第14話
翌日。
『行ってきます』
昨日のことなど何もなかったかのように私は学校に向かった。
いつも通りの三つ編みをして向かう。
お手伝いの久美子さんに髪型を変えさせて欲しいと言われたが、それは丁重にお断りしておいた。
居場所が変わったとしてもいつも通りの自分でいたかったのだ。
毎日、志穂と合流している地点に彼女は居なかった。
前を見れば、随分と距離を空けて問題の人物が歩いている。
(もう、私たちは親友じゃないの?)
そっと心で語りかけてみる。
でも声が出ない私にはそれは不可能な話であった。
学校に1人辿り着くと、下駄箱に靴を入れようとした。
すると上履きには大量の画鋲が入っていた。
(いじめ…志穂。そう、貴女も百済の一族と同じことをするんだ。なら、貴女に決して見せなかった私の一面、見せてあげる)
瞳に力が入る。
こんなこと、慣れっこだった。
上履きを履かないまま私は教室に向かう。
周りからの視線などお構いなしだった。
教室に入ると自身の机にも大量の落書きがされていた。
『死ね』『居なくなれ』『ブス』など散々ありとあらゆる悪口が書かれていた。
(くだらない)
そう一蹴すると式神を使い、机を拭かせた。
綺麗になったのを確認するとクスクスと先程からその様子を見て笑っていた友人達の前に立った。その中には志穂も居た。私の表情に戸惑う友人達。
そして自身の上履きに入れられた大量の画鋲をその友人達の前で床にばら撒いた。
『こんな幼稚なことをしたのあんた達?式神を使えばいくらでも証拠なんて掴めるの忘れないでよね』
陰陽師としての私を知る者はこの場には居ない。
それくらいの冷静さと冷酷さを秘めて、告げる。
『次、ないから』
底冷えする程の殺気を込めた声が響き渡った。
やがてチャイムが鳴ると、そう言った私は自分の席に着く。
いじめの行為をされたのはどうやら机の落書きだけだったようだ。
椅子や教科書までやられていた面倒だと考えるだけだった。
担任の教師に大量の画鋲が落ちていることを指摘されたが、式神には何も喋らさずに無視をした。
自分のしたことくらいには責任を持たないと。
いじめてきた友人達、いや。女子達に向けてそう思った。
お昼。
もちろんいつもの場所に志穂は居ない。
先程の女子達と一緒にいるところを目撃した。
一瞥しただけでいじめられているはずの私は1人いつもの場所に向かった。
(いただきます)
綺麗に手を合わせて1人で食べるお弁当。
お弁当を作ってもらうという行為だけで幸福を感じていたので、別に寂しくもなんともなかった。
今日も私が好きだと言ったおかずがたくさん入っている。
それだけで満足出来ていた。
案外、私という人間は単純な人間なのかもしれないと独りぼっちの私は自分のことをそう思った。
昼ごはんを食べ終わると教室に戻る。
机には何もされていなかった。
どうやら朝の言葉が効いたらしい。
単純なのはいじめる側もなのかもしれないと感じていた。
放課後。
今日も陰陽寮の仕事がある日だ。
早足で1人、帰り道を進んで行った。
いつもは隣に志穂が居て、他にも友人だった人物たちも居て楽しく話していた。
でもそれも昨日までらしい。私は諦めだけは一人前に早かった。
だが、今日は用事がある日なので話をしてゆっくりしている時間はない。
ちょうどいいか、と思うくらいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます