第27話 うますぎるうううう!
「ニャン太郎バイバーイ。また明日ねー」
イモ虫肉を口に咥え、ニャン太郎は自然へ帰って行った。
しかし……肉がまだまだいっぱいあるな。
モンスターからお肉がドロップするのは1割程度とはいえ、ゲートから途切れることなく湧き続けるモンスターたち。畜産農家の未来が心配である。俺が心配しても仕方はないが。
「よし。イモ。今日は俺が晩御飯を作るぞ」
「ほんと? やったー」
男女平等の昨今。イモに家事を任せきりはよろしくない。料理の出来る男はモテるとも聞くことだからして……
「今晩はセルフ焼肉です」
「やったー」
ネズミ肉の謎ラップをはがした後、包丁で切ってお皿にドンと並べる。後はホットプレートで勝手に焼いて勝手に食べてほしい。
「おいしー。おにいちゃんは料理の天才だー」
やれやれ……俺はただ肉を切って並べただけだというのに。
「あ、おにいちゃんそれ食べごろだよ。イモが取ってあげるー」
パクパク
うむ。この絶妙の焼き加減。俺は料理も天才だったようだ。
「ただいまー。あれ? この匂いは焼肉かな?」
「おかあさんおかえりー。おにいちゃんが料理作ったんだよー」
「本当? 凄ーい。って弾正は生のお肉を並べただけ。実際に焼いて料理してるのイモちゃんだよね?」
ぐむむ……言われてみればそうかもしれない。
「分かった。それなら母さんも帰って来たことだし、いよいよとっておきのお肉の出番といこう」
ドーン。俺は黄金イモ虫肉を取り出すと3等分。ジュワリ、ホットプレートに乗せて焼き入れを開始する。
「弾正これ何の肉? 牛でも豚でもないから……鳥肉かしら?」
仕事着から着替えて食卓に着く母が疑問に問いかけるが。
「イモ虫肉だ」
「え? 母さん年かしら……よく聞こえなかったけど、もう1度お願い」
表面こんがり。肉の中心にほんのり火が入ったタイミング。俺は手早くホットプレートから黄金イモ虫肉を取り出し皿へ移すと黄金タレを一滴。上から垂らして完成する。
「これが本日のスペシャリテ。黄金イモ虫肉のサッと焼き。黄金タレ風仕上げだ」
「うわー。おいしそー。いただきまーす」
パクパク勢いよく食べるイモのその様子。母は驚いたように見た後、手元のイモ虫肉を本当に大丈夫かしら? といった面持ちで眺めるが……
母のその気持ち。分からないでもない。何せイモ虫肉は昆虫食。つまりはコオロギ食と似たようなもので、いくら栄養価があると言われたところで、ただ食事は栄養のためだけではない。味も含めて楽しむものであるのだから牛肉とコオロギ肉。どちらか選べというなら100人中99人が牛肉を選ぶだろう。
だが、それは通常の昆虫食の場合。
「母さん。心配はいらないよ。何せイモ虫はイモ虫でも普通のイモ虫ではない。黄金イモ虫獣の肉だから」
その味は黄金スライム肉と黄金ネズミ肉で証明済み。であれば。
パクリ
俺もまたイモに続いて目の前の黄金イモ虫肉のサッと焼き。黄金タレ風仕上げを口いっぱいに頬張った。
「うますぎるうううう!」
「おいしー!」
俺とイモのその様子。母もつられて口に含めば。
「あらまあ。本当、おいしいわー!」
絹のような口触りにクリームのように濃密な肉。元がイモ虫であるとは信じられないうまさであった。
【EXスキル習得:ゴムボディ:ゴムのように弾力を得る】
3度訪れるEXスキルの習得。今度はゴムのように弾力を得る。か。
もしかすると殴られるなどの打撃に耐性を得たのだろうか? だとするなら後衛ジョブである俺とイモにとってありがたいスキルである。
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掲示板 【ダンジョン】探索者初心者スレpart222
415:名無しの探索者さん
地下2階からはやっぱりパーティが主流でしょうか?
ソロだと危ないですかね?
416:名無しの探索者さん
2階ならまだソロでいける
といってもジョブ次第かな
417:名無しの探索者さん
地下2階はタフな敵が多いよね
ジョブが戦士とかならLV5あれば行けるよ
418:名無しの探索者さん
ジョブが市民はどうすれば……
419:名無しの探索者さん
>>418
LV10は欲しいかなあ……
420:名無しの探索者さん
無理ぽ……
421:4日でLV19の天才探索者
市民とかwwダンジョンやめちまえw
混雑して邪魔なだけやw
422:名無しの探索者さん
まあ広義でいえばみんなおんなじ市民なんだし
そんな落ち込まないで頑張ろう
423:名無しの探索者さん
荒らしには構わないように
最近変なのが住み着いてるから
424:名無しの探索者さん
>>421
またLV上がったんすか?
寄生して食べるご飯は美味しいっすか?
425:名無しの探索者さん
地下2階のモンスターは動きは単純だから
時間かけて落ち着いて戦えば勝てるはず
426:4日でLV19の天才探索者
アホかw俺は寄生されてる側やw
今日はLV1から育成したったわ
427:名無しの探索者さん
>>426
俺も寄生させてもらっていいっすか?
428:名無しの探索者さん
みなさんありがとうございます
近いうちに地下2階へ行ってみます
429:4日でLV19の天才探索者
>>427
甘えんなw氏ねw
429:名無しの探索者さん
無理せず安全第一でね
ハイエナには気を付けて
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学校。今日は4月最後の金曜日。授業を終えたその放課後。
「やったぜ。明日から10連休やー」
「お前らダンジョン資格は取れた?」
「楽勝やで」
「ワイもや」
「よーし。んじゃ連休は一緒にダンジョン行くべ?」
「おうよ」
「楽しみやで」
クラスメイトの会話を聞きながらも、俺は品川ダンジョンへ行くべく教室を後にする。
どうやら明日からの10連休を利用してダンジョンに行くようだが……
ダンジョン探索資格が満16歳に引き下げられて最初のゴールデンウイーク。クラスで話題になっているくらいなのだから、連休中はダンジョンの賑わいが予想される。
俺が品川ダンジョンへ行くのは魔石換金のため。多少が混雑したところで問題はないわけだが、ダンジョンに潜る間、まったくモンスターと戦わないのも時間の無駄である。
となれば、地下2階へ降りてみるのも面白いかもしれない。
連休中にダンジョンを訪れるのは普段あまりダンジョンを訪れない初心者たち。主に賑わうのは初心者向けの地下1階だろうから、地下2階なら普段とそう混雑は変わらないはずである。
品川ダンジョンに到着した俺は地下へ降りるエレベータに乗ると地下2階で降りる。その後、案内板に従い移動した地下2階の狩場。
部屋にはモンスターゲートが1つ。室内には30人の探索者がいた。
モンスターが強くなるほど落とす魔石の価値は高くなる。かといってモンスターが強すぎては生命の危険がある。
ソロで戦う場合。ちょうどそのバランスが良いとされるのが地下2階。
現れるのはイノシシ獣やウシ獣といったいずれも並外れたパワーを有するモンスター。だが、あるのはパワーだけ。冷静に戦うならそれほど危険はないということで、ソロで活動する探索者の姿も多く見える。
100パーセント攻略読本によれば、地下2階の推奨LVは5以上。俺のLVは16なのだから挑むに十分。
モンスターゲートに光が走り室内にモンスターがあらわれる。
「ウモー!」
ウシ獣が6頭。ゲートを飛び出すと同時に勢いよく室内を走り回る。
まずは様子見。俺は壁際に下がり、他の探索者の戦いを観察する。
「ウモー!」
ガイーン
盾を持った大男が正面からウシ獣を受け止めると、返す刀でウシ獣に武器を叩きつける。
「ウモー!」
ヒラリ
細剣を持った優男は正面から突進するウシ獣をヒラリかわすと、すれ違いざまに細剣を突き刺した。
注意するべきはモンスターのパワーと耐久力だが、その動きは単調で直線的。なるほど確かにこれならソロでも何とでもなりそうだ。
■ウシ獣(危険度D)
デカイ牛のモンスター。
パワーを生かした突進を受けては半端な探索者ではひとたまりもない。回避を優先。安全に戦うように。
分厚く固い皮膚に大きな身体。並外れた耐久力を持つ上に、自身の防御力を上げるバフ魔法も使うため、良い武器を準備するか、魔法が使えるなら魔法での攻撃が最も有効である。
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