第8話

うおお、足首と膝と股関節がギシギシする!

でも筋肉痛がまだ来てないのは救いか。


ニートが昨日の荷物を持ってきくれたので杖と痛み止め頼んだ。

穂先の折れた手槍と痛みのトブ薬を調達してくれた。

折槍にすがりながら、フワフワしたアタマでゲートを潜る。

喫煙所のベンチに座り込む。

いつの間にかアル中爺が隣に座っていた。


「行かんのか?」


「今日は酒有るから行かん。」


「そうか。」


「呑むか?」


「いらん。」

クスリまわってるからどうなるかわからん。


痛みは無いが、意識がトブ。

アル中爺がゴウサツに変わっていた。

スポーツ飲料をくれたので飲んだ。


「あんがと。」


「ん。」


とうなずいてダンジョンに潜って行った。




フワフワしているうちに夕方だ。

ハンターが戻りだしたので場所を空ける。

ボケェーと見てると、様子がおかしい。

古参と見慣れないヤツラが睨み合っている。

ああ、アレがナガレモノか。

なんか身形が薄汚い。

ハンターというよりダンジョン民だ。


「ういっす、ナンスかアレ?」

ニートが上がってきた。


「オツカレ、古参とナガレモノ。」


「ああ、アイツラが。」


「四国からナガレて来たんだとよ。」


「四国っすかぁ、あそこは特殊ですからねぇー。」


………。




ダンジョンハザードが起こった時、四国はほぼ無傷だった。

都市部に数カ所のダンジョンが出来ただけだったので警察や近隣の自衛隊で充分対処出来た。

結果的に混乱期脱出の重要な拠点となった。

一時は臨時政府を、と言われたぐらいだ。

そのせいで四国は良くも悪くも発言力を持った。

特にダンジョン施策は半自治といってもいい状態だった。

ダンジョンハザードの混乱を乗り越えた時、ダンジョンが無い、資源が手に入ら無いと騒ぎ出した。

資源を目当てにダンジョンが発生する状況を作った。

目論見どおりダンジョンが生まれた。

ただし大した資源が採れない下級ダンジョンだった。

数撃ちゃ当たるとばかりにダンジョンを量産した。

作っちゃ潰しを繰り返した。

すぐ潰すんだからとダンジョン民をまともに配置しなかった。

特定洞窟管理協会から勧告、要請を突っぱねた。

なんなら四国ハンターズギルドをぶち上げた。

これは立ち消えになった。

結局、10ヶ所ほどのダンジョンに落ち着いた。

四国ダンジョンはダンジョン民を配置をウヤムヤにした。

他の地方から大量の避難民が流れ込み、優遇措置?が必要なダンジョン民を配置せずとも、充分な数のハンターが確保出来たからだ。

しばらくの間うまく行った。

だが、他の地方が復興するに連れて避難民は帰って行った。

当然ハンターも減った。

ダンジョンを維持出来なくなった。

今では3ヶ所だ。

実力の有るハンターは残った。

先の見えるヤツはハンターをやめて

地元に戻った。

どうしようもない底辺ハンターがあぶれた。




「ま、こうなるわな………。」


古参に袋叩きにされたナガレモノたち

がダンジョンの中に引き摺られて行く。

もう出てくることは無いだろう。

最弱者として保護されているダンジョン民とは異なり、底辺とはいえハンターだ、当然ハンターの掟が適用される。

政府ですら、ダンジョン内ではハンターの掟を尊重しているのだ。


「実力無いんなら、ダンジョン民になればいいものを………。」



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