第20話「大天使サリエル」

ビュ~~~~~~ッ……


 風に吹かれ、何処からともなく集まってきた灰色の雲が空を覆い隠す。まだ夕暮れ時だが、辺りはすっかり薄暗い。雲は不気味に渦を巻き始める。


ゴロゴロ……


 雷鳴が轟き、雨がポツリポツリと降り始める。


「……い、一体何が起こっているんだ!?」


 まだ戦地に残っている勇敢なロパンド陣営の一人が呟く。


パラパラパラパラッ……


 次第に、雨足が強まる。


ゴロゴロゴロゴロッ……


 雷鳴も徐々に大きくなってきた。魔族兵たちも空を見上げ、落ち着かない様子である。

 すると、突然……、


ガラァ~~~~ンッ!!


 天から一筋の雷光が地上に落ちる。そして、その雷光によって割れた雲の隙間から眩い光が差し、“それ”はゆっくりと舞い降りてくる。


(大天使サリエルぅ??)


 反転の影響かどうかは分からないが、見てくれは自分たちが想像するような天使ではない。例えるなら、超絶気品に満ち溢れた悪魔だ……。


 スタイリッシュなタキシードに、黒シャツと深紅の蝶ネクタイ。背中には、カラスのような色の羽が生え、ガースーの如く黒光る天使の輪が、頭の上を廻っている。


 その一挙手一投足に誰もが注目している中、大天使サリエルは遂にその口を開く。


「アハハハハッ、この世界に降り立つのも随分と久しぶりですねぇ。あっ、初めまして、“セバスさん”。サリエルと申します。」


「あ、どうも、ご丁寧に……。」


「フフッ、あのぉ、そんなに心配なさらずとも結構ですよー。“神気しんき”を持つ者は、その存在自体が反転する訳ではありませんから。ただ、貴方同様、ボクの魔法は反転してしまいますけどねっ♪」


 どうやら、こちらの心配などはお見通しのようだ。


「おい、貴様、何者だぁ!?」


 ウホウホ君が話に割って入ってくる。


「どうも、大天使をやらせてもらってます、サリエルです。貴方は?」


「我が名は十対の悪魔王が一人、第七悪魔王ダムド様だぁ!!」


「へぇ~、そうですかぁ。」


 サリエル様はニヤリと笑う。


「では、貴方が“セバスさん”をこんな目に?」


「フハハハハっ、そうだ!死神程度、俺の相手ではないわ!」


 あのウホウホ君が、少しずつ小物に見えてくる。


「そうですか、そうですか。それはいけませんねぇ。ボクを地上に呼び寄せることが出来る大切な召喚主ですから。貴方には、きっちりと罪を償って頂かないと……。」


「天使風情が調子に乗ってるんじゃねぇ。お前如きが、俺様に対して何が出来るってんだ?」


 サリエル様は不敵な笑みを浮かべ、クイッ、クイッと、無言でウホウホ君を手招く。


「ナメてんじゃねぇ!!ウォりゃぁ~~~~っ!!」


 ウホウホ君は、邪気をまとった渾身の右ストレートを振るう。


『…………!?』


 しかし、サリエル様は人差し指一本で、それを難なく止める。


「あれれぇ?ハエでも止まりましたかね??」


 ウホウホ君には、完全に死亡フラグが立っている。


「……あっ、そうそう。ボクの先輩の天使にね、魔を照らす神、自称サタンさんって方がいるんですけど。一応、魔族さんたちの間でも、有名なんでしょう??」


「サ、サタン様ぁ!?あの伝説の魔照大御神と云われる??」


 ウホウホ君の顔色が急激に悪化する。


「そうです、そうです。でも、実はあの方、単に厨二病を拗らせて、悪魔のコスプレをしているだけの天使ですからね?まぁ、今はちょっと“訳”あって、そのルシフェルさんは、神界のお仕置き部屋で謹慎中の身ではあるんですけど……。」


「そ、そんなの、信じられるかぁ。あのサタン様が天使だったなんて……。」


「本当の話ですよ~。まぁ、要するに何が云いたいかといいますとね、自称サタンさんは、貴方たちのような子悪党とは全く別次元の存在で、ボクも、自称第七悪魔王さんとは別次元の存在ということです。」


「ヒ、ヒェッ!」


 ウホウホ君は、とても第七悪魔王とは思えないような情けのない声を発する。


「まぁ、もういいでしょう。少し無駄話が過ぎましたか。貴方ぁ、そろそろ、閻王様のもとへ参じなさい!」


 サリエル様の目つきが急に鋭く変わり、ウホウホ君に向けて左手を翳す。


「……大天使の癒しヒール。」



ズグゥオぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!!!



 それは、途轍もない音とエネルギー量の怪奇光線ヒール。ウホウホ君の断末魔の叫びなど聞こえない。恐らく、叫ぶ間もなく絶命したのだろう。身の毛がよだつような黒紫の閃光を眺めながら、自分の意識は途切れる。そう、例の頭痛と共に……。


ブッ、ブーッ♪






※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


遂に、サリエルさんが登場しました!

私の推しキャラでもあります。

この大天使様、相当ぶっ飛んでいますので、

今後も注目していただければと思います。


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