現実は全てがうまくいくわけではない

それから俺も学校へと向かった今日は唯華の変な行動もなく俺は珍しく時間通りに学校に着くことができた。


教室に入ると、まだ朝のHRが始まっていないからか、みんなが集まって話している。


しかし、その様子はいつもと違い1人を中心に取り囲んで

「で、どんな感じだったの?」

「気づかれた?」

「警察に通報した?」

と言っていた。


俺は何があったのかわからなかったので、康平に聞くことにした。


康平も今日は遅刻していないようで、いつも通り人と目を合わせないように顔窓の外を眺めていた。


「おはよう」


「おはよう」


「なんかあそこの女子たちが何かと騒いでるようだが、どうかしたのか?」


俺は女子たちに気付けれないように目配せをしながら聞いた。


「あ、そう!そのことで君に聞きたいことがあったんだよ」


「どうかしたのか?」


そういうと、康平はカバンの中をガサガサと漁り、スマホを取り出すとラインを開いた。


そして、俺の入ってないグループラインを開いて、その写真を見せて来た。


「昨日露出狂の話してたけど、それってもしかしてこの人?」


そう言って見せられた差し出された写真に写っていたのは道路の真ん中をよそ見しながら歩く裸の人だった。


そしてその見た目はどこからどう見てもあの露出狂だった。


「この人だが、どうしたのか」


「だから、今中心にいる人がこの人を見かけて写真撮ったんだって」


「そうなのか」


あの露出狂、見つかってたのは俺だけじゃなかったのかよ。


「それで警察に写真を提出しに行ったらしい」


「……ちなみにその写真はいつのものだ?」


「一昨日だって」


おれが見た日と同じ日だな。


よかった、今日、話題になっていたから唯華と約束をした矢先にこんなことをし出したのかと疑ってしまった。


それにしても、シャッター街以外の場所でもこんなことしてたんだな。


「そうか、助かったよ。帰りに一応追放されていることと、見つかったことについて問い詰めてみることにしよう」


「わかったことがあったら教えてね」


「おう」


「あ、一応その写真を俺に送ってもらってともいいか?」


「何に使うんだい?」

とニヤニヤしながらいう康平に俺は

「死ね」

とだけ言って自分の席に戻った。


席に戻ったのだが、俺の席はその女子たちが集まっている場所の近くなので、話している声がよく聞こえた。


それはもうはっきりと。


俺はしばらく聞こえないようにしていたが、ある言葉だけは無視することができなかった。


「でも、他にも被害者がいるらしくて、その時はあのシャッター街にいたらしいから、今日も見張っているらしいよ。はっきりとした顔もわかったから、見つけ次第すぐ逮捕するらしい」


その瞬間、俺は立ち上がって走り出した。



別にあいつが捕まろうが俺には関係ないことだ。


なんなら、あいつが悪いのだから逮捕されてもしょうがない。


でも、俺はあいつに捕まって欲しくないと思った。


だから、先生の目を掻い潜って校門から脱出し、全力でシャッター街へと向かった。


シャッター街に着いたが、特に人影は見えなかった。


まだ、露出狂は来ていなかったようだ。


そうして俺が若干安心していると後ろからポンっと肩を叩かれた。


俺が慌てて振り返るとそこに走らない警官がいた。


「君、こんな時間にこんな場所でどうしたんだい?学校に行かないといけない時間じゃないのかい?」


「あの実は家に大事な忘れ物をしてしまって取りに帰るところだったんですよ」


俺は咄嗟に思いついた嘘を言葉にした。


別におかしくはないはずだ。


「そうだったのか。でも、一度学校に着いたら家に戻るのはあまり良くないよ」


「すみません」


その景観は俺の見た目に対する偏見がないのか普通通りに接してくれる。


それに少し俺は心が温かくなった。


「まぁ、最近変質者が結構出ているみたいだからね気をつけてね」


「はい、ありがとうございます」


そう言って、俺はシャッター街を抜けなければいけなくなった。


俺は露出狂と会うことを祈りながら、家への道をトボトボと歩いていた。


若干諦めながら、歩いているとちょうどT字路を左に曲がろうとすると右側から

「ヤンキー君ですか?ヤンキー君ですよね」

という声が聞こえた。


俺をその呼び方する人は1人しかいない


「たかしさん」


「初めて名前呼んでくれましたね。」


後ろを振り向くとそこにはちゃんと服を着たたかしさんが立っていた。


めちゃくちゃ運がいい。

ちょうど諦めかけていたとこだったのだ。


「嫌だったか?」


「いえいえ」


「っとそんなことはどうでもいい。ちょっと黙って着いて来てくれ」


そんなことを話していると後ろに警察官がいるのが見え、俺はたかしさんの手を引っ張って走り出した。


「なんでかはわかりませんがわかりました。」


そうしてついたのは、俺の家だ。


「すまないが話したいことがあるから上がってくれないか」


「それはいいですが、学校はどうかしたんですか?」


「飛び出して来た」


「なんでそんなことを?」


不思議そうな顔で俺のことを見るたかしさんをテーブルに座らせて、俺はその反対側に座った。


そして、少し落ち着いてから、俺は

「あなたが他の人に通報されて何人かの警察があなたを追っているからです」

と告げたのだった。

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