第8話 「春は忙しい!」


「なんだいこの番組は」


 真っ黒な画面のテレビを見て、照が呟いた。俺様は、天井にぶら下がる照明の紐を引いた。居間がぱっと明るくなる。不可解な表情の照とは違い、ニエとジョージさんは満足げな顔をつくる。ちゃぶ台の上に、独創的な見た目のスイーツと、炭酸飲料の缶が並ぶ。スイーツはジョージさんの差し入れだ。かなり評判のお菓子屋で買ってきてくれたのだ。

 五月もそろそろ終わりを迎え、気温が徐々に上がる。缶の表面に、水滴が浮かぶ。夏の気配を感じる。俺様は名前と反して、寒い冬よりも熱い夏が断然好きだ。


「照! 聞いて驚け! 第2293回の作戦会議の結論・ハルにアピールするための密着風番組を撮ろう、を実現したんだ」

「僕、その会議出てないけど」

「俺様の脳内で開かれた会議だ! 参加者、俺様! 書記、俺様! 結論、俺様!」

「また脳内会議かい!? というかこないだ1081回ぐらいじゃなかったっけ。どれだけ進んだの」


 撮影は滞りなく終了した。ジョージさんがすぐに映像を編集し、撮り終えた次の日、つまり今日には番組が完成した。完成を記念し、陽炎荘に集合して、みんなで番組を鑑賞したのだ。各々が、俺様の合図で缶を開けた。


「では、完成のお祝いだ! かんぱーい!」

「カンパーイ! お疲れ様でしたヨー!」

「乾杯!」

「……うーん、とりあえず乾杯」


 カンと高い音が鳴る。冷たい炭酸飲料が喉を通る。缶をちゃぶ台に置き、フォークを手にし、スイーツを一口分掬う。水色とピンクのクリームが特徴的だ。ジョージさんが口を開く。


「今回の撮影で、カメラを何台かダメにしましたね。最高強度のカメラを用意したんですが、冬斗さんの美しさに耐えられなかったみたいです」

「カメラがダメになる度、もっと重いカメラに変えられて、持つのがタイヘンだったヨ」


 ハルへ強力にアピールできる映像にしようと思い、俺様は美しさを気持ち多めに放出してしまった。その結果、カメラを破壊し、撮影時に近くにいたひとびとをノックアウトさせてしまった。宇宙一美しい俺様として、強度や距離、方向、種類、色、においなど美しさを自由自在に制御できるようになるのが、今後の課題だ。


「あれ。ニエがカメラ担当だったんだ」

「そうだヨ。カメラとツッコミ担当だヨ」

「俺様はツッコミを任せたつもりはないぞ」

「だからところどころ、ニエの声が入ってるんだね」


 納得した、と照は頷いた。撮影中、ニエが茶々を入れまくるので大変だった。


「わたし、編集でだいぶ消したんですけどね。ちょっと残ってましたね」

「この方が、俺様の自然な日常って感じで良いと思います」

「自然、かなあ……? ああ、だから昨日なんか大学がちょっと騒がしかったのか……あれ、昨日?」

「そうだヨ。昨日、撮ったんだヨ」

「で、冬斗の番組がもう完成してるってことは……」

「マネージャーのわたしが、徹夜ぶっ通しで完成させました」


 口角を上げ、ジョージさんが胸を張って答える。彼は濃い色のサングラスをいつでも着用し、両こめかみにテープを貼る。テープがまぶたを引っ張り、完全にまぶたが落ちないように支えている。なぜなら彼は、


「わたし、ギリギリの限界を攻めるのが大好きですから。眠気・体力・締め切りに勝つか負けるかのギリギリの状況。プレッシャーを感じながら、やり切ったときの爽快感。完全合法で得られる解放感」

「不思議な価値観、作るぜ印鑑、片づけるぜこの空き缶! イエア!」

「冬斗ったら、またラップしてるよ……」

「名づけテ、ポンコツラップだナ」

「ギリギリはたまりません。冬斗さん、もっとギリギリの綱渡りをできるような仕事を振ってくれていいんですよ」


 ジョージさんはギリギリが大好きなのだ。自分の全力で挑み、成功するか失敗するか、ギリギリの緊張感がたまらないのだ、と以前語っていた。ギリギリに打ち勝って、成功したときの快感がたまらなく好きなのだ。

 今だって、締め切りにギリギリ間に合わせた充足感で、ジョージさんはニヤけている。ゆっくり完成させてくださいね、と俺様はお願いした。けれども、ジョージさんが勝手に、間に合うか間に合わないかギリギリのところを締め切りとして設定したのだ。


「ねえ、冬斗。この番組って本当に放送するのかい?」

「いや。ハルひとりだけに見せるつもりだ」

「視聴者プレゼントとか、テロップとか、みんなハルちゃんに向けてなんだね」

「新手の拷問だロ」

「愛はときに痛みを伴うのさ」

「冬斗が積極的に痛みを与えてるじゃないか」


 番組を見せたら、ハルはどんな反応をするだろう。美しい妄想が開始された。ハルは喜び、きらきらとした瞳を俺様に向け、こう告げるのだ。――まあ! 泉美さんってこんなに美しくて努力家で素敵で美しいひとなんですね! 今すぐ結婚しましょう! ムーンにハネムーンしましょう! 飛んでけビューン!――、美しく完璧な展開に、顔がほころぶ。


「きっとハルからの好感度がすごく上がるに違いない! だから、ハルに見せてもいいよな? な?」


 三人に同意を求めた。ちゃぶ台に肘をつき、ニエと照は首を振った。


「やめた方が良いと思うなあ」

「ニエちゃんも同ジ。ジョージさんはドウ?」

「わたしは見せるべきだと思います」


 ふたりの意見とは異なり、ジョージさんだけが俺様の背中を押してくれた。流石、俺様のマネージャー。俺様の気持ちをわかってくれる唯一の味方なのだ。


「好感度が上がるか、下がるか、予想できない。ギリギリを責めたいじゃないですか」


 フフフと怪しく笑い、ジョージさんは指で眼鏡を押し上げた。


「ジョージさん……味方かどうか微妙なラインですね……」

「わたしはギリギリ冬斗さんの味方ですよ」

「余裕をもって味方になってくださいよ!」


 空き缶や皿を片付け、ちゃぶ台を綺麗にした。ジョージさんは、仕事がある、と陽炎荘を後にした。シュカさんは買い出しに行ったままだ。途中で筋トレ仲間のところに寄って、話が盛り上がってるのかもしれない。

 俺様は本題を切り出した。

 

「では、記念すべき第3000回目の作戦会議を開始する」

「この数分の間で、すごく増えてるじゃないか」

「今日、君たちに集まってもらったのは、重要な相談があるからだ」

「相談って、さっきの映像をハルちゃんに見せるか見せないか、じゃないのかい?」

「本来はそうだったんだが。今朝、怖ろしいことが起こったんだ。身の毛もよだつような、心が凍るような、沸かすアリーナ」

「フウウウウウ! テンション上がるゼ!」


 手をでたらめに叩いて、ニエが場を盛り上げる。ARIGATO、変なTOMO! 俺様の美しい脳細胞が刺激され、また新曲が生まれそうだ。歌いだそうとした瞬間、照が、


「ラップをするな、言わずもがな、ニエも乗るな」


 と苦言を呈した。イエア!


「で、怖ろしいコトってナニ? ハルチャンに三十秒で百回振られたトカ? オー新記録!」

「それ、ハルちゃんにとって恐ろしいことだよね。一秒に約三回告白されてるじゃないか」


 すっと立ち上がり、俺様は照明の紐を引く。ろうそくをちゃぶ台に置き、火をつけた。小さな炎がゆらゆら揺れる。三人の顔が、自然と炎に引き寄せられた。炎によって、顔が淡く照らされた。

 これから話す内容を、ふたりに怖く感じてもらいたい。俺様は美しく小さな声で、ぽそりぽそりと話を始めた。


「俺様……今朝……見たのです……」

「冬斗、このローソクはなにかな?」

「この方が……怖い感じが……出るかと」

「イヤ、フツーに明るいシ。日の光が窓からガンガン差し込んでるシ」

「お昼前の明るいところで、ろうそくつけても意味がないと思うよ」

「で……、俺様、見たのです……怖ろしい光景を……」


 あれは今日の朝。俺様は自室で美しく目覚めた。太陽の光を浴びようと、カーテンを開けた。窓から外を見ると、ハルの姿があった。ハルは休日でも早起きだ。ハルはまず、陽炎荘の郵便受けから朝刊を取り出した。次に、自分の郵便受けを確認した。ハルがこちらに振り向くと、手に一通の手紙。ハルは手紙を見つめ、瞳を細めた。そっと胸に抱く。スキップしながら、陽炎荘に戻った。


「で……、そのあと……、俺様は日課の、プロポーズ練習を……しました。具体的には……」

「ピッ。早送り。ピッ! ビッ!」


 ニエはリモコンを握り、俺様に向けてボタンを連打する。


「キュ……ルル……ルルルル……」

「冬斗、早送り自体の再現はしなくていいよ」

「で、朝食……です……。シュカさんがハルに聞きました。”ハルさん、すごくご機嫌ですが。何か理由でも?”……って」

「フンフン」

「ハルは”嬉しいことがあったんです。詳しくは内緒です”って……はにかんだように……笑いました……可愛いですね……俺様は心の百眼レフを切りました……」

「百眼レフってなんだい」

「……数が多い方が……強そうだから……」

「ピッ、早送り。さっさと、結論を言エ! ピッ! ビビビッ!」


 せっかちなヤツだ。リクエストに応え、俺様は早送りした。


「ギャーーーーー!!……終わり……」

「ピッ! 戻して戻して! 肝心なところがわからないよ、進みすぎだよ!」

「可愛い表情で、ハルは……、こう続けました。”あ、シュカさん、私今日、お昼と夕ご飯大丈夫です”……」


 ろうそくは静かに燃え続ける。ここから話が怖ろしくなるのだ。照は真剣な表情で、ニエはリモコンをプラプラ揺らしながら、俺様の話を聞く。


「シュカさんは……返しました。”そうですか。どこかに出かけるんですか?”。ハルは……答えました……」


 唇を一文字に結び、俺様はたっぷりと間を取る。ニエがリモコンの早送りボタンに手をかけた瞬間、俺様はすっと息を吸った。


「”遊園地です”、って……ギャーーーーー!!! ああああああ!? ろうそくが消えたああああっ!!!」

「冬斗の大声で消えたんだってば! えーと、それが怖ろしい話かい?」 

「全然怖くないじゃン。単に、ハルチャンが遊園地に行くだけじゃんカ」

「だって、普段バイトばっかりなのに、遊園地なんて、もしかして……」


 脳内に恐怖映像が浮かぶ。朝食の席で見た、ハルのご機嫌な笑顔。もしかして、ハルは遊園地に……。おぞましい考えが、俺様の美しい心を埋める。俺様は頭を左右に振った。


「いや、ハルはバイトだ! 遊園地へはバイトで行っただけだ! はい、俺様の勘違い! 作戦会議おしまい!」


 部屋が暗いと、思考まで引きずられてしまう。俺様は居間の照明を点けた。両肩になにかが乗った。照とニエの手だ。照は目と口を閉じ、深く頷く。ニエは片方の口角を上げ、にやけた瞳で俺様を見つめる。


「フユト。かわいそうにナ~。ニエチャンが慰めてやるから、ラーメン食べ放題いこうヨ」

「えっ」

「ラーメンはニエが食べたいだけでしょ。冬斗、温泉でも行こうよ。傷ついた心を癒さないと」

「えっ、えっ……」


 ニエは肩から手を離し、代わりに俺様の肩に肘を乗せた。そして、俺様の顔を覗き込み、ちっちっちと喋った。


「フユトわかってないなア~。年頃のお嬢サンが手紙を受け取っテ、嬉しそうに遊園地に行っタ。導かれる答えハ……結論! ハルちゃんは遊園地デートに行っタ!」

「ぎゃああああ!!」


 先ほど振り払ったはずの映像がまた俺様を襲う。ハルは遊園地に向かい、コイビトと合流し、お化け屋敷やジェットコースターを楽しむ。最後は、遊園地で最も危険な乗り物に――、


「わあ、ろうそくが勝手についてるよ!」

「俺様の嫉妬の炎だ!!」


 炎が高く上がり、天井スレスレまで伸びた。照が急いで台所に駆けこんだ。水の入ったバケツを持ってきて、炎を消した。俺様は、ちゃぶ台のリモコンを手に取った。


「ピッ! ピッ!」

「どうしちゃったの冬斗! 怖いよ!!」

「もう手遅れだナ」

「ピッ! 巻き戻し! 時間を巻き戻し! ハルとどこぞのダレカが出会う前まで戻ろう! ピィィィィィ!」 


 一心不乱になって、四方八方に向かってリモコンを連打する。


「フッ。恋愛レベルがポンコツベイベーなフユトには結論を導くのが難しかったカナ」

「うっうっ、嘘だ。嘘だと言ってくれ、ハル……」


 座布団に寝転んで丸くなる。美しい涙が止まらない。俺様はどうすればいい。ハルとコイビトが、一番危ない乗り物の頂上にたどり着いてしまったら……。俺様は決心した。


「よし、俺様も遊園地に行く!」

「ええっ? 行ってどうするのさ」

「説得して止める!」

「番組の中で、相手の自由を尊重しますって言ってたじゃないか!」

「勘違いするな、照。俺様が止める相手は、観覧車だ」

「誰がこの流れで、ハルちゃんじゃなくて観覧車を止めると思うんだい」


 観覧車は遊園地で最も恐ろしい乗り物だ。頂上では、特にコイビト同士に対して、魔法がかかる。ハルとコイビトが観覧車に乗る前に、作戦を完了させなければ。

 善は急げ、と陽炎荘を飛び出した。まず、最寄りの氷籠駅<<ひょうろうえき>>を目指す。遊園地への道中、作戦内容を話し合う。


「いいかお前ら、赤い糸焼却作戦、開始だ。俺様のことは大将と呼べ」

「ポンコツタイショー! ラーメンひとつだヨ!」

「知っての通り、観覧車は遊園地で一番危険な乗り物だ」

「そうかなあ……僕はそう思わないけど」


 休みだからか、大勢のヒトが電車を利用する。心なしか、ほとんどがコイビト同士のように思える。彼らは観覧車に導かれ、気が付けば遊園地を訪れ、観覧車の頂上で待ち構えている怪物に後押しされ、幸せな気持ちになるのだ。羨ましい。じゃなかった、怖ろしい。いや、やっぱり素直に羨ましい。


「デートの最後、ヒトビトはみな観覧車を目指す。ハルたちがたどり着く前に停止させなければ」

「係員さんもさすがに、観覧車を止めるのは拒否すると思うけどなあ」

「心配いらない。俺様が直接、観覧車さんを説得する」


 観覧車だって、ジェットコースターだって、メリーゴーランドだって、お化け屋敷だって、美しい心でお願いすれば、きっと気持ちは通じるんだ。そう、美しさが作る、遊園地の新たな姿。観覧車さんは半周だけ回るようにしよう。ジェットコースターさんを平らにしよう。メリーゴーランドさんの席を全部ひとり乗りに変えよう。お化け屋敷をモデルハウスに改造しよう。ふたりで家具を選ぼう。花を飾ろう。料理を作ろう。くだらないことで笑いあおう。


「……そして、ジンセイの最後、ふたりで観覧車に乗ろう……」

「妄想が一周してないかい?」

「観覧車だけにナ」


 頬を涙が伝う。そうだ。美しく素晴らしいジンセイのため、俺様は絶対に作戦を成功させなければならない。涙をぬぐい、頬を叩いて気合を入れた。家具のカタログを開いた。


「いやでも、家具はふたりで決めるべきだよな」

「そうダゾ。一緒に考えなサイ」

「一緒に……、ふふふ、二回目の共同作業。テンション上昇。フウ!」

「大将がこんな様子で、僕たち、作戦を成功させられるのかな……」


 遊園地に到着した。入口でチケットを購入し、門をくぐる。園内はとても賑やかだ。はしゃぐ声、笑う声、叫ぶ声、活気にあふれる。休日なので、子ども連れが特に多い。さまざまな動物の着ぐるみが子どもたちを出迎える。犬や猫、うさぎ、熊、お目当ての着ぐるみに近寄り、子どもたちは笑顔を見せる。着ぐるみは子どもに風船を渡し、踊ったり跳ねたりして、歓迎の気持ちを示す。

 パンフレットを開く。ジェットコースターやコーヒーカップ、お化け屋敷、ゴーカート、そして危険な観覧車。多種多様な乗り物を楽しめるようだ。各乗り物に、長い行列ができていた。


「なんか懐かしいね。冬斗もそう思わない?」

「ああ。小さいころ、遠足で来たよなあ」

「うん。あのとき、冬斗がもはやアトラクションだったよね」

「美しい俺様を見るために行列ができたからな」

「十時間待ちだったよね」


 昔を思い出し、俺様たちはノスタルジックな気持ちになった。いつか、もし、俺様とハルが結ばれて、子どもができて、遊園地にやってきたら――、えへへ。


「ちょっと、冬斗。なにニヤけてるんだい」

「いつか俺様の子どもも十時間待ちされたりするのかな、って考えたんだ。俺様の子だから、記録を更新して二十時間待ちになるかも」

「遊園地閉まるだロ」

「まずは作戦を成功させないと、その未来も露と消えちゃうよ」

「そうだった! よし、行くぞ! 照隊員! ニエ隊員!」

「あれっ? ニエがいないね」


 隣にいたはずのニエが消えた。俺様と照はあたりを見渡す。すぐに見つかった。着ぐるみ軍団と遊んでいる。うさぎの着ぐるみと握手、ハイタッチをしてニエが戻って来た。


「握手してもらっちゃっター! 着ぐるみカワイイよネー!」

「よかったね、ニエ」

「よーし! お前ら、乗り物を全制覇するぞ!!」

「サンセー!」

「冬斗! 元の目的を思い出してよ!」

「はっ、いけない。よし! 乗り物を全て説得して停止させるぞ!」

「穏便な破壊行為だロ」

「冬斗、それは最終手段にしよう。まずはハルちゃんを探そうよ」

「わかった。じゃあお前ら、行くぞおおおお!!」

「オー!」

「おー」


 遊園地のどこかにハルがいるはずだ。俺様たちは、ハルを探して走り出した。





 次回予告:

 遊園地にやってきた冬斗一行。しかし、ハルがなかなか見つからない。


 冬斗はゴーカートに乗り、ハルを探した。タイヤの跡が芸術品のごとく美しい。新たな観光名所を作った。

 ショーに出演し、ハルを探した。味方も悪役も美しさでメロメロにし、平和なラストを導いた。

 鏡の迷路で、ハルを探した。すべての鏡が冬斗の美しさに魅せられ、鏡に冬斗の姿が焼き付いてしまった。

 ハルに出会えない切なさから、冬斗が即興曲を生み出し、ジェットコースターに乗って披露した。遊園地でのファーストシングルに、観客は涙した。


 そんな中、ニエがお腹の不調を訴える。屋台全制覇目前、彼女の腹はパンパンに膨らんだ。お腹をおさえ、ニエは道端に倒れ込む。冬斗と照はニエを励ます。


「ニエ! ここまで頑張ってきただろ!」

「ウウ……もうダメだヨ……あと……ラーメンいっぱいしか食べられないヨ……」

「そんな……あっ、冬斗! あれを見て!」

「か、観覧車が……!」


 冬斗は観覧車を停止できるのか!? ニエは園内の屋台を全制覇なるか!? 


「うっ、うっ、俺様、第二夫でもいいから!」


 冬斗、大失恋の危機! 振られ数大幅更新の予感!





私と君と陽炎荘 第8話 「春は忙しい!」 【 第9話へ続く 】

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