第12話 危機と可能性

「エイリアン憑きというよりそのものじゃな」

爺さんの口から正体を明かされた御影たち。

「なるほど。今は同胞が憑いてるんじゃなくて『完全継承体』ってわけね」

御影の肩から姿を現したアモンが聞き慣れない言葉を使って納得していた。


「そうじゃ。元はこの体は飯匙倩太秦(はぶ うずまさ)という男のものだったのだ。100年以上前に死によったがな。太秦はワシの力を十分に使いこなしていた。だが、ワシと同時期にこの星にきていた同胞には及ばんかった。その同胞の名はザクモという。同胞の中でも最悪の奴じゃ。圧倒的邪悪であり圧倒的強者じゃ」

ヤマト爺さんがザクモという名を発した瞬間に沙夜、壮介の肩から各々のエイリアン達が顔を出した。

先に顔を出していたアモン、そしてマダラ、ギラとも驚き戦いていた。

「爺さん、何で今あいつの名前を出したんだ?まさか…あいつは今もこの星に?」

アモンがいつもの明るさを感じぬ神妙な面持ちでヤマトに聞いた。

「いるはずじゃ。息を潜めているがな。奴の仕業と感じたことが何度かある。こないだ上海で起きたマフィアの壊滅なんぞはそうじゃな。あの組織は全員が憑いておる人間だったからの。普通の人間ではああはできん。奴が楽しめる次元の強者を求めて国を渡ったんだろうな」

上海。もう日本以外にもエイリアンは広がりつつあることがヤマトの話からわかった。

「ワシがお前達に会いにきたのはお前達全員がそのザクモをはじめとするS級の邪悪なエイリアンとやりあえるほどに強くなる必要があると感じたからじゃ。特に草加部壮介!お主はギラとやらの力を三分程度しか使えておらん!」

「は?マジ?」

ヤマトに言われて壮介はギラに問う。

ギラは「ブラザー、残念だけど図星だぜ…言い出せず申し訳ない」と謝罪した。

ヤマトは続ける。

「本来であればお主の青き炎はS級と渡り合うほどに強く高めることが可能なのじゃ。早急にせめて八分は発揮できるようにせねば草加部壮介。相手がザクモでなくともお主は死ぬぞ?」

ヤマトの忠告に壮介はゴクリと唾を飲んだ。

「一方で御影、沙夜。お主らは思っていた以上に力を使いこなせておる。現状でそうじゃな、七分というところかの。だが、このままでは死を回避できるとは言えん。まだまだ高めていかねばならん。とりあえず…」

次の瞬間、ヤマトの姿が消えた。

沙夜の前に姿を現したヤマトは両手で沙夜の胸を鷲掴みした。

「ワシの高速移動を捉える目を持て。そしてタッチを回避できるように、な」

沙夜の拳をかわして更に早く御影の後ろに回る。

御影の尻をパンと叩くと怒る御影の蹴りをかわして今度は耳に顔を近づけて小声で意外なことを短く語った。

「幸村御影よ、お主なら近いうち『覚醒』するかもしれん。精進せよ」

セクハラからの真面目なトーンに御影は一瞬キョトンとした。

「隙あり!おお、こちらもなかなか…」

ヤマトジジイの両手は御影の両胸に伸びていた。

固まって5揉みほどされた後、全力でジジイの顔面目掛けて拳を突き出す。

「おおっとっと。おっかない一撃じゃの。食らったら先ほどの流血ではすまん一撃じゃ。その調子で力を解放していけば良い。さて、そこの少年よ。お主も憑いてるんじゃろ?入ってきたらどうじゃ?」

誰も気づいていなかった。小さな力。気配。

道場の入り口の陰に隠れていた少年。

御影には見覚えがあったその姿。

高見光一。小学6年生。

姿形をそっくりに化ける『変身』を使うエイリアン憑きの少年だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る