第2話

しかし、そんなこと考えてる場合ではなくなった。


体育祭が迫ってきた。

俺は、参加できない。

走ることすらできない。


理由は、持病の為…ということになっていた。どんな持病かなんて、担任の先生以外は知らない。もちろん、今までも体育は参加したことない。うちの学校はほとんど体育がないから、そんなに気にすることではないけど。


「辰巳、体育祭でさ…やぐらやるんでしょ?」


「まーね。あー眠いなー」


怖くないのか?落ちたら怪我するのに…


「女子はそんな競技ないのに、男子だけ大変だな」


「そうかも。…委員長は体育祭の手伝いもするか…なぁ?するよなーきっと。そうだよ」


花田さんのことばっか考えてる。


「金井くんってなんの病気?」


辰巳と仲良くなって、俺とも仲良くなった女子に聞かれる。


「とりあえず運動はできない、かな?」


「へぇーそっか」


こんな感じでいつも軽く流す。言いたくない。

知られたくない。


日にちが近づくにつれて怖くなって、結局体育祭は休んだ。見学すらできないとか…ほんとダメだな。これで、友達も減るかもしれない。でも、勉強はしたいから翌日は学校には行く。


「おはよう。見ろよーめっちゃ日焼けしたよ。…眠いなぁ」


辰巳は相変わらず話しかけてくれた。そして他の人も。辰巳にとってはどうでもいいことかもしれない。でも、俺は嬉しいよ。なんで休んだんだ、なんて聞かれなかったから。


3学期になって、また委員長と距離が縮まってる?辰巳、頑張れ。そんな日の朝。


「金井くん、スリッパは?」


はっとした。委員長の花田さんに聞かれて気がついた。片足に履いてない。


「あー、あれ?どこやったかな…」


ちゃんと喋れてる?


「どこ歩いた?」


「…わ、わからな…」


まだ教室に来たばかりだ。どこで…頭がパニックになる。


「靴箱からだよね?ちょっと戻って探す」


え、


花田さんはさっと駆け出したが、すぐ戻ってきた。


「階段の途中にあったよ!はい」


さっと、足元に置いてくれた。

絶対おかしいって思ったはず。


「ありがとう…ごめ」


明美あけみちゃーんおはよー」

「真矢ちゃん、おはよう」


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