるというわけで。
「やったー! イモが。イモが組み立てるよー」
そうは言ってもイモだけでは不安がある。当然に俺も手伝うわけでイモと2人、あーでもないこーでもないとダンボールをいじり倒した結果、ニャンちゃんハウスは完成する。
「ばんざーい! できたー!」
草原にでんとそびえ立つニャンちゃんハウスは2階建て。最後にイモが描いたニャンちゃんイラストも可愛く、ダンボール製とはいえなかなかに立派である。
「イモ。ニャン太郎たちを呼んで来るねー」
モンスター狩りのためこの場にいないニャンちゃん3匹を探しにイモが出かけるその間、俺は近くで寝転ぶ新人ニャンちゃんをハウス1階へ放り込む。気に入ってくれると良いのだが……
「クルッポー」「クゥックゥッ」
「お?」
俺が新人ニャンちゃんを捕まえ運ぶその間、2羽でいちゃいちゃしていたハトさんが、ニャンちゃんハウスの2階に入り込んでいた。
ハトは高所、なおかつ壁に囲まれた場所を好むというが、どうやらニャンちゃんハウスの2階。ハトさんの好みにフィットしたようだ。
となれば、このまま2階部分をハトさん用スペースにするべく、俺は手持ちのハト用エサを2階部分ににバラ撒いた。
ハトは一度寝床と定めた場所に執着、簡単には移動せず外敵とも戦うという。つまりは、もしもニャンちゃんハウスを襲うモンスターが現れたならハトさん2匹も率先して戦ってくれるというわけで、何とかこのまま交尾と巣作りまで行って欲しいものである。
「戻ったよー」「にゃん」「にゃー」「なー」
早く交尾しないものかとハトさんを見守るうち、イモたちが帰って来た。
「って、あー! イモのニャンちゃんハウスにハトさんがー?!」
「まあまあ。良いではないか。1階はニャンちゃん用に空いているのだ。良いではないか」
「うーん……まあいっかー。ニャン太郎どう? 狭いならもう一軒ハウスを買って来るよー?」
先にハウス1階へ入る新人ニャンちゃんの元へニャン太郎が入り込む。
「にゃん」
満足したのか後の2匹も呼び入れ、新人ニャンちゃん含めた4匹で互いの身体を舐め舐め毛づくろいを始めていた。
「やったー。みんな大喜びだぞー」
後はこのニャンちゃんハウスで夜を過ごし、実際の具合を確かめるだけ。
「そろそろ母さんも帰って来る時間だろう。イモはもう帰ったほうが良い」
「あれ? おにいちゃんは?」
「俺は今晩はここで泊まる」
ニャンちゃんハウスを守るだけの人員は用意したが、そのうちの1匹と2羽は今日ギフトを獲得したばかりの新人。しばらくは俺が一緒に寝泊りするのが無難というもの。
幸いにして今はゴールデンウイーク。多少が夜更かしをしよとも学業に影響はない。
「えー! じゃあイモも泊まるー」
「駄目だ。無断外泊は禁止である」
「おにいちゃんも無断外泊だよー」
そこは男女の違い年齢の違いというもの。女子中学生の無断外泊は認められなくとも、男子高校生ならOKとなるのが世の道理。
「ぶーぶー」
「2人とも部屋にいないなら母さんが怪しむだろう? もしも母さんが部屋に来た時はイモにごまかしてもらわねばならない。イモ、頼む」
「ぶー。分かったもん。明日は朝ごはんもってくる」
俺の説得にイモはしぶしぶ部屋へ戻って行った。
残る俺はニャンちゃんハウスで夜を明かすための準備をするとしよう。
「発動。暗黒の霧。ニャンちゃんハウスを暗闇で覆い隠したまえ」
俺は暗黒の霧を操り、ニャンちゃんハウスの周辺すっぽり覆うドーム状に霧を形成する。
そうして草原広場の一角に生み出されたのは、暗黒の霧の結界。暗黒結界。触れると毒をはじめとした各種デバフに犯されるのだから、わざわざ近づくモンスターもいないだろう。
仮にモンスターがニャンちゃんハウスに近づこうとも、俺は暗黒の霧に触れた存在をソナーのように感知できるのだから、見張りに立つ必要もない。
というわけで寝るとするか。
残念ながら俺の身体ではニャンちゃんハウスに入れない。俺はハウス前の草原に転がり眠りについた。
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とある高層ビルの最上階。その一室。
「ただいま戻ったね」
スリットも眩しい華美な服に身を包んだ少女が室内に入り、ひざまずく。
「ふむ。それで
深々とソファーに座る男が少女を促した。
「1週間で8万4333ポイントの稼ぎの理由が分かったね。あれはパーティメンバーにSSRが居たからね」
「ということは何か? 城弾正はただのR。SSRのパーティメンバーのおこぼれで稼いでいただけと?」
「そうね。あれは顔が良いだけのカスね。他人に寄生するホストみたいなものね。クラスメイトの男子がそう言っていたね」
「ふーむ。……そうか、ホストか。オリ国大使の娘が一緒だったのはそれが理由か」
何を考え込むのか。男はテーブルのグラスを手に取り回し始めていた。
「城の同級生。SSRの男はどうするね?」
「ふむ。SSRなど今さら本国では珍しくもないが……」
「でも聖騎士ね」
「ほう! それはそれは……」
回すグラスを止め。男は顔を上げる。
「言うまでもないが同じSSRにも格があり、聖騎士の格は高い。いつもの手筈で引き抜きを進めてくれ」
「分かったね」
「お前が一肌脱ぐだけで片はつくだろうが、女体で駄目なら金銭。それでも駄目なら……」
「大丈夫ね。日本人はスケベばかり。楽勝ね」
それはエ連の大使も実感することで、美人局を用意するだけで政治家やマスコミといったエリート階層の大半は篭絡済み。
政府与党こそまだ落とせていないが、次の懇親会には下着ダンサーを手配してある。過激なダンスショーを披露するなら落ちるのも時間の問題だろう。
「わが国は美人局の手駒は豊富だが、ホストは盲点だったな。本国へ連絡し手配を進めるとしよう」
エンパイア連邦共和国と国境を隣接する島国がオリジンアイランド。
素直に併合されておけば良いものを、何を考えてか併合を拒絶。日本とダンジョン協定を結ぶなど目障りなその動きを主導したのが、オリジンアイランドの大使ケント・マグワイア。
元アメフト選手の知名度をもつこともあって厄介な存在だが、これまで女体にも金銭にも靡かず懐柔できないでいた。
だからといって暴力行為で排除することもできない。何せ奴の娘、華はURジョブを持つのだから。
「ふん。だが、いくらURジョブを持とうとも、所詮は年頃の娘だったというわけだ」
そうであるなら本国のエリートホストを用意する。
エリートの前には城などという
後は華を足掛かりに大使ケント・マグワイアを落とすだけ。オリ国がエ連に併合されるのも目前というわけであった。
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