第9話

おっ、ゲートが閉じてる。

誰かが引っ張ったか?

う〜ん、周りに居るのはダンジョン民ばっかりだ。

ハンターか?

近くのヤツに聞く。


「いや、なんか出たらしい。」


ん?


「ちょうど入ろうとしたら、ハンターが飛び出して来て事務所に飛び込んだんで、

様子見してたらゲート閉鎖や。」


はあ、めんどうやな。

すること無いのでゲート前でたむろする。


職員が来て説明をはじめた。

「特定洞窟調査士補助員の皆さん、只今特定洞窟1207号内にて、

強変異性侵略的外来種の特異体が発見されたと報告がありました。」

「管理ゲートは安全が確認されるまで封鎖されます。」

「皆さんは宿舎で待機して下さい。」

「もう一度繰り返します、………。」


しゃあないので、ダラダラと宿舎まで引き上げる。



***



「オニババがでたらしいですよ!」


食堂で晩飯喰ってダベってたらニートがやって来た。


「ハンターか?」


「10階でフェイクコアに引っかかったそうですよ。」


「10階?ベテラン連中が?」


「いえ、ナガレモノの一人だそうで。」


「はっ!またかよ。」


「ええ、またです。」


「ええ加減にしてくれや。

はああ、あ、で、どないなった?」


「ベテラン勢が追い回して、下へ押し込んだそうです。

明日一日様子見してってことらしいですよ。」



この世にレベルは存在するのか?

ダンジョンには有る。

もちろんレベルアップも有る。

ダンジョンで活動していくうちに器が出来ていく。

そして、モンスターを倒すとナニかが器を満たしていく。

満杯になると器は消え、別の器が出来始める。

新しい器が出来るたびに何かが変わっていく。


ダンジョン民はレベル0だ。

浅層3階しか潜らない俺たちの器は小さい、

お猪口をひっくり返したぐらいの容量だ。

そしてモンスターからは逃げ回る、器が満ちることは無い。


ハンターはレベル1になってはじめてハンターと認められる。

より深く、自分が潜れるだけ潜って器を大きくしていく。

より強いモンスターをより多く倒して器を満たしていく。


フェイクコアと呼ばれるトラップが有る。

ある日、ダンジョンの中に見慣れない通路が生まれる。

その先には扉が有り、その中にはぼんやりと光る球が浮かんでいる。

ダンジョンコアにそっくりと言われているが、ダンジョンコアそのものを

見た事有るハンターはほんの一握りだ。

その球を砕けば一瞬で器が満ちる。

ただし、器が小さければナニかが溢れ、砕け散る。

そうなったら終わりだ。

オニババ(♂)に生まれ変わる。


ハンターに言わせれば、オニババはたいした相手では無い。

人間ぐらいの力、人間ぐらいの速さで、闘えば負ける事は無いらしい。

やっかいなのは多少の知性が残っている事、道具を使う事、すぐに逃げる事、

死ににくい事、人喰いになってる事、外にでたがる事だ。


ダンジョン民からしたら恐ろしいモンスターで有る。

半病人、アル中、おいぼれ、引きこもり、足枷つき。

大体こんなもんだ。

対抗手段が無い。

天敵?

どうにもならん相手だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る