第10話 強者どもの激突
沙夜と共にとある道場へとやってきた御影と壮介。
その道場は沙夜が特別に建ててもらったものだという。
「もしかして山之内ってお嬢なのか?こんなでかい家に道場付きとか」
壮介の問いにあまり気分が良くないのか「まあな…」と言って無愛想に顔を逸らす沙夜。
「ガキの頃から中国拳法、柔道に剣道、いろいろやらされてきたからな。この道場はその時からある。格闘技以外の力でも壊れないように強化してあるけどな」
御影は道場全体を見回して「確かに」と納得していた。
「防火、防弾、防音。ありとあらゆる強化を施してある。ある程度の能力なら解放して問題ないぜ?さぁ始めるか!」
沙夜が構える。武具は発生させず、先ずは肉弾戦を仕掛けるようだ。
「じゃ、俺はじっくりお二人のバトルを観戦させていただくとしますか」
壮介はだだっ広い道場の隅にドカッと胡座をかいた。
御影も構える。どちらも隙を伺っているのかまだ動かない。
沙夜がニヤッと笑うと床を蹴って一瞬で御影の間合いに入ってきた。
御影が沙夜の腹を目掛けて拳を突き出す。
バシッと受け止めてそのまま腕を引っ張って御影を投げ飛ばす。
投げられた先にある壁を蹴って沙夜の前に着地すると素早く蹴りを繰り出す。
その蹴りを腕で受け止めるが一瞬沙夜の顔は苦痛に歪む。
「さっきの拳もそうだがこの御影って娘は一撃一撃が重く強い。下手に受け止め続けたら骨がいっちまいそうだ…」
沙夜が御影について考えていると同時に御影もまた沙夜の速さに面食らっていた。
「うーん、けっこう容赦なくお腹や顔狙って打ってみたんだけどなぁ。全部ガードされてヒットしない。さて、どうしよ?」
さらに肉弾戦は続いた。
互いに顔、腹、背中、足。体のあちこちに攻撃がヒットしていた。
気づけば双方ともに口の端から血が出ていたり、腕や足に切り傷や痣ができていた。
「そろそろ少しばかり能力を使っていこうか。あたしの毒は命に別状ない程度に抑えるからさ」
沙夜が紫の刃を発生させて握りしめた。
御影もニッと笑って拳に圧縮した衝撃波を発生させる。
「おいおい、大丈夫か?端から見てっと殺しかねねーほどやべーの出してるように見えるんだが?」
壮介が危惧して慌てているのを横目に御影、沙夜ともが「ノープロブレム!」と言って駆け出す。
素早く刃を御影に向けて突き出す沙夜。
それを避けて御影が脇腹に拳を当てる。
ミシッという音とともに沙夜が吹っ飛ぶ。
壁に激突して頭から少しの血が流れる。
しかし、沙夜はニヤリと笑って「やるね。だが…」と言って御影の足元を見る。
御影の足元には形を成したままの紫の刃が転がっていた。
御影はそれに気づいて後ろに跳んだが遅く、刃は手裏剣のように回って飛び、御影の右太ももにかすった。
「いった!」傷口から血が流れる。
御影の右足は毒で痺れて暫しまともに動けそうにない。
まともに動けないのは沙夜も同じであった。御影の脇腹への一撃で肋が2本折れ、頭も打って軽い脳震盪を起こしていた。
「勝負あり、かな?えーととりあえず引き分け!」
壮介のジャッジで二人の手合わせは終わった。
「十分強いってのはわかった。それなり楽しかったしな。とりあえずよろしく」
沙夜の言葉に御影も「うん、よろしく沙夜さん」と笑顔で答える。
「ところで暫くあたしも沙夜さんも動けそうにないんだけど。どうしよ?」
御影が言うとアモンが顔を出して「お疲れ」と言って治癒を始めた。
「ん?あれ?」
アモンが不思議そうに言う。
「傷はだいたい治ったけど毒がさっぱり消えないよ?」
アモンの治癒力はかなり強いはずなのだが、痺れが治せないという。
すると沙夜が少し申し訳なさそうに言った。
「あぁ、悪い。ちょっとあたしもマダラもムキになっちまった。思ったより強めに毒入れちまったみたいだ。まぁ30分か1時間くらいで消えるだろ」
壁にもたれて座ったまま沙夜が言うとアモンは納得して御影の中に戻った。
が、直ぐ様アモンは再び御影の肩から顔を出した。
「何かいる!」
アモンの声にその場の全員が身構えた。
かなり強い力の存在を皆が感じていた。
「マジいぞ。今は俺以外はまともに戦えねー。この気配、俺より格段に強いだろ!」
壮介が冷や汗をかきながら言うと気配はなんとか立ち上がり構えようとしていた御影の真後ろに現れた。
「ひうっ!?」
御影がビクンとなって高めの変な声をあげた。
デニムのショートパンツの尻をチョンマゲ頭、白い髭を生やした爺さんが撫でていた。
「いやはや、若くハリのある良い尻だの。良い良い」
「だ、誰だ?いやなんだこの助平ジジイは?どっから湧いて出た?」
壮介が言うと御影はふるふると怒りに震えながら拳に力を込める。
なんなら沙夜に繰り出した衝撃波より強めに力を込めている。
逆上した御影は「死ねジジイ!!」と初対面の爺さん相手に拳を突き出した。
しかし、爺さんはフッと消えて今度は沙夜の真ん前に現れた。
そして、破れたジャケットから覗くタンクトップ姿の沙夜に抱きつくと胸に顔を埋めた。
「いやぁ良い良い!久しぶりの若い乳。フェロモンたっぷりなオナゴだのー!」
胸と胸の間に深く埋まる初対面の爺さんの顔面。
沙夜の頭は一瞬にして沸騰して脳震盪やら脇腹のダメージなんぞは吹き飛んだ。
「殺す!このジジイは殺す!誰か知らんがブッ殺す!!」
沙夜の手には濃く毒々しい紫色の刀が現れていた。
VS謎の爺さん開幕??
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