第15話 ルーベルトのばかっ!

今日も今日とてもルーベルトは民のために執務に勤しむ。

例え民に嫌われるような言動をして誤解をされても、それが正しいと信じたことを曲げないルーベルトは頑固者だ。

僕のことをぽやぽやしてるなんて言うルーベルトはカッチカチで固まっている。

偽りの仮面で隠したルーベルトの心は誰にも分からない。

ルーベルトの中にいる僕にすらわからない。

それが悲しくてひどくもどかしい。

そして、そんなルーベルトをぼくはまもりたい。

僕如きが何を言っているんだと言われそうだけれど、僕はルーベルトを大切に思っている。

この感情は誰にも負けない。

とはいえ、ルーベルトに敵が多いのは確かだ。

僕がどうしようもないところでルーベルトに何かが起こるかもしれない。

なんてったって、悪逆貴族のルーベルト・トランドラッド様だもんね!


でも、もしかしたら僕が消えることがあってルーベルトを守ることができないかもしれない。

だから、僕の代わりにルーベルトをまもるひとが必要だと思う。

『何を言っているんだ。そんなものは必要ない』

「あるの!」

そう問答して僕はルーファスの元へ向かった。

ノックをしてルーファスの部屋を訪ねる。

中から了承の言葉を聞くとそっと扉を開けた。

「ルーベルトお義兄様!」

ルーファスは自習中のようで、分厚い本を読んでいた。

嬉しそうに駆け寄って来るルーファスは可愛い。

頭を撫でて、目を合わせてしっかりと尋ねる。

「ねえ、ルーファス。もしも僕…ルーベルトが人として駄目なことをしたら馬鹿って言って止めてくれないかい?引っ叩いてもいい。お願い出来るかい?」

僕のお願いにルーファスが目をぱちくりさせた。

「どうしたんですか?お義兄様。素晴らしいお義兄様が人として駄目なことなんてなさるはずがありません」

ルーファスの純粋な目で見返されて、背後には幻の後光まで見えてきて、やっぱり僕がルーベルトを護らなきゃって思えてきた。

「ごめん、今のは忘れて。勉強頑張ってね」

「はい!ルーベルトお義兄様の義弟として恥ずかしくないよう精進致します!」

もう一度だけ頭を撫でるとはにかむかわいいルーファス。

僕の数少ない……ううん、サシャ嬢も素敵だし料理長の作るお菓子も美味しいし好きなものは多いな、やっぱり。

その中でも一等大切な僕の半身。


ルーベルトと話すために二人きりになれる自室へと戻る。

もちろん人払いはしてね。

そうするとすぐにルーベルトから文句が出てくる。

『貴様に護られる程、落ちぶれてはいない。そもそも貴様が勝手に私の体を使っているんだろう?出ていく手掛かりを探した方が有意義だ』

「ルーベルトの馬鹿!僕はルーベルトを心配して言っているのに!」

ぷんすかして今日の分の執務を続ける。

ルーベルトが言ったことをそのまま代わりにやるだけなんだけどね。

それでもミスをしてルーベルトを悪く言われたくはなくて一生懸命に取り組む。

『私に馬鹿だなんだと言う者はお前と……エイリッヒくらいなものだ』

……ルーベルトのばか。

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