第8話 付与術師、新たなる依頼を受ける

 ディドリー武具店を離れた俺たちは一目散へと不死鳥亭へと戻って来た。

 俺達がギルドの中へと入るといつものマリンが俺達を見つけて近づいてくる。


「あ、ミリアとウィリオさん! 先ほどのクエスト何ですが無事達成できていましたよ!! それについての報酬を今渡そうと思っていました!」


 そう言うマリンの手に布袋が握られていた。ミリアがそれを受け取って中身を確認すると首を捻った。


「おかしいわね? ゴブリンの討伐なのに結構報酬が多い気がするんだけど?」


「ああ、実はガミジンのダンジョン調査団に今回の件を説明しましたら、不手際があったと言う事で謝罪金も込みになっております! 今回の件、ギルドを代表して私からも謝らせてください! それと調査団含め私達共々、ウィリオ様達には本当に感謝しております!! まさか、ウィリオ様がこんなにも実力のある人だとは!! ウィリオ様達が居なければ大変な事態になっていたことでしょう。本当にありがとうございます!!」


 マリンが深々と頭を下げると、それをみたミリアは慌てた様子でマリンの頭を上げさせた。


「そんな〜別に良いわよぉ〜まぁ不手際なら今後気を付ければ良いだけだし、何より私たちで良かったよね? ウィリオ?」


 謝礼のお金とウィリオが褒められて調子付いたミリアが尻尾を振りながら鼻を高くする。何ともまぁ現金な奴だ。


「ああ、他の人たちが危険な目に合わなくて良かった」


「ああ、何て良い人たちなんでしょうか!! 今回の件を持ってダンジョン調査団も厳重警戒で今後も見てくれるようになると思いますので!」


「そうなると良いな」


 ああ、本当にそうなると良いな。

 俺達だったからまだよかったかもしれない。現に今を生きているからな。

 もしこれが他の冒険者で命を落としていたかと思うと、調査団としてもギルドにしても大事になっていたに違いない。


 それはそうとして、本音を言うと俺は家を出てからあまりお金がなかったから、剣の代金も含めてお金を稼げたのは本当に良かったと思う。

 さて、今日はこれをミリアと折半しよう。


 そう思っていた時だった。ギルドの受付で何やら口論が聞こえてくる。


「ですから、E級ランク昇格の試験は1人で行うことが出来ないんです」


「で……でも」


 受付で話している少女は頭からフードを被り、自身の身体よりも長いロングソードを持っていた子だった。

 そう言えば、さっきディドリー武具店で見かけたような気がする子だ。


「あれ? ウィリオ、あれさっきの子じゃない?」


「ああ、そうだな」


「何か困り事かしら? 行ってみましょ」


 そう言って俺はミリアと一緒に受付に向かった。何か困っていることがあるのだろうか。


「あの、すみません! 混み合っているみたいなんですけど何かあったんですか?」


「ミリアさん、実はこの子がE級ランク昇格の試験をしたいと話してたんですが、E級試験は最低でも2人以上のパーティを作ってからで無いと挑戦出来ない仕組みとなって居るんです。でも、1人で参加させて欲しいって聞かなくて」


 フードを被った少女は俯いた様子だった。


「なら、もう良いです……」


 そう呟くと少女は肩を落としてギルドを出て行こうとしていた。

 凄く気を落としてしまっている。そう言えば、E級ランク昇格試験を行う資格とは一体何なのだろう。


「受付嬢さん、E級ランク昇格試験って僕でも受けられますか?」


「え? ウィリオ様でしたらF級クエストの達成及び自身のランク以上の魔物の討伐経験があるので行おうと思えば試験は可能になっております」


「……そうよそれだわ!!」


 ミリア何かを思いついたようにその場から離れ、少女を追い始めた。

 多分だけど俺が思いついたことはミリアと同じだ。


「ちょっと! ちょっと待って!!」


 ミリアは外に出て、帰ろうとする少女を呼び止めた。


「な、なんでしょうか?」


「実は私の仲間が昇格試験に挑もうと思ってるんだけど仲間が足りなくて困ってるのよ。そこで貴方も良かったら一緒に昇格試験受けない!?」


「え……でも、良いんですか?」


「勿論よ! 私はE級の冒険者だから、みんなにアドバイスもできるし、すぐに合格できると思うわよ」


 少女は少し考えてから答えた。


「分かりました。私の様な者も一緒で良ければお願いします」


 少女はミリアに対して深々とお辞儀をして見せた。


 俺は少し待っていると、ミリアが少女を連れてギルドへと戻って来た。

 どうやら、ミリアの勧誘が上手くいったようだ。


「おかえりミリア」


「ウィリオ、早速だけどこの子と一緒にE級昇格試験を受けてもらうから」


「ああ、俺も受けたいと思っていたところだからな。俺はウィリオ、よろしくな。えっと……」


「わ、私はベリルって言います。 今回は、その、よろしくお願いします」


 ベリルは俺に深々と頭を下げた。

 一時的ではあるが新しい旅の仲間としてベリルと言う少女が加わった。さて、次のクエストは変なハプニングなど起きなきゃ良いのだが……




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