後半
「散歩に行きましょう。」
私は首にリードをつけられ、河川敷を散歩している。もちろんそれを握っているのはAIである。
ーーヒトは”創造力”は十分にあったが、”想像力”が足りなかったーー
仕事が無くなったヒトたちは、最初こそ危機感があったものの、働かずにお金を手に入れられる生活に堕落しきっていた。
このままではAIに支配されると感じた一部のヒトは、この状況を打破すべく反乱を企てた。AIの背中には非常停止ボタンがついていたが、全世界でそれをやるのは現実的に不可能に等しかった。そのため残された作戦としては、一番最初にAIを創造した博士の研究所にある『一斉停止ボタン』を押すことだった。彼らに悟られずにこれ実行するのは困難を極めたが、なんとか研究室に入り、ボタンを押すことができた。
しかしAIは全く停まることがなかった。AIはこの事態を予測し、既にボタンを無効化していたのだ。その賢さは、やはりヒトを上回っていた。絶望した彼らは、実力行使に出たが、もちろん敵うはずもなかった。AIはヒトよりも丈夫にできていたのだから。その屈強さに負けを認め、AIのペットとなる他なかった。
「ほら、取っておいで!」
私は河川敷を駆けていく。
その時、急に穴が現れ、私はそこに堕ちていく。
目が覚めて夢だと気づく。額には冷や汗が浮かんでいた。
悪い夢を見た私は、まどろみの中カーテンの隙間からゆらゆらと揺れる朝日を受けて、今の気分とは不釣り合いな眩しさに嫌悪感を感じた。
再び眠りに着こうとする私の耳に聴き慣れた声が届く。
「起きてください。朝ですよ。」
【寝覚め】 空川陽樹 @haruki_sorakawa
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