第14話 必要悪って本当に必要?
夜、ベッドに寝転がりごろごろするとすぐにルーベルトから公爵としての威厳がとかって文句がくる。
ルーベルトは真面目だ。
ルーベルトは自分をすぐ悪い人のように言うけれど、本当はそうじゃないって僕は知っている。
なのになんでルーベルトは自分を悪く言うのか、人に悪く思わせるのか。
まだ幼いルーベルトがそうしてなんになるのか、あまりよろしくない僕の頭ではルーベルトの考えが分からない。
「なんでさ、ルーベルト」
だから直接本人に聞くとルーベルトは溜め息を吐いて答えてくれた。
『そもそも私はルーベルト・トランドラッドは民にとっての必要悪だと考えている』
「必要悪」
僕が目をぱちくりさせてルーベルトに聞き返す。
『民が一丸となって憎む相手、それが私だ』
「なんでさ。なんで民に尽くしているのに憎まれなきゃいけないのさ」
『憎む相手がいた方が救われる者もいるということだ』
それは、確かに、そういう時もあるかもしれないけれど。
でも、それはルーベルトがやるべきことなのかな?
「ルーベルトって案外馬鹿だよね」
『なんだと?』
ごろり、と転がってルーベルトを想う。
「必要悪って本当に必要?」
『必要だ』
それは迷いのない言葉だった。
「ふぅん。僕はそうは思わないけどな。第一、ルーベルトがこんなに民に尽くしているのになんで嫌われるのさ」
『目先のことしか考えられない者も多いからな。学舎や医院の設立の意味が分からない者もいるし、なによりルーベルトの悪い噂を私が流している』
「なんでさ!」
思わずがばりと布団から上半身を出した。
『言っただろう?必要悪にルーベルト・トランドラッドが必要なんだ。今でこそそれなりの領地だが、亡き父が人が良くて騙されたりして負債を抱えたり流行り病も作物が不作の年もあった。民の不満は溜まった。悪意の向き先が必要だった』
「だからって、ルーベルトが悪役になる必要なんてないじゃないか!」
僕は憤慨した。
『これも公爵として民の上に立つ者の役目だ』
ルーベルトは淡々と言う。
本当にそう思っているんだろう。
僕はそう思わないけれど、ルーベルトは頑固だから。
「決めた!僕がルーベルトを良い人だとみんなに知ってもらう!」
えいえいおー!と拳を握り上げると、ルーベルトからまたも怒られた。
『やめろ、馬鹿者。人の長年の苦労をなんだと思っている』
でも僕は諦めきれない。
「でもさ、ルーベルト」
『……知って心配してくれる者が一人でもいる。それだけで充分だ』
「それって」
『さて、そろそろ寝ないといい加減明日の執務に支障が出る。さっさと寝ろ』
「まったく。ルーベルトは素直じゃないなぁ」
なんて言いながら満更でもない気持ちで僕は健やかに寝て翌日寝坊した。
ルーベルトにはもちろん怒られたさ!
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