第27話

「モデルにスカウトされたの。迷ってたら」


「で?」


「撮影とかしたんだ。でも、途中まで来てくれなきゃ場所わかんなくて」


「それで?」


「覚えられなくて。構ってられないって言われてくびになったー」


「…そう。尚巳って努力したことある?」


「ある!えっとーえっとー」


「なに、気になる」


「あ、コンビニ!」


「尚巳、おごるから。とりあえず落ち着いて中で話そう」


「いいのー?ありがとう」


ジュースを買ってあげた。イートインコーナーで話す。


「で、さっきの続き。努力したことは?」


「私のうちね、蛇飼ってるの」


「蛇?って…動物?」


「そう!それをね、売ってるの」


「ふーん、珍しい仕事」


「気持ち悪くない?ねえ!どんな気持ち?」


「は?珍しいなぐらい?」


「へー!冬は驚かないんだ!」


なぜか嬉しそうだ。


「なんなんだそれは。で?努力した話はどうした」


「あ!それでね、お世話の仕方とか、名前とか!いろいろ、たくさん覚えた!」


「何種類くらい?」


「んー100よりもっとー!」


「すごいじゃん」


やっぱり、尚巳はバカじゃない。本当に道が覚えられないだけじゃないか。


「えへ!パパにも褒められたの!でも私、バカだし英語とかできないから家の仕事できないでしょ?モデルになろうかと思ってたんだけどなぁー」


「ふーん、そう。モデルとかやんないほうがいい」


「え!なんで?かわいいって言ったじゃん!」


いや、直接俺が言ってはいないけど…


「もったいない。雑誌とかでしょ?紙だよね?捨てられるよそんなの」


理由になってはいない。


「なんか、よくわかんないけど!やんなくてよかった」


「尚巳、モデルやらなくて正解。尚巳のこと大切にしない会社なんか捨てて、俺と一緒にいようよ」


「…冬は尚巳のこと好きなの?」


「うん」

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