第23話
翌日。
(え…?霊障の気配だ。)
いつも通りの道を歩いていると、強い霊の気配がした。
霊障とは霊的障害のことを指す。
烏丸の屋敷の付近で感じることはもちろんなかったが、かつての親友と合流していた地点辺りから強く感じることが出来た。
縁を切った日から1ヶ月は経っている。
スマホからも連絡先を全て消していた。
まさか、と思い私は早足で合流地点まで行きそのまま登校する。
すると数メートル先にかつての親友が悪霊を取り憑いたまま歩いていた。
(かなり厄介なの憑いてるな…寿命を削る系か)
後ろから歩いて悪霊を分析する。
何故憑くような事態になったのかは分からない。
だが確かに言えることは1つだけあった。
私は陰陽師として親友だった少女を助けてなくてはならないということだった。
志穂はあの謎の電話があってから体調が悪くなるようになった。
何をしようにしても怠くて、動くことが難しいのだ。
最初は熱を疑った。
だが平熱のままで、風邪ということではないと判明した。
背中に誰かが背中にくっ付いているようなそんな感覚がやがてするようになった。
この何とも言えない感覚を親に言う訳にはいかない。
理解なんかされるはずがないからだ。
その気持ちで今日も私は登校していた。
いつも、親友でいてくれた百済雫と合流していた場所で思わず立ち止まる。
もしも、もしも、また親友に戻ることが出来たなら。
そう考えている時だけ不思議と背中が軽くなっているような気がした。
重い身体を何とか動かして私は歩く。
遅刻をする訳にはいかなかった。
(気分も悪くなってきた気がする。どうしよう)
そう悩んでいるときだった。
ヒラリと1枚のお札が風に舞って私の元へやってきた。
何事かと驚いていると、ボウッといきなり空中で燃え始めた。
こんなことが出来るのは1人しか、いや2人しか知らない。
また自分は何かしてしまったんだろうか、と志穂はビクビクしながら振り返る。
──陰陽師、百済雫がそこにはいた。
雫と目が合ったが、彼女に変化はない。
代わりにお札がもう1枚同じようにこちらへと舞ってきた。
『放課後、屋上で待っています』
お札にはそう書かれている。
仲をやり直すためというわけではなさそうだということは分かった。
その陰陽師は立ち止まっている志穂を追い抜かして、そのまま学校に向かっていたからだ。
(あれ?身体が軽い…少しだけだけど、気分も良くなった)
もしかしてあの炎は何かしら助けてくれたんだろうか。
縁を切ると言ったのはあっちからだけど、それでも助けてくれたんだろうか。
陰陽師だからなのだろうか。
それでも、それでも。
それでもなんて──。
なんて優しい親友なんだろう。
あんなに傷つけたというのに、もし自分を助けようとしてくれたのなら。
もし自分をこれから助けてくれようとしているなら。
本当に強い女の子だったんだ。
志穂は雫の義務という名の優しさに泣きそうになっていた。
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