第9話 夏休み 心頭滅却しても 熱いものは熱い(3)

村上海賊船から放出されたハイパーサーチライト砲により、妖獣タカマガツチの巨体がゆらいだ。黒煙があがり妖獣が咆哮する。操る快川紹喜かいせんじょうきは一瞬怯んだが、残念ながら、やはり火力の差は明らかなようだ。


「急ごしらえながらもやりよるな、だがこの紅蓮の炎には勝てまいて」


妖獣タカマガツチの口から火焔が渦巻き放出された。村上海賊船は危うく避けたものの、船尾に被弾してしまった。

「もはやこれまでか」

炎に包まれ、村上海賊船は地上に退却していった。


斎藤義龍さいとうよしたつは、高知城に駆け込み、座禅を組む。雑念を捨て、戦国時代に見てきた世界のこと等を思った。初陣の日のこと。父上殿や兄弟、妹など、様々な出来事が思い出された。


修羅之樹学園に図らずも転校してきた日々。村上海賊衆との旅行もまた新鮮で楽しいものであった。


座禅する中で見えてきた活路。それは、多次元宇宙まるちばあすで漂ううちに体得した術を使うこと。


高知城に言術ツクモガミを張り巡らし城を操ることであった。


「高度な言術は体の負担も大きい。この世の見納めかもしれぬが、なに、これもまた武将転校生もののふの道というものよ」


座禅から立ち上がり、言術を唱える。

魔法陣の如き文字列が周囲を包み、城がグラグラと揺れ始めた。


もうもうと立ち込める煙が晴れると、高知城を鎧とし身にまとった、巨大な斎藤義龍が、仁王立ちしているではないか。

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