第6話 付与術師、武具屋へ行く

 ミリアに腕を引っ張られながら俺達が向かったのは、ミリア行きつけらしい武具屋へと向かった。都市ガミジンの中でも余り日が当たらない、こじんまりとした街中にその武具屋はあった。

 看板には『ディドリー武具店』と書かれている。


「ここが行きつけの武具屋さんよ。街にある武具屋も良いけど、ここの鍛治師さん、腕が良いのよ!」


「なぁミリア、まだ俺は剣を使うって決めたわけじゃ」


「でも、あんな才能見せられた私、放っておけないわよ!! ウィリオに魔法とは別の才能が見つかるかもしれない絶好のチャンスなんだから!」


 ミリアの圧にやられて、俺はミリアと共に店の中へと入った。店の中へ入ると店の壁には新品の武器や防具が並べられており、棚にはナイフ、壺には安物の剣や矢が立てかけられて居た。

 店の中には赤いフードを被った少女が居た。少女の背中には自信の長さと同じくらいかまたはそれ以上の大きさをしたロングソードを背負っている。


「あれ? 珍しい、貴方もこの店の常連さんかしら?」


「……」


 ミリアが少女へと話しかけると、少女は俺達を見ると目も合わせずに早々と店から出て行ってしまった。

 思ったより、恥ずかしがり屋だったのかも?


「一体どうしたのかしら? ……まぁ良いわ! そんなことより、ディドリーさーーん! 私が来たよぉーー!!」


 ミリアが大きな声で店の奥へと声をかけると、奥から大きな人影が見えた。


「お、来たなぁお転婆少女」


 やって来たのは黄色い作業服に厚手の手袋を付けた赤い髪の女性だった。


「紹介するね、こちらディドリーさん! このお店で鍛冶師をしてるの!」


「ど、どうもウィリオと言います」


 俺はディドリーへ一礼する。


「新入りかい、あたしゃここの武具店の鍛冶師をしてるディドリーって言うんだ。今後ともごひいきに」


 ディドリーは頭のバンダナを外して笑顔で話してくれた。

 ディドリーはバンダナで額の汗を拭い、手袋を外して店のカウンター席に腰かける。


「で、今日は店に何のようだいお転婆少女」


「お転婆少女じゃなくてミリアですぅ! 今日はウィリオに良い剣を見つけてあげたくて来ました」


「そう言う事ね。 君、職業は戦士? 剣士?」


「俺は付与術士です」


「はいはい、付与術士ね……え?」


 ディドリーは思わず、呆けた表情になった。

 そりゃそうだ。何しろ、付与術士が剣を見計らいに来たなど驚いて当然だ。

 ディドリーは頭を抱えて溜息をつく。


「あのなぁミリア。お前がよっぽど元気なのはわかる。しかし、ここまで呆けたことを言われると私もついて行けないわ」


 完全に呆れられている。

 しかし、ミリアも尻尾を振ってむきになりつつも反論を返す。


「ふざけてないってば! ウィリオは凄いのよ! 初めてのクエストでオーバーランクのモンスターを私の剣で倒しちゃったんだから。それで、わた、私を助けてくれたんだから!!」


 顔を赤くしてディドリーへ伝えると、ディドリーは立ち上がり、俺の方へと向かってきた。

 そしてじろじろと俺の身体を見回し始める。


「ミリア、オーバーランクのモンスターって何?」


「ゴブリンウォリアーとゴブリンキングよ」


「うーーん、剣術を習ってきたと言えるほどの体格でもないな。それで、ミリア専用に打ったショートソードを使ってその2種を倒したなんてにわかには信じがたい……」


「じゃあ、どうすれば信じてくれるの?」


「そうだなーー」


 ディドリーはにやにやとした表情で俺から離れると商品の剣を一本取り出して俺へと渡す。


「その剣は私の打ちたてほやほやのロングソードだ。それで君に試し切りをして欲しい」


「僕がですか」


「君が本当に才能だけで剣を振るえるのか見てみたいからね」


 俺は剣を握る。あの鞘に収まった剣を握ってもあの時の集中力は生まれない。

 ミリアの方を見るとそれはそれは期待の眼差しを向けてしまっている。


 やるしかないか……


「分かりました。やりますよ」


「じゃあ、裏口から出よう。裏庭に訓練用の木偶坊がある。それで試し切りしてもらおうかな」


 ディドリーは親指で後方を指した。こうして俺は剣を持ってディドリーの後をついて裏庭へと向かった。


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