第1話 開かずの扉のその先は - 6

 だが、駄作はゆっくりと立ちあがった。確かに重力に支配されているらしいが、それでも完全には動きを止められていない。


「どうするか」


 近づこうにも近づいたら駄作に捕まる可能性がある。


「霧山っちどいて」


 久我は先程駄作が折ったその木を片手で軽々しく持った。その巨木だが、重力を軽くできる久我の前ではもはや割りばし程度の重さしかないのだろう。


 それを久我はポイっと投げた。その木はふわふわと空をただよい、駄作の上で急激に落ちていった。


「どう? 重力を重くしてみました。かっこいいでしょ」


 久我は俺にどや顔でそう告げる。その木は駄作の身体を貫通させながら、地面に刺さった。


「羨ましいよ。その能力」


 終わった。そう思った。だが、そうではなかったらしい。駄作は体に穴が開いたことなど気にも留めないかのように立ち上がった。粘土のような体の一部がぶちぶちとちぎれていたが、それは駄作にとって取るに足らないことらしい。


  刹那俺の身体が重くなった。


「5分すぎちゃった」


 久我がベロを出した。久我のサイ能は5分間効力がある。逆に言えば5分経った今、能力はリセットされたのだ。だが、再度久我はサイコロを振れる。先ほどよりも良い目を願う。さすれば、さらに有利になる。


 だが、出た目は3と4の計7の目であった。


「あちゃー」


 久我が残念そうな顔をした。

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