変な夢に悩まされたから、逆に利用した話。

ねぎらーめん

変な夢に悩まされたから、逆に利用した話。

1.

最近変な夢に悩まされている。

様々な自分の夢だ。

現在の自分も過去の自分も未来の自分も。

今見ているのは中学一年生の頃の話だ。

「酒井君は自己肯定感が低いんだよ」

担任はそう言った。

「え?どういう意味ですか?」

中一の僕にはまだその意味がわからなかった。

「だからさ君はもっと本当の自分を出せばいいんだよ」

「あぁそうですか考えときます」

「あと酒井君クラスのみんなから嫌われてるよ」

そう言われた後、僕は何も言わずに教室に戻った。

2.

「先生と何話してたの?」

教室では、幼なじみの蒼依が待っていた。

「何か自己肯定感ってやつが低いんだって」

「あと僕みんなから嫌われてるらしい…」

僕はそう返した。

そうすると蒼依は、

「私は凪くんのこと好きだよ」

と言った。

僕はそれを恋愛的な意味ではないと分かっていても、

「あっ、ありがとう」

と少し照れながら言った。

これが今回見た夢だ。

でもこの夢には現実と違うところがある。

確かに中一の時の担任は僕に嫌味を言ってきていた。

でもそれを慰めてくれる、幼なじみはいなかった。


3.

夢から覚めた。

眠い目を擦り、時計を見る。

時間は6時半だ。

家を出るまで約や30分だ。

「やば」

と言いながら急いでベットから出て、

歯を磨き、服を着替えて、

学校に必要なものをバッグに詰め込み、家を出る。

外に出るといつも見るている景色が色がっている。

バス停でバスを待ち、バスに乗る。

バスに乗ると同じ高校の制服を着たカップルが騒いでいる。

「うーんこいつらは後2ヶ月で別れるだろうな」

何て思いながらバスに揺られていると学校の最寄り駅に着いた。


4.

学校に着いたら友達に

「おはよう」

と言い机に突っ伏して寝る。

そして半分寝ながら1時間目を受ける。

2時間目になると眠気が覚めてくる。

3時間目と4時間目を受け、昼休みになる。

昼休みは友達と昼ごはんを食べる。

友達に今日の夢を話すと、

「高3にもなって厨二病か?」

と言われた。

だけど都市伝説好きの友達の青木が

「それ並行世界ってやつなんじゃないか?」

といった。

僕はまた

「なんだそれ」

と聞いた。

そうすると青木はその並行世界ってやつについて話し始めた。

「この世にはね並行世界、別名パラレルワールドって呼ばれるものがあるんだよ」

「だからそれがなんだっていうんだ」

「並行世界っていうのはね、えっと凪の世界があるだろ」

「うん」

「その世界から分岐して、そこから並行して色々な世界が進んでいくことをいうんだ」

「へーそんなもんがあるんだな。で、それと夢に何の関係があるんだ?」

「だからその見た夢が並行世界の話なんじゃないかってこと」

「でも並行の世界なんだから時間軸は一緒なんじゃないのか?」

「そうだよ?」

「じゃあなんで夢の中の僕は中1だったんだよ、それに夜中に見たのに夢の中は昼間だったんだ」

「それは夢で見た世界では『酒井凪』という人物がきこの世界の『酒井凪』より遅く生まれたで説明がつく」

「そういうことか、もう一つは?」

「例えばこの世界の日本が夜の時は、ブラジルが夜だろ?」

「うん、でもそれと何が関係があるんだ?」

「じゃあ夢で見た並行世界の日本が、何らかの地理的理由、歴史的理由でいこの世界でのブラジルの位置にあったら?」

「確かにこの世界の日本では、夜中でも並行世界の日本が昼間だったってことに説明がつくな」

「そういうこと」

なんとなく理解した。

簡単にいうと僕の見た夢は並行世界の可能性がある。

そして時間軸が一緒なだけで、この世界と違うことが多いみたいだ。

ここで僕はふと疑問に思った。

「ひとつ聞きたいんだけど他にも並行世界が存在する可能性はあるのかい?」

青木それに対して回答する。

「そうだよ、だから君と同じ年齢の『酒井凪』が存在している世界もあれば老いた『酒井凪』が存在している世界もあるのさ」

「そうなんだ」

てことはこの世界の僕を『酒井凪A』だとすると他の世界に『酒井凪B』がいるってことだ。

そして僕が存在する並行世界は沢山あるってことか。

もうひとつ聞きたくなった。

「じゃあ次夢を見た時、他の並行世界の夢を見れるのかい?」

「可能性はある、でも絶対ではない、次の夢からずっと見れない可能性もあるし、次は違う並行世界の夢かもしれないし、また同じ並行世界の夢かもしれない」

「なんとなく理解した」

ふと時計を見るともう少しで昼休みは終わりだ。

少し話し過ぎたようだ。

「もう昼休みも終わるし、もうそろそろ教室戻るわ」

「そっか、また何か聞きたくなったら言えよ」

「うん、ありがとう」

そう言って教室に戻る。


5.

5時間目が始まった。

昼休み後の数学はいつになくつまらない。

つまらないと眠くなってくる。

僕は悪気もなく机に突っ伏して、眠る。

ふと、気がついた。

また夢だ、夢の中にいる。

次は夢の中に僕が中1だった頃の母が出てきた。

「凪ここはこうやって解くんだよ」と優しく勉強を教えてくれていた。

理想の母ってやつだ。

この夢にも間違いがある。

何故なら僕の母は優しくない。

僕は、勉強が出来なかった。

部屋の片付け方もわからないため、部屋も汚い。

だから母はこの夢のように優しくなかった。

叩かれたり、暴言を吐かれたり、ひどい時には包丁を持ち出された。

「嫌なこと思い出したな」と呟いた。

そうすると母は目の前にいて、

「何言ってるの?何か嫌だった?」

と心配そうに聞いてくる。

何故かは分からないが夢の僕に入ったようだ。

どうやったかは分からないが、それを考えるのは後だ。

「いや何でもないよ」

「そう?ならいいけど」

「うん」

母は心配そうにしながら数学の問題の解き方を教えるのを続けた。

「ちょっと難しいのに挑戦してみよっか」

母はそう言ったが僕は今ノートに書いてあることが全く理解できてなかった。

この世界の僕は頭がいいのだろう。

机には高校の教科書が並んでいた。

「じゃあこの三角形のxをもとめってみよっか」

「えっ?分かんない」

「さっき教えたじゃな〜い」

と母は笑いながらもう一度最初から説明してくれた。

「じゃあもう一度教えた通りにやってみて」

と母は言った。

僕はどうせ間違っているだろうと思いながら、母に言われた手順を通して問題を解いた。

「x=26であってる?」

「すごい!やっぱり私の子だわ」

「ありがとう」

すごいちゃんとやればできるじゃないか。

ここでひとつ分かったことがある。

僕は勉強が出来ないのではなく、勉強しなかっただけだったのだと。



6.

トントンと肩を叩かれる。

隣のやつだ。

いいとこだったのに何なんだよ。

と思っていると、何かを言いたげな目をしながらこっちを見る。

というか教室中の全員が視線を僕に送っている。

黒板の方を見ると、先生が「酒井いつまで寝てるんだ、この、問題解いてみろ」と言った。

これ夢の中の母に教えてもらったやつだ。

「えっとx=26です」と答えた。

「正解だ、でも寝るのはだめだ」と言われた。

夢の中の母に助かったと思った。


7.

そのまま何もなく5時間目、そして6時間目も終わった。

僕は青木と一緒に帰っていた。

「なぁ5時間目さ僕寝たんだよ」

「いつも通りだね」

「その夢でさ僕が頭いい世界に行ったんだ」

「それで?」

「それでと夢の中で勉強したんだよ」

「うん」

「で隣のやつにさ起こされてさ僕先生に当てられてたんだよ」

「それで夢で教えてもらっことが答えだったんだろ?」

「青木は察しが早いな」

「まぁな」

ここまでのことをまとめよう。

1,夢の中の僕に入ることができる。

2,他の並行世界にも行ける。

ざっとこんな感じか。

そんなこと考えてると青木が喋りかけてきた。

「なぁお前さ好きな人とかいないの?」

「別にいないよそんなの」

「なんでだよ」

「お前はいいよな彼女いて」

「あぁ凄く良いよ最高だ」

「何で急にそんなこと聞いてきたんだ?」

「いやぁ俺ら高校生だろ?だからさぁ青春の一つや二つくらいしても良いだろ?」

「まぁ確かに、でも青木はイケメンだけど僕は違うんだ」

そう僕は別に顔がいいわけでも何かに長けているわけでも無い。

それに対して青木は顔も性格もイケメンそれに陸上では全国2位だ。

「お前はそういうけどさおれはそんなことおもわないけどな」

「どこがだよ」

「お前は不器用なだけで優しいんだよ」

「そうかなぁ」

「それに別にカッコよくは無いけどブスでもないぞ。いわゆる普通ってやつだ」

「まぁそれは『感謝します。』ってやつだな」

そんな話をしていると、青木の家に着いた。

「じゃあな」

「またな」

そう言葉を交わして帰った。



8.

家に着いた。

鍵を開けようとすると、鍵が開いていた。

「閉め忘れたか?」

そう呟くが人気がする。

やはりだ。

ドアを開けると姉の靴がある。

「いつ合鍵作ったんだよ」

「えー?このまえ」

「そのこのまえを聞いてるんだよ」

「それはぁ….秘密―」

「何で姉さんはいつもそうなんだ」

ため息を吐きながらそう言う。

「で?今回はなんなんだよ」

「いやぁただぁ凪がちゃんと一人で生活できてるかなぁって」

「出来てるよ。てか何もないならくるなよ」

「ごめんなさいねぇ〜」

そう言いながら姉は足早に出て行った。

その瞬間姉は法定速度をゆうに超えたに撥ねられ、電柱と車の間で肉塊と化していた。

僕は叫んだ。

同時に僕は飛び起きた。


9.

「夢か。」

そう呟くと教室には誰もいなかった。

時計を見ると学校はもう終わったようだ。

一人で帰路に着いた。

実姉が死ぬ夢を見た後だ。

気分が悪い。

家に帰ると鍵が開いている。

嫌な予感は当たったようだ、姉が家にいた。

姉は夢で見た通りに話をした。

僕は話を続けようとしたが、何故か夢の通りに進み、姉は帰るという。

もし夢のようになってしまったら。

そう思うと同時に僕は扉を開けかけていた姉の手をつかんでいた。

その瞬間家の前で1台の車が単独事故を起こした。

電柱に突っ込んでいた。

姉は

「びっくりしたぁ〜凪のおかげで助かった〜」

呑気なことを言っている。

それに対して僕は

「よかった」

そう言いながら僕は泣き崩れた。

いつの間にか外は明るくなり、僕は布団の中にいた。

僕は泣き崩れた後そのまま寝てしまい、姉は帰ってしまったようだ。


10.

今朝は夢を見なかった。

今日は学校が休みだ。

僕はこの変な夢、そして並行世界について調べようと思った。

ノートパソコンの電源を付け、『夢 並行世界』と調べた。

そうすると、検索結果の一番上に、『占い師るる』と言う奴が出てきた。

胡散臭いと思いつつもサイトに入った。

見てみると、この占い師は夢占いが得意らしい。

家からとても近いところにあるらしく、通常五千円のところを初回限定で千円占ってくれるそうだ。

別に夢占いをしてほしいわけではないが、

『この人なら何か教えてくれるのではないか』

という淡い期待をして、家から出て占い師のところに向かった。


12.

ボロい雑居ビルに着いた。

案内を見ると3階にあるそうだ。

ドアを開けると、そこにはおばあさんがいた。

大体70歳くらいだろうか。

このおばさんが『るる』か。

そう思いながら受付に行きコースを選んだ。

そしておばあさんに案内され、部屋に入った。

部屋の中には、ベッドがあった。

「ここに寝転がっていてください」

そうおばあさんは言って出て行った。


13.

数分後部屋のドアがノックされた。

ドアを開けるとそこには下着のような服にローブを羽織った少女がいた。

占い師の衣装と言われれば、そうなのだが、そう言うお店の衣装にも見える。

「あのー僕ロリ系ヘルスなんか頼んでませんけど」

そう僕が言うと、入ってきた少女は

「何を言う私がるるだ!確かに布面積少ないけど、そういうサービスはない!」

そう言った。

「そうですよね」

「何を笑っている!少年早くそこに仰向けになれ!」

うるさい少女だなと思いつつベッドに仰向けになった。

見た目は12歳くらいだが大丈夫なのだろうか。

「るるさんって何歳なんですか」

「私は24歳だ」

「はい?」

「何だ少年、口をポカンと開けて。なにか問題でもあったか?」

「いやぁ何というか、年齢にそぐわない見た目ですね」

「まぁよく童顔とは言われる」

「はぁ」

「まぁいい!早く占いを始めるぞ!」

「いえ今日は占ってほしいのでは無くて、僕の夢について聞きたいことがあるんです」

僕がそう言うと、彼女は

「ほう、面白そうだ聞かせろ」

そう言い目で催促する。


14.

ざっと今までの夢を話した。

彼女は僕に夢についてこう説明した。

「夢というのは単なる幻想では無く、実は少年の潜在意識や、過去、現在、未来の状態を暗示するものだ」

僕はその説明で出た疑問を彼女に聞いた。

「この前友達にも聞いたんですけど、友達は並行世界なんじゃないかって言っていたんですけどどうなんですか」

「それはあながち間違えではない。確かに並行世界と言う考えもある」

「そうなんですね」

「少年はこの夢に悩まされているのか?」

「はい」

「少年、この夢を利用しろ」

「利用?それはどういう、」

「さっき少年は数学の時間に解いた答えが、夢で母親に教えてもらったものだと言ったな」

「はい」

「少年の夢と現実世界はリンクしている。だからうまく利用できれば、少年は良い人生を送ることが出来る」

「確かにそうですね」

彼女は僕に夢で学び、それを現実で生かすように言った。

これから僕夢で人生を変えると決意した。

「そろそろ時間じゃ」

「わかりました」

「まぁまた何かあったらく来い」

「はい、今日はありがとうございました」

そう言い僕は店を出て行き帰路に着いた。


15.

家に着いた。

二十二時を回っていた。

帰りにゲーセンに寄ってゲームしたりしていたので疲れていた。

今日は夢で何をしようかなんて考えながらベッドに入った。


16.

夢に来た。

また知らない幼馴染の女の子が出てきた。

一緒にアイスを食べながら歩いている。

その女の子はトイレに行ってくると言って、スーパーのトイレに行った。

でもいつまで経っても帰ってこない。

異変を感じ店員さんを呼ぶとトイレの中には誰もいないという。

警察が数分後に来た。

防犯カメラの映像を見ると、トイレからキャリーケースを持った女性が出て来ていた。

その女性を追跡すると、小さいアパートに着いた。

そこに警察が行くとあっさりその女の子は見つかった。

昔の誘拐事件の模倣犯だったらしい。

その事件を機に女の子の母親はその子をずっと家に置いておき、ほぼ軟禁状態にしていた。


17.

思い出した。

ここからずっと僕は幼馴染、蒼依のことを忘れていたんだ。

そんなことを思っていると後ろから肩を叩かれた。

老けた僕だった。

「なんだよ僕」

「僕は君と同じ能力を手に入れて、君と同じ人生を送り60年経った」

「それで?」

「僕は後悔している」

「なにに?」

「彼女20代後半になっても親の過保護で軟禁されていたんだ」

「うん、それで?」

「それで彼女は、それに耐えきれなくなって28歳の時、自ら命を絶ったんだ」

「僕の世界でも自殺するのかな」

「するね」

「何で言い切れる」

「僕は君が赤ちゃんの時から見てきたんだけど、全てが一緒なんだ」

「だから言い切れるのか」

「うん、この世界を見ていると彼女との日々意を思い出しただろう、結婚しようなんて、僕も言ったよ」

「僕の考えることは他の世界でも一緒なのかよ」

「まぁ行ってこい」

「うん」

60歳の僕は僕の肩を叩き、笑って送り出した。


18.

朝学校に休む旨の電話をし、記憶の通り彼女の家に向かった。

インターホンを鳴らすと、彼女の母親が出てきた。

彼女と話したいと言うと、家の中ならと言いあっさり入れてくれた。

彼女に7年ぶりくらいに会うと、彼女は泣いて抱きついて来た。

彼女は僕にこの家から出たいと言った。

「私7年もずっとこの家にいるの、でも私一人じゃどうすればいいかわからなくて、住む場所もないし」

「じゃあ僕の家に来なよ」

「うん」

「お母さんに話してくるね」

「多分意味ないよ」

「大丈夫」

そう言って彼女の母の元へいった。

彼女の母に彼女を引き取ることを話すと、母は発狂した。

彼女が話に入るとさらにヒートアップした。

「あなたの為に私はずっと生きて来たのに、あなたはそれを仇で返すの?」

そう言って家中を荒らし始めた。

とうとう幼馴染のことを殴り始めたため、僕は警察を呼んだ。

母親は現行犯の傷害罪で捕まった。

彼女は泣きながら

「これで自由に生きれる」

そう言った。

ドラマのワンシーンみたいだ。


18.

僕はこれで一応彼女を救ったと言うことになったのだろうか。

一連のことが終わり、彼に感謝しに行こうと、夢に行った。

いや、これは平行世界の夢じゃない。

ただの夢だ。

僕は並行世界の夢を見ることはなくなった。

今までの夢は彼女を助ける為にあったのだろうか。


19.

幼馴染の母親から逃げて半年後、僕たちは付き合った。

その5年後に結婚をした。

今は4歳の娘も居て、穏やかに暮らしている。

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