第1話 開かずの扉のその先は - 5

  久我が灰色のサイコロを2つ、地面に落とした。その出目は2と3の計5の目であった。


「はい、霧山っち、タッチ」


 久我は俺に手を出してきて、それに俺は振れる。


「こいつをこの学校から出すわけにはいかない」


「同意」


 駄作はベタベタとこちらに歩いてきた。そして、急に走ってきた。


「この扉の前から離れずに戦おう」


 草木も眠る深夜1時。灯りはなく、この開かずの扉から漏れる光から離れてしまえば、この駄作に勝てるわけはない。


 俺と久我は駄作のただただ愚鈍な突進を身をひるがえして躱す。駄作の突進は俺達の後ろにあった巨木にあたり、その木をへし折った。幹50cmはありそうなそれを悠々とへし折ったその頭突きが体に当たると、骨などひとたまりもないだろう。


「頭が良くなさそうだからさ、不意を突こう」


 久我のその発言に俺は頷く。愚鈍だが駄作の力は本物だ。だが俺と久我は、この化け物じみた駄作の速度についていけている。


 駄作が2つある顔の合計4つの目ででこちらを見る。ビー玉のようなその目で、俺達を見る。


「そんな目で見ても駄目だよ」


 駄作は動かない。いや、動けないのだろう。久我のサイ能は重力の操作だ。久我が触った物体の重力を自由に操作できるようになるという能力だ。それで久我は俺と自身の重力を軽くし、逆に駄作の身体を重くしたのだ。

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