第45話

「俺最近、学校結構休んでるんだけど…大丈夫かな」


グラビア見てたのに、冬は突如弱気になる。


「はぁ?冬は頭いいし、よゆーじゃん?毎日行かなくても頭いい奴はよゆーで卒業だからな」


「まじで!?そーなの?」

「まじかよー!すげい!」


「秋は勉強しねーし、毎日行けばよゆーじゃね?」


「まじかー。でも冬頭いいし、勉強しなくてもよゆー?」


「よゆー。冬、お前無理するな。俺に電話しろよ、すぐ来てやっから」


今日トラジが来たときみたいに、冬の頭を撫でくりまわす。トラジは知ってる。冬は事故の翌日に白髪になってしまったこと。冬はずっと、そのときのことを忘れられないんだ。俺は記憶がないから、どれだけ冬が辛かったかなんて、わからない。


「…無理なんて」


冬無理して学校行ってた。止められなかった俺が悪いけど。


「してねーって?じゃーお前、なんで兄貴が俺を呼ぶんだよ。ったく、兄貴に呼ばれたら心配になるだろ?あいつまじで言い方悪いから。大袈裟すぎんだよ」


「…ごめん、トラジ。尚巳に会いたくて…学校行った」


「あー?彼女か?」


「…うん」


「いいか冬。無理して行かねーでも電話でもいいだろ?お前が倒れたら、みんな心配になるだろ?秋も春もみんな、心配じゃん?冬、いいか、すぐ頼れよ?」


「…うん、ごめん。無理した」


「ったく。お前もともとかっけーから。秋も春も。な?」


2人まとめて撫でくりまわされた。


「トラジは中身はなかなかかっけーよ?」


「おい秋ーなんだよ中身は、って。それ以外はだめだってか!」


「トラジはもっといい人に出会えるよ」


「冬はいいやつだな」


トラジは満足そうだ。



「ただいまー二郎くんごめんね、きてくれたの?」


「あー、まぁ」


トラジは、その辺のグラビア雑誌はしゃべりつつ片付けた。


「トラジ!いつのまに来たの?」


「おー春ー」


にーちゃんは母さんと塾から帰ってきた。


「ねぇトラジ!相談したいから!こっち」


にーちゃんはトラジを部屋に連れて行ってしまった。あー俺ももっとしゃべりたい。

冬はなんの相談したのか?彼女のことでしょ?にーちゃんも?俺はね、冬のこと相談した。みんな、トラジにそれぞれ相談してる。


「母さんはトラジに相談ないの?」


「えーないない」


母さんはあんまりトラジ好きじゃない。

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