第7話 エイリアン対策本部~御影VS壮介

俺、草加部壮介(30)はエイリアン対策室なるところへ招かれた。


勿論この最強の力、青い炎の力を買われてのことだ。


本来ならばこんな力の話なんてのは二次元的、中二病的な話で馬鹿にされるところだが、現実にエイリアンとその力を悪用する人間が存在するという問題が起きている。

誰も何も言えまい。


幼い頃より憧れていたヒーロー。

齢30にしてその夢が叶うなんて誰が想像しただろうか。


とにかく今日からは苦難はあろうが俺にとっては夢の日々である。


さぁ、どんな強者揃いの特殊部隊が組まれているのか。

楽しみだ。


しかし、今日連れてこられたのは警察署ではなく、とあるマンションの1室だった。

何故?と疑問を抱いていると嵯峨根利行警部から理由を告げられた。

「正直、署内でもこの隊を組むことに疑問を持つ者もいる。何せ外部の人間、まして素人の力を借りて事件を解決しようという話だからな」


だろうな。警察も自衛隊も歯が立たない。

しかし、相手は人外同然の存在。

どうしようもないのは世間もわかっているだろう。

だからこその『エイリアンにはエイリアンを』だ。

エイリアン憑きの精鋭部隊。

さて、どんな猛者が集まっているのか。


などと胸を踊らせながら警部とともに部屋へ招かれた。


そこには…1人の10代と思われる女性の姿があった。


「……えーと…JK?…JKかな?」


「そうですけど?JKの幸村御影です」


「そうか…JK…草加部壮介。三十路です…」


なんとなくの確認と軽い自己紹介を済ませた。

困惑と同様、拍子抜け、脱力感。

思っていた精鋭部隊は在らず。


「ちょっと待て。他には?屈強な男の1人や2人。いるんだろ?」


嵯峨根警部と御影を交互に見て訴えかけたが2人とも首を横に振っている。


「えぇ…!」


驚きと落胆。壮介はガックリときて一度はその場に崩れ落ちたものの、スクッと立ち上がり、改めて御影の方へツカツカと歩いていき、目の前に立つとまじまじと御影を見つめた。

顔から足まで。足から顔までと見つめた。

怪訝な顔をする御影に壮介が提案した。


「よし!わかった!とりあえず手合わせだ!お互いの力を見せあおう!」


壮介の突然の提案に御影も嵯峨根警部も目を合わせて軽くため息をついた。


「…わかった。で、草加部さん?は実戦経験はどのくらい?」


「んー…20、30くらいは退治したかな?どれも圧勝よ!俺もこのギラも最強だからな!」


自信満々の壮介の言葉に御影は小さく呟いた。


「問題はそのエイリアンの中にBクラス以上が何体いたかなのよね…もしC以下なら話にならな…」


「え?なに?なんだって?」


「なんでもない。ここでやるわけにもいかないし…どこでやります?」


呟きを気にする壮介を軽く流して嵯峨根警部に組み手を行う場所を尋ねた。


「うーん、ちょっと車出すわ。お前らの力じゃ街中でぶつけ合ったら被害が出る」


それもそうか、と納得して部屋を出て、嵯峨根の車に乗り込んだ。


東京都内からだいぶ離れた場所に連れてこられたそこには、だだっ広い空き地があった。


嵯峨根が言うには今のところどう使うか決まっていない土地だということで多少は地面が荒れても問題はないと。

人も来ないし周りにも何もないと。


「よーし!じゃ、先ずは肉弾戦といこうか!俺は学生時代はキックボクシングやってたからよ。けっこう強いぞ?」

壮介はヤル気満々でシュッシュッと拳を突き出して臨戦態勢になっている。

一方で御影は面倒くさそうに一応軽く構えている。

「…いつでもどうぞ」

「Ready Go!」

御影のダルそうな一言に対して壮介は気合い十分に叫んだ。



「シッ!」

壮介は軽く息を吐き御影に向かってパンチを繰り出す。

平手でそれを左に流して御影が掌で壮介の腹を突く。


「ぐはっ!ゲホッ!うく…なかなかいい一撃だぜ?嬢ちゃん。まだまだいくぞ!!」


拳の連打、蹴りも交えての猛攻。

だが御影には一発も入らず、壮介のみぞおち、頬、顎、脇腹と御影の掌、手の甲がバシッ!ドシッ!とヒットしていく。


「はーっ!はーっ!や、やるな嬢ちゃん」

(おいおい。やるなんてもんじゃねー。バカ強えぞ、このJK。全部掌、手の甲で流して打ってきやがる。力比べでやってても勝てる気がしねー)


強がりつつも御影の格闘術には敗北を認める壮介だが、ここで次の提案をする。


「腕っぷしの強さはだいたいわかった。次は能力の見せあいだ。お互いのエイリアンの力比べといこうぜ」


壮介の提案に御影も「わかった」と頷いて構えを解く。


壮介は「獄炎!」と発すると同時に青い炎を拳に発生させた。

肩にはエイリアンのギラも姿を現している。


「青い炎か…じゃあ」

御影も壮介の能力に合わせてイメージする。

深く赤々とした、紅の炎を頭に浮かべた。

御影の拳にも炎が発生する。


「へぇ!火力勝負ときたか!いいぜ、全力で来いよ!」


壮介の煽りに御影は「いや、全力はマズイっしょ。殺し合いじゃないんだから」と呟いた。


「連弾!」という叫びと同時に壮介は拳で空気中を連打した。


青い炎が殴り付けるような衝撃とともに音速の火の弾となって御影に襲いかかる。

だが、御影は余裕の笑みを見せながら掌の炎の範囲を拡げて炎の壁を作ってみせた。


青い炎は赤く燃え盛る炎の壁に飲み込まれて吸収された。


「…嘘だろ。初めて見る技に一瞬で対処しやがる。こうなったら大技で…」

「おい、ブラザーよ、クールにいこうぜ」


焦りでどんどんマジの戦闘モードに突入していく壮介を相棒のギラがなだめる。


「そこまで!」


嵯峨根の一声に反応して御影も壮介も能力を解いた。


「わかったろ?腕っぷし、能力とも今のところ幸村御影くんのほうが強い。君と組んで足を引っ張るはずもない。バディ、組んでくれるな?」


嵯峨根の問いに壮介は「了解了解!わかりましたよ。お強い御影ちゃんがレッド、俺がブルーで頑張りますよ!」とヒーローへの憧れを表しつつ大人げない態度ではあるが納得してみせた。


夢幻の創造力の御影、無限の青い炎の壮介。

仮のバディの誕生である。

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