第7話

「はっはっふぅ、くそ!ついてない!」


駆け足、いや、早足で逃げる。

小鬼が三匹、体を引きずるようにしてついて来る。

ハンター達が潜る時、モンスター達を掃除して行く。

当然、漏れがある、ランダム湧きもある。

運のないダンジョン民が出くわす。

今日は俺だ。


「はっ、小鬼、3、は、は、小鬼3」


抜け道から出て来たニートに叫ぶ。


「代わるかあ?」


「まだいける、は、はっ。」


「おう、北にゴウサツがいたぞ。」


と言ってニートは抜け道に戻って行く。

2人いれば倒せるが必ず怪我をする。

怪我をすれば1週間、悪ければ一月動けない。

動けなくてもダンジョンに入らなきゃいけない。

もちろんゲート付近で座り込む事になる。

だから、運の無いヤツは回廊でモンスターを引っぱる決まりだ。




ダンジョン民は浅層3階層しか潜らない。

理由は単純に3階層のモンスターしか対処出来ないからだ。

バカネズミ、アメーバ、小鬼の3種である。

ハンターならば万が一でもやられることはない。

ダンジョン民でも一対一ならなんとか勝てる。

とはいえ、戦ったところでドロップ品は10円だ。

逃げるが勝ちである。

ありがたいことに3種とも足が遅い。

俺みたいなポンコツや、足枷付き囚人でも捕まる事はない。

ハンターのおこぼれを這いつくばって拾えば、3千円になる。

マジメに周れば7千円ぐらいになる。

宿舎は晩飯付きでタダだ。

飢え死も凍え死ぬこともない。

ダンジョン民ならあとは、酒かクスリがあれば生きていける。


ヤツラのドロップ品もエネルギー資源に変換出来るが、コスパが全く合わない。

高品位ドロップ品も底辺ドロップ品も同じコストがかかる。

全ドロップ品の約1割が高品位ドロップ品である。

一部のアイテムを除きエネルギーにまわされる。

約3割の中位ドロップ品は素材にまわされ、5割の低位ドロップ品は食料と飼料に加工される。

残り1割底辺ドロップ品は燃やされる。

そう、ダンジョン民は社会に貢献していない。


最初にダンジョンの外に出るモンスターは浅層の3種である。

浅層からこの3種が出ていくと中層から別のモンスターがあがってくる。

そしてダンジョンから出て行く。

浅層3種は人を見つけると追い続ける。

追いかけている間は外に出ようとしない。

出口まで引っ張って行くと管理ゲートは封鎖されて雪隠詰めだ。

だからダンジョン内をグルグル走る。

ハンター達が深層から戻ってくるまで走り続ける。

ダンジョン民の仕事は逃げ続けることである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る