第19話

気まずい。2人きりだし…

勘違いされたり、とか


「ごはん食べながらでいいから、話していいよ」


「あ、あの、だいぶ前だけど、スリッパ…ひろってくれてありがとう…ほんと助かった」


箸を置いて、カウンターに座る花田さんに頭を下げてた。


「別に?ごはん食べなよ?」


「あ、うん。あと、普通に話してくれてありがとう」


「金井くん。こちらこそ、だよ」


「…俺のこと、知ってた?」


「どういうこと?」


「俺が…」


無理しないでって言われてたけど…


「義足、ってこと…」


「うん」


やっぱり、そうだったんだ。急に力抜けて泣きそうになった。花田さんはずっと知ってて、影から支えてくれてたんだ。オレ無理してた。すごく、疲れてきた。


「ごめん、足、外していい?…新しいのまだ慣れなくて」


「いいよ」


「おい!お前脱ぐなよ!」


え、金髪ヤンキーがシャッターじゃないとこから進入?

は…ズボン花田さんの前で脱ぐとか…


「ちょっとお兄ちゃん、足が痛いからだって。義足」


「あ、そうなの?てか、男と2人きりになるなよ」


「はー?お兄ちゃんどういうこと?」


「二股かと思うかもしれねーから」


「す、すみません!俺のせいで…」


「せめて、真矢をどかしてから脱げよ。ったく、勘違いされるから」


この人…花田さん、兄?すごい、ヤンキーじゃん!そのまま上の部屋に上がっていった。


「ごめん、兄が話中断させたね」


「いや、優しい…ね」


「どこが。うるさいよ?」


とりあえず足外そう。


「先生からいつ聞いた?」


「いや?」


「なんで?わかった?」


「だって、金井くんのスリッパ、左右の大きさ違うから」


「…みんなに気付かれてるかな」


「足が悪いことはたぶんわかるかな。だって階段きつそう」


「いつ、気付いた?」


「んー、靴箱掃除してる時?んー、正確にはわからないかな」


「花田さん、すごいや。俺、ずっと言いたくなくて…普通でいたくて、俺、いろんな人に嘘ついて…だって俺普通の人だったから…」


「言いたくなったら言えばいいよ?」


「…俺辰巳にも嘘ついてばっかで。辰巳はみんなに優しいから、すごい羨ましいよ。人として、尊敬してる。なのに、ちゃんと話聞いてなくて…ほんと自分勝手」


「そうなんだね。そうそう、塾楽しい?」


「え、花田さんもそんなこと言う?」


「だって、居残りの時塾に行きたそうだったし。よく塾の話してるから」


「…うわ、恥ずかしい…」


「勉強好きなの?」


「…うん。俺、なにか頑張りたくて」


「そうなんだね」


「あ、そうだ。花田さんって普通にキスするの?」


「あいさつのこと?普通じゃない?」


「うわ、ほんとなんだ…」


「金井くんは?」


「は?え…いや、無理無理」


「キスしたいの?」


すげえズバズバ聞かれて恥ずかしい。


「好きな人いるんでしょ?」


「恥ずかしい」


「ピュアなんだね。金井くん、その人にはよく話したほうがいいね」


「…うん、ありがとう」

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