19話 

 交渉の末に彩は魔力を解放した。


 後は、薫の方をどうにかすれば…


「戻るぞ!」


 狐様がものすごい形相で怒鳴った。


「何かあったのか?」


「例の主人公がお前の仲間を襲おうとしているのじゃ。捕まれ!飛ぶぞ!」


 急いで彩の手を引いて狐様の手を取った。


<変位>


 世界が廻る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「くっ」


 翠は正直油断していた。相手の魔力の量が大幅に落ちている時点で勝ったことを確信したからだ。


「ふふふ」


 目の前にいるこいつはヤバい。目に映るハイライトが痛いほど眩しい。まるで、こいつ一人が世界の中心だと言うような偶然ご都合主義


 はっきり言って今の戦力じゃ勝てる気がしない。このオーラだけで、自分達は倒れそうなのに、こっちがいくら攻撃しても躱されてしまう。


「ねぇ、それで終わり?」


 目の前の化け物の雰囲気が変わる。本物の殺気だ。


 女が手を横に振ろうたときに


「間に合ったようじゃな。」


 目の前に妖艶な狐耳の生えた女と赤城がいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

不知火恋視点


 …………………

 

 私は目の前の光景に目を疑った。なにも知らないはずの赤城湊が自分の目の前に居たのだから。


「湊、何であなたがそこに居るの?」


「君を止めるためさ。」


「私の彼氏でしょ、私の味方になってよ。」


「死んでも嫌だね。」


 なんて可愛そうな私。信頼していた彼氏に裏切られるなんて


「本当に良いの?私君と別れたくなっちゃうかもよ。」


 こう言えば私を愛してるこいつはイチコロのはず。


「それでもいいよ、浮気ゲス女。」


 ひどい、彼女に対してそんなことを言うなんて。


「私、浮気なんてしてないよ。」


 私は浮気なんかしていない。


「例の踏み台から彼氏を奪っておきながら?」


 私は唖然とした。あの場面を感知していた人には全員洗脳したはず。


 それに、あれはあの踏み台親友の彼氏が私を求めてだけだし。私は二人の男を愛しただけで浮気はしていない。


「なんでそんなひどいことを言うの。親友のことを踏み台って言わないで。」


 こんなときは話をすり替えるに限る。


 しかし、この返答は悪手だった。


「へぇ、名前は言ってないのにどうして親友だと思ったのかな?」


 嵌められた!許さない。彼氏に被害者面されるなんて私はなんて可愛そうなの。


「死んじゃえ。」


 そんな屑彼氏死んじゃえよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る